第二十八話 この世界を知ろう ~召喚者連合軍の件~
俺達は自衛隊の物と思われるトラックに乗せられた。
1時間ほど移動しアスファルトで舗装されコンクリートの建物が立ち並ぶ場所へと来た。
学校のような建物の中の大きな部屋へと通された。
左右6名づつの迷彩服の兵士が銃を手にして直立している。
一番奥の左には迷彩服の男が一名。
右側には白衣を着た研究者風の男が一名立っている。
そして、その二人の真ん中には、どこかの社長室で見たことあるようなテーブルと椅子がある。
椅子には堂々とした構えでスキンヘッドの男が座っている。
日本人だろうが180センチはありそうな体格で、歳は40は越えているだろうが若々しく見える。
スキンヘッドの男は立ち上がって、こちらへ挨拶をしてきた。
「始めまして。私は自衛軍大将、和田である」
「はじめまして。アルスと言います」
俺はちょっとビビりながら返事をした。
「はじめましてニャ!」
お、おい。ノル! こんなピリピリした雰囲気で!
「オーっす! はじめまして。俺はカール」
カールまで。
「ワタシの名前は、アイラ・エリザベート。イギリス王家の正当な継承者よ」
おい! アイラ、この状況で身分を明かすのはリスキーじゃないか?
「わたしは古伊屋麗です」
おいおい、フレイヤ。
本名を名乗るとは。
俺だけなのか? こんなに警戒してビビっているのは?
「ほう。どこかで見たことがあると思えばイギリス王家の女王様に古伊屋家のご令嬢じゃないですか」
和田大将は驚いたように言った。
さすがアイラとフレイヤ、有名人だ。
「ここは日本なんでしょうか!? 私達は戻ってこれたんでしょうか?」
フレイヤが少し興奮気味に聞いた。
それはそうだ。
やっと戻ってこれたかもしれないんだ。
しかし、何となく雰囲気がおかしい。
和田大将はフレイヤの興奮を抑えるかのように冷静に言った。
「その質問の答えの前に君達は私達が第一特地と呼ぶ地下ダンジョンから来たようだな」
「はい、そうです」
俺はフレイヤの代わりに答えた。
「それは困難だったろう。今日の所は休んで明日以降に詳しく話をするのは如何かな?」
「はい、わかりました」
大人しく従っておいた方がいいだろう。
それに、ずっと気を張っていたので休みたいのも確かだ。
「それではこちら中将の佐藤に施設内を案内させる」
和田大将はそう言うと左の迷彩服の男に指示した。
「俺の名前は佐藤。よろしくな!」
30代ぐらいだろうか? 短髪の黒髪でさわやかな感じで明るい表情は人当たりが良さそうだ。
和田大将は続けて右の白衣の男に指示しながら言った。
「それからこの右の者は技術研究本部の大野だ。明日はこの男に従って先ずは簡単な健康診断を受けてもらう」
大野は痩せていて白髪いかにも博士という感じだが目は鋭い。
「ヨロシクね。ワタシの専門は兵器開発なのだが手が足りなくて医療部門の統括もしてるのだよ。シッシ」
語尾に妙な笑い声のようなクセがあり、少し不気味だ。
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施設から出て小型バスで移動すると巨大な洋館のような建物についた。
各個人部屋に案内されると俺が居た部屋。
つまり現実世界の部屋のようで風呂トイレもついていた。
もちろんRPは消費せずに全ての設備を使える。
ここがどこなのか? その疑問には触れず俺達は案内された食堂で食事を取ると明日の集合時間まで各自部屋で休むことになった。
食事は自衛隊メシというやつだろうか?
銀色のトレーにカレー、サラダ、エビフライにフルーツとボリュームがあって美味しかった。
カールとノルは初めて食べたらしく感動していた。
部屋のテレビをつけるとオンデマンド型でテレビ番組や映画、アニメを観ることが出来た。
リアルタイムの地上波放送は無いようだ。
なんとなくみんな気づいている。
だから「ここがどこなのか?」みんな暗黙に答えを保留しているのかもしれない。
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午後からの和田大将との約束を前に健康診断を行う部屋へと案内された。
体重、身長、血圧等を測定し全員で体力測定となった。
全員ジャージ姿だ。
ジャージなんて懐かしい。
しかし、フレイヤは何を着ても似合うな。
しかし、体力測定は本気でやっていいものだろうか?
RPを使わずにやれば問題無しだろうか?
「それではまず最初に反復横跳びから、やり方はわかるかね? シッシ」
大野がそう言うとカールとノルが手をあげた。
「なんですか? 反復横跳びって?」
「ノルもわからないニャ!」
「こうやるのよ」
フレイヤが反復横跳びをやって見せてくれた。
「そうそう。綺麗だね。シッシ」
大野は反復横跳びが綺麗だと言ってるのか、フレイヤを綺麗と言ってるのか、わからない。
いい歳して気持ち悪い奴だ。
まあ、俺も中身はオッサンなので人のことは言えないのだが。
「それでは測定するので準備。スタート! シッシ」
大野が声をかけるとカールが話かけてきた。
「勝負だぜ! アルス! RPは無しな!」
「よし! 負けないぜ!」
この肉体がどんなものなのか?
全力でやってみよう。
「ス、ストおおおおおっプ!」
大野が声を震わせながら叫んだ。
「き、君達速すぎるよ。結果は映像解析するので少しまって下さい」
そう言うと大野は助手達に指示した。
ちなみに平均は以下のようらしい。
男子高校生平均 55回
女子高校生平均 45回
アスリート平均 75回
慌てた様子で大野が帰って来ると結果を発表した。
「き、君達異常だよ」
アルス 3850回
カール 3780回
ノル 3400回
アイラ 432回
フレイヤ 388回
やはり異世界パワーはすごい。しかし、アイラとフレイヤまで常人の10倍ほどのスピードだ。
他の体力測定でも異常な記録を出し大野は驚いていたが、途中から研究者としての血が騒ぐのか楽しそうだった。
50メートル走
アルス 0.14秒
カール 0.13秒
ノル 0.17秒
アイラ 1.4秒
フレイヤ 1.3秒
握力測定
アルス 5.5トン
カール 5.2トン
ノル 1トン
アイラ 548キロ
フレイヤ 388キロ
ハンドボール投げは施設が狭すぎて測定不能。
テスト中、どこから話を聞きつけたのか多くの人々が集まってきて俺達を見て驚いた。
RPを使わずこれなので、RP全快ならどうなることやら。
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体力測定後、和田大将の部屋へと案内された。
「君達の体力測定の結果は驚くべき記録だったようだね」
和田大将はそう言うと、すぐに表情を引き締めて話だした。
「さて、本題だが。君達がやって着た場所、第一特地だが我が調査隊が潜入したまま戻って来てないのだよ」
「もしかして7名でフクミズさんと言う方は居ませんでしたか?」
「君達知ってるのか!」
和田大将は驚き叫んだ。
「はい、俺達の世界から見て20階で会いました。
今は俺達の世界に居ます。
極秘任務だと言って何も教えてくれなかったのですが。
俺達の世界は周囲が壁で囲まれていて、そこから脱出するために塔を登って来たんです。
あそこは地下に続く道ではなく塔の一階に続く道なんです」
あの時会った自衛隊の人達は、ここから来たんだ。
「どうやら我々の予想は当たっていたようだ。君達にも実際に見てもらおう」
そう言うと和田大将は、佐藤中将へ指示し何か準備を始めた。




