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第二十五話 100層フロアボスを倒そう 前編  ~バルバロッサ大佐が現れた件~

 いよいよ100層フロアボス『餓鬼(ガキ)』との対決の時だ。

 この一ヶ月ほど準備してきた。

 そして3日間の休養により体調と気力全てが完璧だ。


 全員で100層へ足を踏み入れるとそこには野営キャンプが広がっていた。

 数百人以上は居るだろうか?

 巨大なテントが数十は立てられ冒険者たちが戦闘準備している。


「先を越されたようだわさ。行くわよ」


 イズン師匠はそう言うと野営キャンプの中を進んで行った。

 冒険者達はイズン師匠に気づくと頭を下げている。

 イズン師匠は、やはり有名人だ。

 ひときわ大きなテントの前に来るとイズン師匠は中へと入った。

 みんなでイズン師匠の後へと続いた。


「バルバロッサ大佐! 入るわよ!」


 中に入るとギルドマスターのダイアナに飛空艇の艦長バルバロッサがいた。

 バルバロッサは海賊風の衣装でも無く眼帯もしていない。

 特徴的な赤いヒゲと髪、巨軀であることは変わらないが。


「おーう! イズン! 久しぶりだな」

「久しぶりだわさ。ウルージ」


 バルバロッサでは無くウルージ?


「師匠、そちらの方はバルバロッサさんでは無く?」

「アルス。こいつはバルバロッサ家の長兄バルバロッサ・ウルージだわさ」

「おーう! 少年! 我が弟バルバロッサ・ハイレディンを知っているのだな」

「は、はい! 飛空艇の艦長で有名な方ですので」

「おーう! そうか。ワシも1000人の大隊(バタリアン)を束ねる大佐であるから覚えておいてくれよ」


 ウルージ大佐はそう言うと大きな声で豪快に笑った。


「あ~ら、アルス少年じゃない。お久しぶりね」


 ダイアナがいつもと変わらず無駄にセクシーに話しかけてきた。

 椅子に座って組んだ足はスリット全開で、胸元も全開、居るだけでセクシーなんだが。


「ダイアナさん。お久しぶりです。ダイアナさんは何故ここに?」

「あ~ら、言ってなかったわね。

 アタシはウルージの大隊(バタリアン)に属する第四中隊の中佐も兼任してるのよ。

 ちなみにアタシの前任は、そこのイズンよ」


「え! 師匠そうだったんですか?」

「昔の話だわさ。ところでウルージ、餓鬼の討伐をする気なの?」

「おーう。ついに完成したんでな。集団詠唱(クラスター)魔法が」

「へー、すごいわさねぇ。それならあるいは餓鬼にも勝てるかもしれない」


 集団詠唱(クラスター)魔法とは1人の人間が半径数メートル以内に居る人間と連携。

 その数を100にも200にも理論上は無限の数まで増やし、そして1つの魔法として発動する。

 1人RP100で、100人居ればRP1万の魔法を発動出来るということだ。

 この研究はイズン師匠も携わっていて、ようやく最近完成させてらしい。


 ウルージの大隊(バタリアン)は五つの200名程度の中隊(カンパニー)から構成されているらしい。

 総勢1000名ほどだ。

 平均RPは1万ほど。

 つまり、集団詠唱(クラスター)魔法を使えばRP1000万もの魔法が発動出来る。

 

