第十五話 ディシデリーズの塔30層を攻略しよう 後半 ~フレイヤと共闘した件~
フロア中央へ到着すると
クロダのカンパニー200名が戦闘態勢でフロアボスの出現を待っていた。
俺たちが到着するや否やフロア中央が青く光りフロアボスが出現した。
『ウィル・オ・ザ・ウィスプ』
大きさはバスケットボールほど。
空中に浮かび青い炎が揺らめいている。
よく見ると炎は苦しんでいる人の表情にも見える。
「あああああああああああああ」
低く不気味な声を発している。
「ガーハッハッハ! なんと脆弱な魔物。たたんじまえ!」
クロダの号令でカンパニー200名が一斉に飛びかかる。
これじゃあ、いくら相手が魔物とは言えリンチだ。
しかし、クロダの斧はウィル・オ・ザ・ウィスプに当たっても空を切るだけ。
他の者の剣や槍の攻撃も通用しない。
「私の死神で攻撃します」
ヒムロがそう言って攻撃をしかけたがやはり効果は無い。
炎系や氷系の魔法で攻撃する者も居たがまったく通じていないようだ。
「あああああああああああああ」
ウィル・オ・ザ・ウィスプが叫ぶと、その数は一気に200体以上に増えた。
そのうちの一体がヒムロの体に吸収されたかと思うと、ヒムロが苦しみだした。
「うわああああああああああ」
あたりをのたうちまわる。
「ヒムロさん! キュア!」
フレイヤがまっさきに駆け寄ると精神的回復呪文をかけた。
ウィル・オ・ザ・ウィスプがヒムロの体から断末魔をあげながら蒸発した。
「あ、ありがとう。フレイヤ」
ヒムロはフレイヤに手をかしてもらい起き上がると礼を言った。
フレイヤ? だって? アイツ普段は様をつけていたはずだ。
やっぱり、フレイヤと何か関係あったのか?
「アルス! RPの補充をお願い!」
「あ、ああ……」
フレイヤにRPを催促されたが、いまいち乗り気になれない。
(そうだ! ノルの時みたいにフレイヤの記憶も探れるかもしれない)
どうしても気になる。
本来であればやってはいけないだろう。
あえてノルの時と同じような一体化するイメージはしない。
しかし、もし、それでやりすぎてしまって記憶の断片が見えたなら不可抗力だ。
自分の中で色々言い訳が脳裏に浮かぶが、フレイヤの記憶を見ることが出来る。
という誘惑が頭から離れない。
「アルス! お願い!」
フレイヤは次々とキュアでウィル・オ・ザ・ウィスプを浄化している。
だ、だめだ。
急がないと!
「わ、わかった!」
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「ヒムロさん! あれはどういうことですか?」
「ん? あれとは?」
こ、これはフレイヤの記憶?
「あの方を派遣元にクレームをつけて帰した件です」
「ああ…、あの派遣されてきた社員ですか、剛力部長からも強い要望ありましたし、それにパフォーマンスも悪いようでしたから帰して当然でしょう」
「あの方は何も文句言わず一生懸命に荷物も運んでいましたよ。
ああいった方こそ今この会社に必要な人材じゃないんですか?」
「あー、あれですか。あんな仕事、断るべきですよ。そういう所がパフォーマンス出ない原因でしょうね」
フレイヤは俺の事をかばってくれていたのか。
俺に嫌がらせで荷物移動をさせた剛力部長は、フレイヤから父親である社長に報告され始末書を書かされた。
その後、剛力部長はヒムロと組んで俺を会社から追い出した。
そのせいで派遣会社からもクビにされて無職になったんだ。
フレイヤはその事でヒムロに抗議してたのか。
「お嬢様が、どうしてもと言うなら私と付き合ってくれたら考えてあげますよ」
「な、何を言ってるんですか!」
「冗談ですよ。本気にならないで下さい。私もさすがに社長の娘に手を出さないですよ。父上様は怖いですからね。」
「とにかく、派遣元へのクレームを撤回して下さい!」
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俺は何てことをしてしまったんだ。
フレイヤの記憶を盗み見るような事をして。
しかも、俺が勝手に作り上げた妄想で嫉妬していただけでフレイヤはこんな俺の事でさえ救おうとしてくれていたんだ。
「アルス! もう限界です!」
「ご、ごめん! フレイヤ!」
本当にごめん。
今は言えないけど、いつか必ず自分のことを正直に話して今日の事も謝りたい。
俺にもほんの少しでいい。
フレイヤみたいに他の人々を救う気持ちを持ちたい。
自分のRPをフレイヤへ供給するイメージをフレイヤへの感謝と共に念じた。
「ありがとう!」
フレイヤが笑顔と共に俺に感謝の気持ちを投げかける。
次々と浄化するが、浄化のスピードよりウィル・オ・ザ・ウィスプの発生が上回る。
フレイヤの浄化、俺からフレイヤへのRPの供給、フレイヤの浄化。
繰り返すが徐々にウィル・オ・ザ・ウィスプの数が増加していく。
もっと早くRPを供給出来ないか?
