第四十九話 フェイを討伐しよう ~魔法耐性の件~
俺達はマリア・アントーニア王妃の元に6日ぶりに戻ると城の奥へと案内された。
「この扉を越えるとディシデリーズの塔の内部になります」
王妃自らが案内してくれた。
「何卒お願いします。国民の平和が貴方方にかかっています」
王妃は真剣な表情で言った。
「まかせて下さい。
俺達も救いたい人が居るので。
あ、そうだ。
俺達がフェイを倒したら褒美を下さい」
「褒美ならいくらでも出します」
「それじゃあ、行ってきます」
俺はみんなと塔の中へと歩みを進めた。
「褒美って何なの?」
フレイヤが不思議そうな顔をして聞いてきた。
「ドラウさんの宿屋の土地と建物と今後一切の税金免除。
もちろん全てドラウさんにプレゼントするんだ」
「まあ、それは素敵ね」
フレイヤもみんなも大賛成のようだった。
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塔に入って20層まで来ると土色のローブをまとった老婆が現れた。
尖った耳に羽根がある所を見ると妖精のようだ。
しかし、肌の色は白くダークエルフでは無い。
「ひょっひょっひょ。塔を攻略しようなどと言う者は久しぶりじゃの」
老婆が静かに杖を振ると岩石が大雨のように襲ってきた。
俺はレーヴァテインを抜いて全ての岩石を叩き落とした。
「いきなり攻撃してくるとは恐ろしいバアさんだな」
一気に距離を詰めてレーヴァテインで切りつけた。
「ひょっひょっひょ。怖い怖い」
切りつけたが全く手応えが無い。
裂けたローブの中から霧状となった体が見えた。
もしかして物理攻撃が効かない?
「アルス殿! 後ろに下がって!」
アイラはそう言うと『炎壁』を唱えた。
土色のローブをまとった老婆は炎に包まれ消滅した。
「この塔の敵は魔法しか通用しないってことか」
40層、60層、80層と進むと
水色のローブを纏った老婆。
緑色のローブを纏った老婆。
赤色のローブを纏った老婆が現れた。
フレイヤの『真空波』。
カールの『氷弾』。
ノルの『岩石弾』。
それぞれの魔法の力で撃破して行った。
90層に来ると白いローブの老婆が現れた。
アイラの『炎壁』、フレイヤの『真空波』、カールの『氷弾』、ノルの『岩石弾』の攻撃は全て吸収された。
「ひょっひょっひょ。効かぬ。効かぬ」
白いローブの老婆は余裕の表情で笑った。
「俺の出番だ!」
右手に作った光弾を白いローブの老婆へ叩き込んだ。
「ぎゅわあああああああ!」
白いローブの老婆は消滅した。
「最後の敵は一筋縄ではいかないみたいだね」
カールが言った。
属性ごとに耐性のある魔物を倒した後に全属性耐性の魔物が登場した。
100層のフロアボス『フェイ』慎重に対応する必要がある。
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「ひょっひょっひょ。よくぞ参られた」
「フェイだな? なぜ人々を苦しめるほどに無駄に贅沢をする?」
「ひょっひょっひょ。ワシの美しさをより際立たせるために決まっておろう?」
まっ黒なローブを纏った老婆は答えた。
そして、老婆が静かに杖を振ると岩石、火炎、氷塊、真空波が怒涛のように襲ってきた。
レーヴァテインで全てを叩き消す。
「ひょっひょっひょ。素晴らしいね」
「話合いなんて出来ないようだな。今度はこっちの番だ!」
全員同時に魔法を放った。
光弾、岩石、火炎、氷塊、真空波が一気に黒いローブの老婆に畳み掛ける。
「ひょっひょっひょ。美味しいぞよ。美味しいぞよ」
全ての魔法は老婆に吸収された。
老婆が静かに杖を振ると先程の倍はある数の岩石、火炎、氷塊、真空波が怒涛のように襲ってきた。
先ほどと同じようにレーヴァテインで全てを叩き消す。
「まずいぞ。アルス」
カールが口を開いた。
「ああ……」
こちらの全属性の攻撃を黒いローブの老婆は吸収してしまう。
そして、光弾以外の属性での攻撃を返してくる。
