第五十話 ドラウさんに挨拶しよう ~褒美の件~
フェイは恵まれた世界で生まれた。
金色の髪に白い肌、整った顔立ちに尖った耳と羽根。
妖精たちが住む『アールヴヘイムの層』。
全てが満たされた世界。
しかし、ある日、フェイは追放されてこのダークエルフの世界へと落とされたのだ。
食べる物も飲む物も無く一週間ほどで死んでしまった。
その後は、ただ闇雲に求める怨念となった。
生命の維持のためのRPを求め、
食べ物、飲み物を求め、
贅沢品を求め、
承認を求め。
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王妃の元へ戻ると兵士以外にも多くの人達が集まっていた。
「よくぞフェイを倒してくれた」
王妃は深く感謝してくれた。
広間に集まった人々が俺達に拍手喝采した。
「ところで褒美を出そうと思うのじゃが」
「はい! ぜひお願いしたい事があります」
「なんじゃ? 何でも言うがよい」
「街の宿屋の土地と建物と今後一切の税金免除をお願いします」
「ん? そんな事で良いのか? お主達の欲しい物など無いのか?」
みんな笑顔のまま他のお願いは無い事を伝えた。
「あと1つだけお願いがあります」
「ん? なんじゃ?」
「この事は、ここだけの秘密にしておいて下さい」
「もちろん。わかった。しかし、本当に欲の無い奴らじゃの」
王妃にどうしてもと頼まれてこの日は王室へと泊まった。
もちろん、夕食は盛大なパーティーだった。
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翌日、俺達はドラウさんの宿屋へと向かった。
次の層『アールヴヘイムの層』へ向かう前に挨拶だけして行こうと思ったからだ。
「ドラウさん。居ますか?」
宿屋へ入るとドラウさんが駆け寄ってきた。
「あんた達! 久しぶりね。一週間以上見かけなかったし心配したよ」
「ごめん。ごめん。ドラウさん。ちょっと街の外で仕事があってね」
「ところで聞いてちょうだい、王妃様が心変わりされたのか今朝兵士がやってきたんだよ」
ドラウさんは嬉しそうに言った。
「それで何かあったのですか?」
フレイヤがドラウさんへと話しかけた。
「それがね。今朝、兵士が来て王妃様の令状を置いて行ったの。
なんと、この宿屋は街へと貢献しているからと税金は免除。
しかも、土地や建物を一度王室が買い取ってその権利をくれるんだって!」
ドラウさんは本当に嬉しそうだ。
「それは良かった。今までのドラウさんの行いが認められたんですよ」
アイラが言った。
ドラウさんは笑いながら今回の事を喜んでいる。
「お兄ちゃん!」
ガルムはカールの所に駆け寄ると飛びついた。
カール小さい子にモテるのかな?
「おう! ドラウ。元気してたか!」
カールはガルムの頭を撫でていた。
すると、突然、ドラウさんが泣き始めた。
さっきまで笑っていたのに大粒の涙を流しながら泣いている。
「どうしたんですか? ドラウさん」
フレイヤが心配して声をかけた。
「いや……ね。こ、この子が安心して暮らせると思うとね……。
ありがたくて、ありがたくて……」
「全てドラウさんの今までの努力ですよ。
俺達も最初ここに来た時助かりました」
俺が話しかけた時、ノルも喜びながら言った。
「そうだニャ! ドラウさんとアルスの努力ニャ!」
「アルスの?」
ドラウさんが不思議そうにノルに聞いた。
「ちょ、ちょっとノル。俺は関係ないだろ」
「そ、そうだったニャ! 関係無いニャ!」
何とか誤魔化さないと。
「ド、ドラウさん。俺達、次の世界へと向かうので挨拶しに来たんです!」
俺は話を変えようと、咄嗟に今日来た目的だった話を切り出した。
「え? そうなのかい」
ドラウさんは一瞬驚いた様子だった。
「あんた達は自分たちの目的のために頑張ってるんだもんね。
いつでもここに来なさい。
あとご飯ぐらい食べて行きなさいな」
「はい! ありがとうございます!」
全員で元気よく挨拶した。
お昼だと言うのに沢山の料理を用意してくれた。
手作りの料理はどれも美味しくて懐かしい感じがした。
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「それじゃあね。いつでも来るんだよ!」
ドラウさんは街の出口まで俺達を見送りに来てくれた。
「ありがとうございました!」
街を離れる間、振り返るとドラウさんはずっと手を振っていた。




