第四十二話 100層キャジンを倒そう ~ロキとシギュンの件~
キャジンはこれまでで最も大きな巨人だ。
背丈はフロアの高さスレスレまである。
900メートルほどの高さだろうか。
闇のように深い黒いヒトの形をしている。
そして、右肩にはシギュンさんの白いロッドが突き刺さっている。
「我が生みの親たるロキよ。よくぞ参った」
「キャジンよ。そして、消し去る者にもなる」
ロキさんは静かに言った。
「ロキさん、RPを分けます。
全力で戦って下さい」
RP
キャジン 1000万
ロキ 1550万
アルス 700万
「イズン師匠、ダイアナ、カール、ここはロキさんに任せよう」
全員意見は一致しているようだった。
ロキさんは、ゆっくりと長剣を取り出した。
「一応、聞いておこう。シギュンの行方を知っているか?」
ロキさんはゆっくりと長剣を構えながら言った。
「シギュン? ああ、この我の右肩の忌々しいロッドの持ち主か」
「そうだ。その白いロッドの持ち主のことだ! 答えろ!」
「捨て身で転移魔法を使った後に消え去った。
命と引き換えに我らを故郷であるヨトゥンヘイムの層へ戻してくれるとはな。
犬死に。どころか我らへの最高のプレゼントだったぞ」
キャジンは笑いながら言った。
「だまれ!」
ロキさんは怒りと共にキャジンへ向かって飛び出した。
キャジンは両手を前にかざしガードする姿勢を取った。
「うおおおおおおおおおおおお!」
ロキさんの長剣の一撃がキャジンの両手のひらへと衝突した。
長剣はキャジンに止められた。
「ロキさん! 負けないで下さい!」
「うおおおおおおおおおおおお!!」
ロキさんはRPをこめて止められた長剣に力を入れた。
「くわあああああああああああああ!」
キャジンも必死に堪えている。
「たああああああああああああああああ!!!」
長剣はキャジンの両手を切り裂き一気に振り抜けた。
キャジンの両手と首は勢いよく吹っ飛び床へと転がった。
キャジンの巨体は黒い霧上となり辺りへ散った。
白いロッドも床へと転がった。
ロキさんは感無量と言った表情だ。
「うおお! すっげえ!」
カールは興奮しながらロキさんの元へと走った。
みんなロキさんを囲んで勝利の余韻へ浸る。
「最後の巨人を魔斧に封じるよ」
カールは魔斧を掲げて黒い霧を吸収しはじめた。
床に転がったキャジンの首は、まるでその光景を眺めるかのように視線がこちらを向いていた。
え? 首がそのまま?
「カール! はなれろ!」
「え?」
カールが斧を掲げたままこちらを振り向いた瞬間。
「もらったああああああああ!」
キャジンの首が魔斧へと食らいつきカールから奪った。
そして、キャジンは魔斧を吸収してしまった。
大きさは俺とかわらないぐらいの身長170センチほど。
ブラックホールという物が目の前に現れるとこう言った様子なんだろうか?
周囲の光という光を吸収していくようだ。
RP
キャジン 1300万
アルス 700万
ロキ 50万
イズン師匠 80万
ダイアナ 50万
カール 40万
ま、まずい。
キャジンのRPが俺たちを上回っている!
このままだと全滅する。
「糞やろうどもが! ぶっ殺してやる!」
キャジンは叫ぶとロキさんへ襲いかかった。
「逃げてください!」
とっさにキャジンとロキさんの間に入った。
キャジンの右拳が俺の腹に突き刺さった。
一気にフロアの壁まで吹っ飛ばされる。
「お前は後から始末してやるから大人しくしてろ」
とっさに防御にRPを振ったので肉体的なダメージは無い。
しかし、俺の残りRPは200万ほど。
キャジンがロキさんへと迫った。
「ロキ! お前ごときが俺様に何をやってくれてるんだ!」
キャジンはロキさんを蹴り飛ばした。
「お前の首も飛ばしてやるよ!」
キャジンは右腕を斧に変化させるとロキさんの首へ向けて振り下ろした。
「ロキさん!」
俺が叫んでロキさんの元へと駆け寄ると同時にカール、イズン師匠、ダイアナもかけよる。
ま、間に合わない。
ロキさんの元へ俺達があと数メートルと迫った時、キャジンの斧はロキさんの首数センチの所だった。
その時青い閃光が白いロッドから発せられた。
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イズン師匠の白い訓練場?
あたりは真っ白な空間が広がっている。
「アルス!」
振り向くとカールが居た。
「アルス! カール! あんた達もかだわさ」
イズン師匠が近寄ってきた。
「あ~ら、みんなそろってたのね」
ダイアナもこちらへ歩いてきた。
「こ、ここは?」
ロキさん?
ロキさんが床から起き上がってきた。
「イズン、ダイアナ、お久しぶり」
どこからともなく声が響いてきた。
「アルスとカールは初めましてね。
いつもロキがお世話になってるわね」
もしかしてシギュンさん?
辺りは白い空間が広がりどこにも姿は見えない。
「シ、シギュン!」
ロキさんが叫ぶ。
「ロキ、会いたかったわ」
「シギュン。すまなかった……」
「何のこと?」
「我がシギュンの言うことを聞かなかったために……」
「何を言ってるの。私はずっとあなたと一緒に居て幸せだったのよ。
それに私はアナタに生きてもらうためにあの時こうなることを選んだの」
「こうなること?」
「ええ、白いロッドをヨリシロとして生きること。
使う人を守るモノとして生きること」
「シ、シギュン……」
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白いロッドの光りによりキャジンは霧へと化した。
そして、魔斧へと吸収されていった。
俺達の目の前には、魔斧と白いロッドが並んで転がっていた。
「ロキさん。シギュンさんはずっとロキさんの事を思って今も生きているようですね。その白いロッドと共に」
「ああ、シギュンはずっと身をていして守っていてくれたんだ」
ロキさんは、白いロッドを拾いあげ、ずっと見つめていた。