「失礼します! ウルージ大佐! 準備完了です!」


 聞いたことのある声がしたかと思うと、テントの入口にクロダが居た。

 後方にはヒムロ、ゴウリキとホソカワも居る。


「あら、クロダさん、それにヒムロさん、ゴウリキさんにホソカワさんも」


 フレイヤがクロダ達に声をかけた。


「お久しぶりです。いつぞやはお世話になりました」


 30層フロアボスとの戦いの時、俺達が救ってあげたので恐縮しているようだ。


「どうしてこちらに?」


 フレイヤが聞くとクロダは答えた。


「我が中隊(カンパニー)は第五特別中隊としてウルージ大佐の大隊に所属しています。

 第五特別中隊は召喚者だけで構成されているのです」


 そう言うとクロダはウルージ大佐へ敬礼した。


「おーう。君達は知り合いかね」


 ウルージ大佐はクロダへときいた。

 クロダも体育会系のゴツい奴だがウルージ大佐はそれ以上だ。

 それに声のデカさもクロダを凌駕する。


「ハッ! こちらのフレイヤ様は元来た世界の上長のお嬢様です」

「おーう。そうかね。

 フレイヤお嬢さん。安心しなさい。

 我が大隊と一緒に居れば何もせずとも100層を突破出来る。

 それによく見るとパーティーのメンバーは女子供ばかりでは無いか」


 クロダが焦った表情で口を挟んできた。

 

「お言葉ですがウルージ大佐! そちらの方々は」

「おーう! イズンには失礼だったな。だがイズンも安心せよ」


 クロダの言葉をさえぎってウルージ大佐は続けた。


「我が大隊に敵無し! とくと見ていくがいい」

「はいはい、かわらず頼りになるわさ。

 見学させてもらうわさ。

 最初のうちわね」


 イズン師匠は余裕の表情だ。


「俺たち子供だって。まあ、そうだから仕方無いか」


 カールは無邪気に笑っている。


「ノルも子供ニャ!」


 ノルも気にしていないようだ。

 アイラは腕を組んでウルージ大佐を睨みつけている。

 アイラは男勝りでプライド高い所もあるからな。

 まあ、この展開はいつものことだから仕方ない。



---



 俺たちは少し離れた所に設置された10メートルほどの見張り台から見学することになった。


 大隊の冒険者達は餓鬼が攻撃してこないギリギリの範囲の所で配置についていた。

 餓鬼は周囲10メートルの中に入らなければ攻撃を開始してこないそうだ。

 1000人が餓鬼を取り囲むように配置され、その光景は壮観だ。


 餓鬼の大きさは10メートルはあるだろうか?

 全身は青くボロボロの腰巻きをした角の無い鬼だ。

 体に対して顔が異常に大きく二頭身ぐらいに見える。

 そして、異常に口がデカイ。


 餓鬼を取り囲む陣形が完成した段階で先発の5名が餓鬼に近づく。

 餓鬼が動いた瞬間に1000人のRPを統合した集団詠唱(クラスター)魔法をお見舞いするとのことだ。

 餓鬼のRPは100万。

 一瞬で決着がつくだろう。


「おーう! 全員配置についたな! 攻撃準備!」


 1000人が一斉に詠唱をはじめた。

 詠唱はフロア内にこだまして独特な雰囲気を作り上げた。


「すっげー! みんな青く光ってるぜ!」


 カールが興奮気味に発した。

 1000人が青く光り、次々とつながっていく。

 青く繋がる光は、まるでクリスマスのイルミネーションのように綺麗だ。


「綺麗ね。これから攻撃魔法が発動されるなんて信じられない。

 みんな頑張って……」


 フレイヤはやっぱり優しいバカにされたのに気遣いは変わらないなんて。


「すごい……。物凄く大きな力が集まるのを感じます」


 アイラもこの壮観な景色を前に先程までの機嫌の悪さを忘れていた。


「いよいよ。来るわさ。集団詠唱(クラスター)魔法」


 イズン師匠がそう言った瞬間、餓鬼へと5名の冒険者が近づいた。

 餓鬼は冒険者に気づくと雄叫びをあげた。


「グルオオオオオオオオオオオ!」


 二頭身でバランスの悪そうな体つきと打って変わって相当なスピードだ。

 隊員に食ってかかろうと顔に比べて異常に大きな口を、更に異常なほど開けている。


「おーう! 今だ! 打てええええええええ!」


 ウルージ大佐が叫んだ。

 詠唱が一瞬にして止み、ほんの数秒にも満たない静寂があたりを包んだ。

 次の瞬間。


 1000名を青く包む光は一気に餓鬼の眼の前に居た者に集まった。

 ダイアナだ!

 ダイアナは叫んだ!


集団詠唱落雷(クラスターサンダー)!」


 強烈な一本の落雷が餓鬼へ向かってダイアナから発せられた。

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