ウィル・オ・ザ・ウィスプの数は、数百体にも膨らんでいる。
あたりには取り憑かれ発狂するクロダのカンパニーの人間たちで溢れかえっている。
クロダ、ヒムロ、ゴウダ、ホソカワも発狂している。
正気を保っているのは俺とフレイヤ。
少し離れた場所に居るイズン師匠、ノル、アイラしか居ない。
「アルス! ごめん!」
フレイヤが突然抱きついて来た。
フレイヤは目を閉じて言った。
「私と一体になるイメージして。
私にアルスと同じRPがあればもっとキュアできると思うの」
「わ、わかった」
フレイヤを抱き寄せて一体となるイメージで。
その瞬間、俺とフレイヤを中心に温かい光の球体が周囲を包み込みながら広がって行くのを感じた。
光の球体はフロア全体にまで広がる。
光に包まれたウィル・オ・ザ・ウィスプは、次々と蒸発していった。
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俺達がフロアボスを倒したため、
クロダのカンパニーも全員無傷でフロアボス攻略となった。
クロダのカンパニーは次のフロアへ進みそこで一度休憩し体制を整えるとのことだ。
別れて俺たちはいつものように青い扉でホームへと戻ってきた。
「アルス、フレイヤ、よくやったわさ」
「ありがとうございます!」
俺とフレイヤは息もピッタリにお礼を言った。
「しかしねぇ。最後、抱き合う必要はあったのかしら?」
イズン師匠がジト目で俺を見てくる。
「いや、あれは一体化をイメージするには必要なことで……」
俺はとっさに言い訳をした。
「うーん。フレイヤから抱きついたようにも見えたけども?」
イズン師匠のジト目がフレイヤをターゲットにした。
「ご、ごめんなさい。あれは、つい勢いで……」
「いや、フレイヤじゃなくて俺が悪いんです!」
「おや、おや、仲いいこと」
イズン師匠が攻め寄ってくる。
「ノルも抱きつくニャ! 一体化ニャ!」
ノルが飛びついてきた。
「ちょっと、ノル! あれは必要だから仕方無かったんだよ」
「ノルも必要ニャ!」
「ちょっと、離れなさい!」
イズン師匠とフレイヤが同時に叫んだ。
「ちょっと、2人ともノルみたいになんでくっついてくるんですか!」
イズン師匠とフレイヤがノルを引きはがそうと近づいてきたのだが、
フレイヤは右手をひっぱてきて、イズン師匠は後ろから飛びついて、
結果、イズン師匠もフレイヤもノルと同じように俺にからみついている。
「うおおおお! アタシもいいですか!」
「ちょっと。アイラまで! うっぷ。おっぴぁい! おっぴゃいが!」
左にノル。
右にフレイヤ。
後ろにイズン師匠。
前には、おっぱい。いや、アイラ。
これってハーレム? 異世界生活最高?




