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第二十話 80層フロアボスを撃破しよう  ~ロキの過去の件~

 ディシデリーズの塔100層の最終フロアボス『餓鬼(ガキ)』について。

 そして、過去イズン師匠、ロキ、シギュン、ダイアナが、その餓鬼に挑んだ時のこと。

 イズン師匠が話をしてくれることになった。


 80層フロアボスを撃破するための訓練も終えた。

 俺以外のパーティーメンバー、フレイヤ、ノル、アイラもホームへと集まった。

 イズン師匠の家は相変わらずお城のようにデカい。

 みんな集合したリビングのような場所も王室の晩餐会でも開かれそうな立派なテーブルに椅子が並んでいる。


「さっそくだけど100層のフロアボス餓鬼にも関わることだし話をしておくわさ」


 イズン師匠の話によると、

 100層フロアボス餓鬼はRPそのものやRPから派生したもの、

 要するに全ての物を食らうらしい。

 

 イズン師匠とロキさんは以前、餓鬼を上回る大出力のRPをぶつけることで撃破しようと考えたようだ。

 そして考え出したのが魔物を武器へ定着させる方法。

 生成した武器に魔物の意思を宿らせることで、その魔物の特性が武器へと反映される。

 それにRPを注げば注ぐほど魔物が吸収し成長する予定だった。


 最初は小さなネズミ1体で実験し成功。

 次に強力な魔物であるドラゴン3体で成功。

 最後にこの世界で最も強力だった5体の巨人の実験へと進んだ時にその事件は起きた。


 小さなネズミの宿った黒いナイフが一本。

 ドラゴンの宿った黒い剣が三本。

 巨人の宿った斧が五本。

 ここまでは順調だった。


 しかし、計八本だけで餓鬼の食うRP以上の出力を出せるか?

 という不安と、

 前代未聞の実験の成功によるロキさんとイズン師匠の高揚が更なる挑戦へと導いた。

 八つの武器に更にRPを注ぎ限界まで、その力を高めようとしたのだ。

 ただ一人シギュンは止めたらしい。

 危険だからと。


 結果、武器は魔獣へと姿が戻り暴走を始めた。

 暴れ狂う魔獣をシギュンの転送魔法とイズン師匠とロキ、ダイアナの力で作った白い(ほこら)に閉じ込めることに成功。

 だが、巨人5体を白い(ほこら)へ転送する時、そのあまりに巨大な力にシギュンが自身のRP最大出力以上の転送魔法を発動させた。

 そして、巨人5体とシギュンは跡形もなく消えた。

 これが暴走した魔獣の生まれた理由とロキが武器を作らなくなった原因らしい。


「シギュンさん。その場から消えただけなんですよね?」


 それならどこかに転移されてる可能性があるんじゃないか?

 思わずイズン師匠に聞いた。


「ロキはこの世界を数年ずっと探してたわさ。

 どこにも手掛かりも無かったわさ」


 イズン師匠がは普段見せることのない悲しい表情を見せた。


「100層を突破した世界はどうでしょうか?」


 先に何があるかわからない。

 もし現実世界なら向こうは騒ぎになってるだろうな……。


「可能性が無いわけじゃあ無いわさ。

 ただ、餓鬼を倒す事はあたし達では不可能だった。

 だから、アルス、それにノル、アイラ、フレイヤ。

 あんた達に期待してることもあるわさ」


「ロキさんの恋人。100層を越えて見つけてあげましょう」


 フレイヤが何かを決したように口を開いた。


「ワタシも賛成です。現実世界に戻る目的もある」


 アイラも両手の拳を合わせながら言った。


「ノルもニャ!」


 たぶん、ノルは二人の勢いに乗ってるだけだ。

 俺は元々フレイヤを現実世界に戻すためディシデリーズの塔を攻略するつもりだ。

 空気的にも俺も乗らざるを得ない。

 責任とは無関係の人生を歩んできた俺に取って、なんだか他人の責任を負うというのは気が引けてしまう。

 しかし、フレイヤを戻す目的とやることは同じわけだし、この俺の莫大なRPを持つ者としての責任もあるだろう。

 こんなことなら無職が楽だったな。

 なんて思う。

 いや、今も無職なんだけどさ。


「やろうぜ! みんな!」


 自分の心の迷いを振り切るために叫んだ。



---



 80層フロアボス『スライム』。

 赤や青、緑、茶、色々な色のスライムが数百体は居るだろうか?