しかも、その数が倍になっている。
このまま同じことを繰り返せば、こちらが自滅するのは自明だ。
「ひょっひょっひょ。どうしたぞな?」
こちらが手をこまねいていると老婆は黒い球体を生み出した。
何か呪文を唱えている。
「この攻撃は危険よ! アルス!」
フレイヤが叫んだ。
徐々に体からRPが抜け出していくようなイメージが脳裏に浮かんだ。
「RPを吸収しているわ!」
「ひょっひょっひょ。美味しいぞよ。美味しいぞよ。
お主達が動かぬのであればワシから動いてやるぞな」
カールは落雷を発した。
老婆は黒い球体を消し構えた。
「ひょっひょっひょ。美味しいぞよ。美味しいぞよ」
カールは俺の方を見て言った。
「最小限の攻撃で時間稼ぎだ」
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1時間ほど最小限で攻撃し、老婆の攻撃を防御する状況が続いた。
全員のRPは半分ほど消費している。
そろそろ何か打開策を見つけて一気に攻めないと……。
全滅の二文字が頭をかすめる。
魔法はRPで自然界に作用してRPを直接エネルギーに変換するよりも効率よくエネルギーを得る方法。
イズン師匠の言った言葉を思い出した。
あの老婆は変換されたRPを吸収している。
しかし、黒い球体で直接RPを吸収する。
もちろん物理攻撃は霧状の肉体には通用しない。
「一体、どうすれば?」
RPってのは何なんだ?
人間の生命力そのもののようでもある。
「ひょっひょっひょ。どうしたぞな?」
黒いローブの老婆は不気味な笑みを浮かべながらオウム返しのように何度も同じセリフを言った。
何度も同じ?
同じ?
そうだ、俺が魔法を使っていた初期の頃、RPをコントロール出来ずに他の人の思考に同調することがあった。
フェイにも試す価値はある。
しかし、かなりのハイリスクだ。
何が起きるかわからない。
「みんな今からフェイとの同化を試そうと思う」
「危険じゃないの?」
フレイヤがまっさきに心配してくれた。
「どのみちこのままじゃあ全滅だ。やれることをやろう」
「ま、ダメそうだったらオレが抱えて逃げてやるよ」
カールが冗談っぽく言った。
「ほんと頼むよ。カール」
俺はカールの真剣な表情でうなづく様子を見るとフェイとの同調をイメージした。
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辺りは真っ暗だ。
全てを吸収しそうな闇が広がっている。
渇望する強い気持ちが沸き上がってくる。
これはフェイの思想?
ありとあらゆる物を渇望している。
貧しい村の小さな女の子。
尖った耳に羽根に白い肌。
フェアリーだ。
食べる物がなく、飲水も無い。
食べ物、飲み物への渇望が湧き上がる。
闇を満たすために全てを吸収する。
しかし、闇はいつまでたっても満たされない。
フェイの記憶が俺の中へと入ってくる。
この闇は絶望だ。
絶望を埋めるためにフェイはRPを吸収し、ありとあらゆる物を吸収している。
RPは存在そのものだ。
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「アルス殿! 大丈夫ですか?」
アイラが俺を抱きかかえていた。
「だ、大丈夫」
カールが最小限の攻撃で時間稼ぎしていてくれたようだ。
「試してみたいことがある。
カール! 後ろに下がれ!」
「オーケイ!」
カールが後ろに下がると俺はRPを集中し黒いローブの老婆へと注いだ。
「ひょっひょっひょ。美味しいぞよ。美味しいぞよ。
馳走じゃ。馳走じゃ」
黒いローブの老婆は悦に入った表情で叫んでいる。
「お前、小さな頃に餓死したんだな」
「な、なにを!」
黒いローブの老婆から余裕の表情が消えた。
「お前は死んでいるんだ。
後悔の無いようにたっぷりRPを吸収しろ」
俺のRPを一気に黒いローブの老婆へと注いだ。
「あああああああああああああ」
黒いローブの老婆は白い光に包まれ消えた。




