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第三十六話 新たな世界を探索しよう ~ロキがシギュンを探し続けている件~

 階段を登るとそこはヨトゥンヘイムの層。

 見渡す限り大きな大木。

 周りの大木に空からの光が遮られて薄暗い。

 イズン師匠、ロキさん、ダイアナは初である別世界の光景に見とれている。


「アルス! 大木の上見てみろよ」


 カールが興奮して言うので上を見てみた。

 大木よりも更に大きな木が天高く伸びている。


「カール。俺達の周りの大木は大木じゃないぞ!」


 大木だと思っていた物は木ではない。

 おそらく雑草か何かだ。

 そして、その雑草か何かよりも大きいのが木なんだ。


「ま、予想どおりだわさ。ここは全てが巨大なんだわさ」


 その時、巨大な草の影から魔物があらわれた。

 大きさは大型犬ほどの大きさはある。

 全身黒く頭部、胸部、腹部と分かれている。

 複眼の目は大きく触覚があり六本足。

 アリだ。

 巨大なアリだ。

 巨大なアリは飛びかかってきた。

 両手でアリの二本の前足と組み合ったが物凄い力だ。

 アリがもし人間サイズになったら数トンの物を持ち上げられるらしい。

 今、まさにその人間サイズのアリが目の前に居る。

 

「たあっ!」


 アリを思いっきり蹴飛ばした。

 100メートル以上ふっとんで静かになった。


「イズン師匠。この世界ではただの昆虫や動物でさえ危険です。

 サイズの大きさが、ここまで驚異となるなんて」

「そうさね。まずは見通しの良い場所まで出ましょう。

 今日は、そこまで出たらあたしの青い扉でホームに戻るわさ」



---



 数キロほど歩くと砂地の見渡せる地帯まで出たため青い扉でホームへ戻った。

 普段から口数の少ないロキさんだが今日は何時もより更に黙っている時間が長かった。


「ロキさん。大丈夫ですか?」


 ホームの庭で1人座っているロキさんに話かけた。


(なんじ)かアルス。

 この一年ほど忘れていた。

 いや考えないようにしていたシギュンとの思い出が次から次へと頭に浮かんでね」


 そう言うとロキさんは、また遠くを見つめて黙ってしまった。

 もしフレイヤが突然居なくなったらどうだろう?

 この一ヶ月、少し離れただけでも寂しかった。

 毎日、楽しかった時のことが思い出された。

 ロキさんを見ると寂しそうに感じられた。

 その時、一瞬頭の中に様々な記憶が流れ込んできた。



---



 目の前に居るのはシギュンさん?

 俺は鍛冶場で武器を打っている。


(これはロキさんの記憶?)


「ロキ。食事にしましょ」

「シギュン。いつも悪いな」

「何言ってるのよ。ロキは最高の武器を作るために頑張ってるんだもの」


 鍛冶屋の記憶から少し時間が飛んだ?

 テーブルには食事が並べられている。

 パンにスープ。水と野菜のようなもの。

 とても質素な物だ。


「ロキ。ごめんね。こんな物しか無くて」

「何言ってるんだ。シギュン。

 君が働いてくれて食事まで作ってくれている。

 感謝しか無いよ。

 逆に申し訳無いよ。

 僕が街の武器作りなんかの仕事もやれば少しは稼ぎになるんだが」

「ロキ、いいのよ。

 あなたには最高の武器を作って欲しいの」


 ロキさんは今よりも明るく饒舌だ。

 本当にシギュンさんの事が好きだったんだろうな。



---



 ほんの数秒のことだったのか。

 ロキさんは遠くを見つめたままだ。


「すいません。今、ロキさんの記憶が俺の中に流れこんできて……」

「ああ、そうか。汝の共感力は素晴らしいからな。

 それにレーヴァテインを作る時に同化するほどに協力した仲だからな。

 我の今の強い思いが影響を与えてしまったのかな」

「シギュンさん。必ず見つけ出しましょう」

「ああ、ありがとう」



---



 次の日、俺達は再度ヨトゥンヘイムの層へと戻った。

 何も無い砂地を進むと森林が現れた。

 森林と言えどもおそらくこの世界の草原だろう。

 ただの草でさえ巨大なのだ。


「すっげえ。アルスあれ見ろよ。むちゃくちゃデカイ木の実とかあるぜ」


 カールは、見るもの全て珍しいのかはしゃいでいる。


「カール。変な物食べないように気をつけないといけないだわさ」

「わかってるって」

「あーら、カールちゃん。元気でかわいくていいわね。

 私が食べちゃいたいぐらいよ」


 ダイアナは舌なめずりしながら言った。


「ダイアナ。カールもアルスも手出しちゃダメだわさ。

 カール、アルス、気をつけなさいだわさ」

「はーい」


 カールと二人で棒読みの返事をした。

 ロキさんは俺達の様子を見て少し笑っていた。

 少しは元気になったようで良かった。


「ところでこの斧。オレが使ってていいんですか?」


 カールは背中に背負っていた魔斧を右手に持ち直して言った。

 

「ああ、その斧を手に出来る者もそうそう居ないしな。

 汝が所有していれば魔斧に封じられた魔物も外に出ることは無いであろう」

「うん。確かに外に出てこようとする強烈な意思を感じるよ」


 魔斧はきっかけがあれば中に封じられた魔物が暴走しかけない危険な武器のようだ。

 数トンの重さからして持ち上げられる人間も限られる。

 魔斧の暴走を防ぐRPのコントロールまで考えるとカールしか所有出来る人間は居無さそうだ。


「あれ見るだわさ」


 イズン師匠の声に従って前方を見ると巨大な城壁があった。

 ブロンテースが居た街だろうか?

 

「巨人が居るのかな?」


 カールが目をキラキラさせて言った。

 ちょっと怖いが確かに巨人と言うとワクワクしてしまうのはわかる。

 しかし、ブロンテースをいじめていた巨人が出てきたら確実にトラブルになりそうだ。

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