第二十九話 CH-47 チヌークに乗ろう ~新しい世界の端の件~
佐藤中将に連れられて外へ出ると大型ヘリコプターが待機していた。
「『CH-47 チヌーク』我が軍の輸送ヘリコプター、さあ、乗って乗って」
佐藤中将は気さくに言ったが、巨大な軍用ヘリコプターの存在感は圧倒的だ。
映画で良く見るタイプの沢山の兵士が向かい合わせで座れるヘリコプターだ。
車なら2台ぐらい入れそうだ。
「すっげえええ。カッコいいいい」
「すごいニャ!」
カールとノルは、はしゃいでいる。
俺とフレイヤはちょっと緊張して乗り込んだが、アイラは慣れているようだ。
「アイラは、もしかして乗ったことある?」
「ええ、元々居た世界で何度か」
さすがリアル王女様。こんなヘリに乗る機会があるなんて。
全員が乗り込むと轟音と共にヘリは飛び立った。
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15分ほどするとヘリがホバリングしはじめた。
「さあ、着いたよ窓から外を見てみて」
佐藤中将の言葉に従って外を見て言葉が出なかった。
予想はしていた。
アースガルズの城壁だ。
過去見た時と同じ風景が広がっている。
壁は遥か遠くまで続き天高く伸び雲の上まで続いている。
「やはり……」
思わず言葉が出てしまった。
「やっぱりかぁ」
カールはちょっと面白そうだ。
「すごいニャ!」
ノルは初めて見るのか面白がっている。
しかし、フレイヤとアイラは押し黙ったままだ。
そうだろう。
現実世界へ戻ってきたという期待が完全に打ち砕かれたのだ。
「あちらを見てごらん」
佐藤中将が指差す先には見覚えのある塔が天空へと続いていた。
ディシデリーズの塔だ。
アースガルズの城壁と反対側の陸地に天空までそびえるディシデリーズの塔が見えた。
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施設へ戻ると和田大将が部屋で待っていた。
「どうだったかね?」
「アースガルズの城壁とディシデリーズの塔。俺達の来た世界にもありました」
「やはり、そうかね。つまり第一特地のダンジョンは地下ではなく下の階に続く塔だと言うことか」
俺達が居た場所には地下への入口は無かったはずだ。
そんな話も聞いたことが無いし世界を探索してそのような場所は無かった。
つまり、ここが塔の二層に位置し、俺達が居た場所が一層だったのだ。
「上へ続く塔はどうなっているんでしょうか?」
フレイヤが和田対象へ質問した。
「第二偵察が二ヶ月ほど前に出たまま戻ってきていない。第三偵察隊を編成する所だったのだ」
「そうですか……。ありがとうございます」
フレイヤは元気無く答えた。
「君達に会ってもらいたい方が居る。
この世界の住人の最高責任者である方だ」
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この世界の最高責任者である方との謁見の機会は明日ということで各自解散となった。
食堂での食事は、懐かしの生姜焼きだった。
美味いご飯を食べると懐かしさと共に少し元気が出た気がした。
部屋に戻ろうとするフレイヤを呼び止めた。
呼び止めたものの何と声をかけたら良いかわからない。
でも、元気づけたいというか、何か声をかけずにいられなかった。
「あの、なんて言うか、まだ状況はわからないけど、俺の気持ちはかわってないから」
「え? どういうこと?」
「フレイヤを現実世界に帰してあげるって話」
「ありがとう……」
フレイヤの返事にはいつもの明るさが無い気がした。
やはりショックだったんだろう。
「ここまで来るのに二ヶ月ぐらいかかったけど次は一ヶ月、その次もあるなら二週間で、俺、頑張るよ!」
フレイヤは少し笑ってくれた。
「ありがとう。そうね。これまで一緒に乗り越えてきたものね」
「そうさ。頑張ろう!」
「うん」
フレイヤは笑顔で返事してくれた。
しかし、勢いでとんでも無い約束してしまった。
実際、一番ヤバいと思っててビビってる上にガッカリしてるのは俺かもしれない。
「それじゃあ! また明日!」
俺は部屋に戻ると叫んだ。
「あああああああああああああああああああああ!」
意味も無く叫んだ。
なんかそういう事って無いですか?
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翌日、施設の外に集まるとマイクロバスが止まっていた。
ごく普通のバスだ。
マイクロバスで施設の外に出ると俺達が居た世界の街と同じような光景が広がった。
俺が毎日眺めた異世界の風景だ。
カールとノルは初めてバスに乗るのか、またも楽しそうに一番後ろの席で騒いでいる。
「驚いたかい? 俺達の施設は街の中にあるのさ」
案内役の佐藤中将が話しかけてきた。
「俺達は元来た世界で青い光に包まれたと思ったら気づいたらここに来てたのさ。基地ごとね」
俺の隣に座っていたフレイヤが佐藤中将へ質問した。
「佐藤中将は現実世界のどこから来たのですか?」
「俺は航空自衛隊、新田原基地からだよ。ただ、一部施設や隊員は横田基地や横須賀から来ている」
新田原基地は小さな頃、親父に連れられて見学に行った思い出が何となくある。
横田基地と横須賀は、軍艦なんかを見にイベントに行ったな。
俺が思い出に浸っているとフレイヤが質問を続けた。
「自衛隊の方々でもこの世界へ来た原因はわからないんでしょうか?」
「そうだね。まったく。こちらへ来た人々や場所の関連性も無く神の気まぐれとかしか思えないね」
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「さあ、着いたよここがヴァルハラ城だ」
佐藤中将についてバスを降りると巨大な古城が目の前にそびえ立っていた。
門番に甲冑に包まれたナイトが居る。
これほど異世界感のある城は初めてだ。
「すげえええええええ!」
「すごいニャ!」
カールとノルは騒いでいる。
「我が一族が所有する城に似ているな」
アイラはつぶやいた。
さすがリアル女王だ。アイラには度々驚かされる。
城の中から出てきた黒服の執事に案内され大広間へ着いた。
大広間には数十人の甲冑に包まれた騎士が居た。
近衛兵と言うやつだろうか?
強そうでカッコいい。
RPをこっそり測定すると一人10万はある。
さすが強い。
大広間の一番奥。
王様が座るような巨大な椅子に老人が座っていた。
片目に海賊みたいな眼帯をした青いローブのじいさん。
脇に青い帽子を置いている。
なんだかどこかで見たことがあるような……。
「よくいらした。召喚者にミズガルズの民よ。ホッホッホ」
「オッス! 俺カール」
「失礼だぞ。こちらのお方はこの世界の最高責任者オーディン様だ」
いつも気さくな佐藤中将が焦って怒り気味にカールに言った。
「よいよい。ワシの名はオーディンよろしくな。ホッホッホ」
オーディン。
あの有名な神々の王じゃないか?
俺にフレイヤ、アイラ、ノルまで神の威光を感じたのか丁重に挨拶した。
「ところでミズガルズの民とは?」
「ホッホッホ。お主達が居た世界じゃよ。ワシもたまにお邪魔しとるよ」
そうだ。
このじーさんギルドで見かけた気がする。
一番最初に俺がイズン師匠だと思った人だ。
いかにも魔道士風だと思ったが、かの有名なオーディンだとは。
「お主達にここへ来てもらったのは他でも無い。ちぃっと頼みたいことがあってな。ホッホッホ」
オーディンは微笑んでいた。
一体どんな依頼なんだろう?