「スライムと言ってもあの赤いのはブロブ。

 赤い色の通り炎耐性があり、水に弱いわさ」


 イズン師匠も今回から参戦しパーティー全員で戦う。

 

「アイラは青いスライムを。

 ノルちゃんは緑のスライムを。

 フレイヤは茶色のスライムを。

 赤い色はあたしが」


 イズン師匠は的確に指示を出した。


「承知!」

「はいニャ!」

「はい!」

「イズン師匠俺は!」

「あんたはRPをみんなに供給して、RPが尽きかけたら共有を繰り返すの」

「まかせて下さい!」


 俺だけ出番無しかとあせった。

 フレイヤと共闘した時のようにRPの供給に努める。


「行くわよ!」



---



 2時間ほどは経っただろうか?

 まだまだ俺のRPに余裕はあるもののスライムの数が一向に減らない。


「まずいわさ。

 ここのフロアボス、おそらくパーティーメンバーのRP合計値に対して出現しているかもしれないわさ。

 前回攻略時にはわからなかった事だわさ」

「つまり俺が居ることでスライムの数が上がってると言う事ですか?」

「そうだわさ。このペースだとスライム発生ペースが上回って、いずれ全滅の可能性もあるわさ」


 まさかここに来て巨大なRPを持つ俺が足手まといになるとは。

 何か方法は無いか?

 フレイヤと共闘した時は2人で1体となるイメージでフレイヤが俺のRPを自在に使えるようになった。

 今回は俺以外にイズン師匠、フレイヤ、アイラ、ノルの4人。

 フレイヤの時みたいに全員が俺のRPを使えるようにする方法は無いだろうか?


「きゃあ!」


 フレイヤの攻撃が追いつかずスライムに攻撃を受けた。

 スライムは攻撃する瞬間に一部を硬質化させ打撃を加えてくる。


「ぐわっ!」


 アイラも数体のスライムの突撃を受けた。


「きゃうん!」

「ノル大丈夫か!」


 ノルが攻撃を受けてふっ飛ばされた。

 かばいながら襲い来るスライムに全力で拳を叩き込む。

 炸裂した。

 のも一瞬、散り散りになったスライムは一箇所に集まるとすぐに復元した。


「ま、まかせなさい!」


 イズン師匠が全系統の魔法を使いながら赤いリンゴをみんなに配り肉体的ダメージの回復もサポートする。

 

「さ、流石に厳しいわね」


 イズン師匠が息を切らしながら攻撃を繰り返している。

 何とか今俺に出来ることは無いか?

 この巨大なRPを全員に渡すことが出来れば。

 フレイヤが突然抱きついて来た時。

 フレイヤの体温や体の柔らかさが俺に伝わってきて一体となるイメージが出来た。


 そうだ。

 イメージなんだ。

 何も実際にふれたりする必要は無い。

 俺がみんなと一体となるイメージが出来ればいい。

 これまでのイズン師匠との思い出。

 フレイヤとの思い出。

 ノルとの思い出。

 アイラとの思い出。


 それは俺の経験でもありイズン師匠の経験でもある。

 俺の経験でもありフレイヤの経験でもある。

 俺の経験でもありノルの経験でもある。

 俺の経験でもありアイラの経験でもある。


 その時、俺の中で過去現在未来、全ての空間と一体化するイメージが閃いた。


「イズン師匠! フレイヤ! ノル! アイラ! 受け取れ!」


 俺のRPが全員に均等に分けられるイメージ!


「す、すごいあの時と同じ力があふれてくるわ」


 フレイヤから青い光が垂直に立ち上がっている。

 あふれるRPが漏れ出しているようだ。


「アルス殿! かたじけない! うおおおおおおお! 力が溢れる!」


 アイラは雄叫びをあげた。


「すごいニャアアアアアアアアアアア!」


 ノルはあたりを物凄いスピードでかけまわっている。


「アルス! これよ! 1人ではなく全員で協力するんだわさ。

 あたし達と同じ道を歩まないためにも」


 イズン師匠は目に涙を浮かべている。


「全員RPは100万以上! いくわさ!」

「行くぞおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 イズン師匠の号令に合わせて俺も叫んだ!

 フレイヤの風系統の魔法の連発。茶色いスライムを切り刻む。

 ノルの地系統の魔法の連発。緑色のスたイムを粉砕する。

 アイラの炎系統の魔法の連発。水色のスライムを焼き尽くす。

 イズン師匠の氷系統の魔法の連発。赤色のスたイムを凍らせ砕け散らす。

 襲いかかってくるスライムが次から次へと消滅してゆく。

 

「よし! 一気に仕上げるぞ!」


 俺の中に残るRPを一気に全員に配るイメージ!

 全員の攻撃が一気に加速した!

 スライムが次々と消えていく!


 そして、ついにスライムは1匹残らず消滅した。

 初めて全員で戦って勝った。

 これがパーティーってやつなのか。

 現実世界でもこんな風に全員で何かを協力して成し遂げたことは無かった気がする。

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