第三十九話 70層バジンを倒そう ~ロキさんの修行の件~
塔には70層まで魔物の一匹も出ることが無かった。
しかし、70層からは禍々しい雰囲気が漂っていた。
おそらくこの層に居るのはバジンだろう。
あまりに禍々しい雰囲気は塔へ一切の魔物も寄せ付けないようだ。
「注意するわさ」
「はい、いますね。どす黒い気配が伝わってきます」
現時点でのRP
アルス 0
カール 3
イズン師匠 50万
ロキさん 10万
ダイアナ 8万
高さ1キロ半径10キロもあるフロアを奥へ進むと暗闇が広がっていた。
中心部がとくにドス黒い闇だ。
「ん? 何者だ?」
暗闇が動いたと思ったらフロアの高さの半分ほどもありそうな背丈の影が目の前に広がった。
いや、影では無い黒い巨人だ。
「お前はロキ。オレを生み出した者だな。懐かしいぞ」
黒い巨人は話かけてきた。
「探したぞバジン。元の魔斧へと戻してやろう」
「ロキ! 気をつけて!」
ダイアナが叫んだ瞬間、バジンの拳がロキさんの居た場所を襲った。
ロキさんは瞬時に避けていた。
バジンのRP600万。
かなりの強敵だ。
「ロキ。いつぞやよりはやるようになったな」
「お前たちを魔斧に戻すため訓練をかかしたことは無かったよ」
ロキさんはそう言うと長剣を取り出してバジンへ振るった。
バジンの周囲へ黒い水が強烈な噴水のように地面から吹き出した。
黒い水流に長剣は弾かれてしまった。
「これでお別れだロキ」
バジンは巨大な黒い水流をロキさんへ向けて飛ばした。
「ロキ!」
イズン師匠とダイアナが同時に叫ぶ。
「レーヴァテイン!」
俺は思いっきり水流へ向かってレーヴァテインをかざした。
レーヴァテインは竜巻のように刀身が回転しながら水流を蹴散らしバジンの胴体へ大きな穴をあけた。
「カール! 今だ!」
カールは魔斧でバジンを叩き切った。
次の瞬間、バジンは黒い霧のように弾け飛びカールの魔斧へと吸収された。
「アルス、カール、助かった。」
「あんた達、やるわさね」
「カール君、とっさに魔斧に封じ込めるなんてすごいわ」
ロキ、イズン師匠、ダイアナは俺とカールを尊敬の眼差しで見てきた。
俺達もずいぶん強くなったものだ。
「この斧すごいよ。斧から力が溢れ出てくる。気を抜いたら一気に斧から力が吹き出しそうだ」
「それが魔斧の力。我らでは抑えきれず暴走させてしまった……」
ロキさんは静かに言った。
---
80層へ向けて階段を登っていく。
魔物も出ない階段をただひたすら登っていく。
「ロキさん。魔斧とは何なんですか?」
俺が尋ねるとカールも興味深そうにこちらを見てきた。
「ああ、汝らには知る権利があるな。
魔斧などの魔道具。
これは武器や防具、アイテムに魔物のRPを転付したものだ。
魔物の特性はもちろん、その魂までも再利用出来るよういなる」
「魔斧は巨人を斧に閉じ込めたということでしょうか?」
「そうだ。アースガルズを襲ったと言われる5体の巨人。
封印されていた巨人を呼び覚まし斧へ転付しようとしたのだ。
だが、巨人の力は俺の予想を上回り、転付した巨人は斧から実体化したのだ」
「それじゃあ、一旦魔斧に戻しても、またいつ実体化するかわからないということですか?」
「ああ、そこでカール君の力が必要なんだ」
「俺ですか?」
「そうだ。汝が所有しているだけで構わないんだ。
汝ほどのRPの持ち主で正確なコントロールが出来るのはそうは居ない。
イズン、ダイアナ、我でさえも不可能なこと」
「へー。オレしか出来ないのか。まかせてよ!」
カールは嬉しそうに笑み、自信げに言った。
「ロキさんは、ずっとシギュンさんの事を探しつづけてたんですよね?」
これまで聞くことが出来なかったが今なら話してくれそうな気がする。
80層「ラジン」、90層「カジン」、さいごの100層「キャジン」。
残すは3体。
必ずシギュンさんの手掛かりを見つけられるはずだ。
「ああ、そうだ。ずっと探していた。
最初の半年は、ただひたすらに探していた。
それから後は巨人対策のため訓練と探索を繰り返す日々だった」
ロキさんも今回シギュンさんが見つかると期待しているんだろう。
これまでどれだけ探して来たのか?
そして、黒い巨人対策にどれだけの修行を積んできたのか?
を話してくれた。
今までのロキさんの事を考えると、その饒舌さはロキさんが如何に高揚しているか?を示しているようだった。
「さぁ。ついたわさ」
イズン師匠の声の方を見ると80層へと到達していた。
70層の時よりもいっそう禍々しい雰囲気が漂っている。
80層「ラジン」。
黒い巨人のRPはロキさんのそれを越えている。
しかし、ロキさんはそんなこと関係なく先頭に立って戦うだろう。
ロキさんに死んで欲しくないし、シギュンさんへの思いを考えると最前線で戦って欲しい。
「あのロキさん。勝手なことかもしれませんが戦闘時、俺がRPを分けます。
フレイヤ、ノル、アイラ達と戦ってた時はよく使ってた方法です。
俺は戦闘経験が少ないしロキさんに戦ってもらった方が確実なので如何でしょうか?」
「アルスよ。すまぬな」
ロキさんは言葉少なく返事をしたが、俺の目をまっすぐ見て感謝しているようだった。




