第二十七話 100層フロアボスを倒そう 後編 ~100層を越えて終わりの件~
「みんな協力してくれ!」
俺はウルージと大隊へ叫んだ。
「おーう! 少年! ワシラは何をすればいい!」
ウルージが全員を代表して答えた。
「今から俺がここに居る全員にRPを1000ずつ配ります!
そのうちの半分500だけでいいので使って餓鬼を攻撃して下さい。
俺の掛け声で全員で一斉にお願いします」
「アルスあんた考えたわさね! あたし達もその作戦乗るわさ」
「へー。アルスいいね」
さすがイズン師匠とカールは俺の作戦に気づいたようだ。
「ニャニャ?」
「アルス殿、どいうことでしょうか?」
ノルとアイラに説明した。
「餓鬼は口を使ってでしか攻撃を吸収できない。
そして、その口は3つしか無い。
とにかく沢山の攻撃を同時にしかけて撹乱する。
俺はすきを見て全RPをレーヴァテインに注ぎ込み一気に叩く!」
ノルとアイラも納得したようだ。
「いくぞ!」
「おーう! 少年! こちらも準備完了だ! こい!」
ウルージが大気を揺るがすような大声で叫んだ。
「アルスちゃん! すごいわ! イズンに預けて正解だったわよ!」
ダイアナは嬉しそうに言った。
「ガーッハッハッハ! アルスよ! 我らも居るぞ!」
クロダだ。それにヒムロ、ゴウリキ、ホソカワも居る。
「アルス頑張って。信じてるわ」
フレイヤが俺の右手に手をそえて、ささやくように言った。
「ああ、これで最後だ。絶対にアイツを倒す!」
ここまで長かった。
ついに最終フロアボスを倒すんだ。
「いくぞおおおおおおおおおおおおおおおお!」
RPを一気に全員へと分配する。
俺から発せられた青い光の糸は周囲を取り囲む1000人ほどの人々へと吸収された。
ウルージと大隊は一斉に餓鬼へと攻撃をしかける。
炎系魔法による攻撃。
水系魔法による攻撃。
土系魔法による攻撃。
風系魔法による攻撃。
剣による直接攻撃。
斧による直接攻撃。
槍による直接攻撃。
ナイフによる直接攻撃。
弓矢による遠隔直接攻撃。
大砲による直接攻撃。
……。
ありとあらゆる攻撃が次々へと餓鬼を襲う。
一人の攻撃はRP数百から数千程度のものだが餓鬼の吸収は追いつかない。
徐々に餓鬼のRPが削れていく。
餓鬼は3つ攻撃を吸収すると5つの攻撃を受け、また3つの攻撃を吸収した。
そのパターンは時間にすると3秒吸収5秒硬直のパターンだ。
このパターンが繰り返される。
今だ!
レーヴァテインへ全RPを込める。
刀身はこれまでに見たが無いほど大きく光を放つ。
青い光の剣は3メートルにも及ぶ。
3秒吸収5秒硬直。
3つの攻撃を吸収し終わった。
「みんな散れ!」
餓鬼の周囲に居た人々が散開!
「うおおおおおおおおおおおおお!」
レーヴァテインを餓鬼へと振り下ろす。
「ぎゅわあああああああああああああ!」
餓鬼は三頭から不快な甲高い叫び声をあげると真っ二つに裂けた。
地面へと倒れ込むと左右の頭は暫く口をパクパクさせていたが、やがて目をあけたまま動かなくなった。
「勝った……」
俺の残りのRPは、おそらく1ぐらいか?
死なない程度に残そうとフルにレーヴァテインへ注ぎ込んだ。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
周囲から勝利の歓喜がこだまする。
「アルス殿! すごいです!」
アイラに抱きつかれ支えられる。
「ちょっ、アイラ。また顔面におっぱいが」
「すごいニャ! すごいニャ!」
ノルが左側から抱きついてきた。
「ちょっと、ノル! くっつくな」
「アルス! やったわね!」
イズン師匠が右側の俺の腕を取って泣きそうな顔で見つめている。
「し、師匠……」
「アルス。おめでとう。本当にここまで来れるなんて……」
フレイヤが俺の後ろから背中へともたれかかって来て囁いた。
「う、うん。フレイヤが居たからここまで来れたんだ」
「ヒュー! アルス、女の子4人に囲まれてモテモテじゃん」
カールが茶化して来た。
「おーう! 少年うらやましいぞ!」
「ガーッハッハッハ! アルスよ! 実にけしからん」
ウルージにクロダもカールに合わせて冗談を言ってきた。
みんなが笑っている。
(ああ、本当にやったんだ。俺……)
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餓鬼を倒してから半日ほど休んだ。
100層の上り階段。
外に出た時に何があるかわからない。
それに更なる敵の出現もありえなくは無い。
イズン師匠にもらったリンゴを食べて寝たらRPは、ほぼ全快したようだ。
体調もいい。
「いよいよだな」
100層出口の階段を前にして歓喜の言葉が漏れた。
「アルス。ちょっといいかわさ?」
イズン師匠が神妙な面持ちで話しかけてきた。
「あたしはここに残るわさ」
「え? どうして?」
「あたしはこの世界で生まれて育った。大魔道士としての責任もあるわさ」
確かにここを抜けて現実世界だとするとイズン師匠にとっては異世界。
戻れなくなったら、それこそ今の俺達と同じ状況になる。
「ノルも行くニャ! アルスについて行くニャ!」
ノルは置いていくわけにもいかない。
家族も居ないし連れていってやろう。
「ここでのお別れは他には居ないわさ?」
「俺もこの世界出身だが行くよ。
親父と兄貴もこの階段の先に居るはずだし」
カールは固い意思を確認するかのように言った。
「アルスはどうするの?」
フレイヤが心配そうな顔で聞いてきた。
そうだ。俺もこの世界出身ということにしてたんだ。
「俺はフレイヤの行く場所に一緒に行くよ。そうしたいんだ」
「ありがとう」
フレイヤは安心したような表情で小さく答えた。
ウルージの大隊からはクロダの中隊が100層フロアから出ることになった。
ウルージはもちろんダイアナもここから離れるわけにはいかない。
100層の安全が確認出来たらクロダの中隊からこちらの世界へ戻り、いずれは好きに行き来出来るようになるだろう。
ここへ来て色々あったな。
現実世界では、ただ毎日なんとなくダラダラ生きていたと思う。
ここへ来てから。
いや、イズン師匠と会ってからだな。
現実世界で生きた人生よりもよっぽど一生懸命に生きた。
「イズン師匠! ありがとうございました!」
こんなにも涙を流すことがあっただろうか?
男のくせに恥ずかしい。
涙が次から次へとあふれてきて、どうにもならない。
俺は涙を流している顔を見られるのが嫌で階段へと急いだ。
後ろからイズン師匠が響いた。
「何泣いてるんだわさ! いつでも戻ってきなさい!」
俺はこの日の事を忘れない。
---
これまでのフロアと同じ様に100メートルほどの高さを登って行くと出口の光が見えた。
螺旋階段の先。
出口からは光が差している。
外の世界だ。
これまで居た世界もまるで外界のように広かったが、この先には本物の空が広がっている。
「俺が先に出るからみんなは後から来てくれ」
階段を登り外へ出るとそこには草原が広がっていた。
フレイヤ、カール、アイラ、ノルも後に続いて出てきた。
「へー。こっちの世界もそんなに向こうと変わらないんだ」
カールが拍子抜けしたように言った。
その時。
突然、空から大気を揺るがすような轟音がしたかと思うと大音量で呼びかけられた。
「君達は包囲されている! その場におとなしく伏せなさい!」
ヘリコプターだ。
しかも、ミサイルや砲塔が見える。
ヘリコプターでも攻撃機、アパッチだ。
「その場に伏せなさい!」
草原の先から戦車やトラックが複数台、周囲へ急停車した。
中から迷彩服の戦闘員が数十人降りてきて銃を構えて近寄ってきた。
「その場に伏せなさい! 危害は加えない!」
これにて1章完結となります。
次回から2章の開始となります。
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