メイドは冒険者になる
目が覚めた。
私の立ってる場所は町の中みたいだ。
近くに噴水がある。そこに私は降りたみたいだ。
でも私はこの場所を知らない。前までは無かった。ここはアップデートで追加された町?よくわからない。
とりあえず誰かに聞いてここはどこなのか調べないと。
「あの〜」
「はい?メイドさん?」
「ここの町ってなんて名前ですか?」
「ここ?知らないで来たの?へんなメイドさんね、この町はレイジス、ジェネリウス王国にある辺境の町よ」
ジェネリウス王国⋯⋯初めて聞く国だ。それにレイジス。こんなのはアップデート予告にはされてなかった。どゆこと?ログアウトして情報を集めるか。
メニュー画面を開こうとするがメニュー画面が出てこない。
ログアウトが出来ない。何故?
アイテムボックスは開ける。でもアイテムがない。何故?
ステータス画面を見たいけどメニュー画面が見れないからこれは無理。
でも見たい。そう思ってたらステータスが出てきた。
ミヤビ
レベル:100
スキル:異世界翻訳、メイドの心得
装備:至高のメイド服
武器:聖戦戦斧
・・・・・・・・・スキルが全部消えてる!!逆に知らないスキルを持ってるし
なにこの異世界翻訳って・・・・・・・・・・・・異世界っていや、まさかそんなラノベみたいな展開あるわけないじゃん。
異世界翻訳・・・異世界での言語の違い、文字が全部理解できる。魔物、動物の言葉は理解不能。
オーマイゴッド・・・・・・・・・ここは異世界ってことか?武器はゲームの中での装備のままだからまだ良かった。装備もメイド服だけどいちばん強いから大丈夫。
多分この世界でならスキルがなくてもまだ生きていけるはず。
でもまさか私が異世界に転移させられるとは思わなかった。これは夢なんじゃないか?ほっぺをつねる。痛い。どうやら夢じゃないみたいだな。
ならやることはひとつ。つまらない世界から、ファンタジー溢れる世界に転移したんだ。思いっきり楽しまないと行けないな。
まずは・・・・・・冒険者になろうかな、異世界ときたら冒険者。いろんな作品でも定番だからね。やるしかないでしょ!
「ねぇ、そこのおばちゃん、冒険者ギルドってどこ?」
「メイドさん?あ、冒険者ギルドね、それならこの道から真っ直ぐ行けば大きな剣の形の屋根が見えるからそこだよ」
「ありがと」
大きな剣ね、一応見えたな。多分あれだ。
私はとりあえず噴水広場もとい中央広場から冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに行くまでの道でみんなから見られてる気がする。それに「メイドさん」「メイドだ」「メイド?」「どこの?」と注目の的だ。
ここゲームじゃないから自分の服装が恥ずかしいな。でもなメイド服強いから諦めるしかないか。
それに私も前の世界みたいな暗い生き方じゃなく楽しく生きたいからね、気にせず自分を通して行こうかな。
冒険者ギルド。
魔物討伐や護衛など腕に自信がある奴がなる仕事。それ故に冒険者は自由だ。規則さえ守れば楽しい生き方が出来る仕事NO.1だ。
冒険者ギルドではそれぞれの依頼にランク分けがされている。AからGまで7段階ある。Aから先にはSというランクもあるがこのランクに行くにはそれなりの偉業を成しえなければならないのでSランク冒険者は少ない。
冒険者ギルドにやってきた私はとりあえず中に入る。中に入れば喧騒が聞こえてくる。冒険者らしい装いをしてる奴がたくさんいる。
それからなにか下卑た笑みを浮かべてるやつもいるし冒険者ってのは色んな奴がいるね。
その視線を無視して私は受付の人に声をかける。
「すいません」
「はい、どんな御用でしょうか?」
「冒険者登録したいんですけど」
「・・・・・・はい、冒険者登録ですね」
今なんか間があったけど私がメイド服着てるからどこかの使用人だと思ってる?
「冒険者登録するにあたり誓約書がございます。こちらを読んで大丈夫でしたらもう一度お声掛けください」
えーとなになに
1つ、自分の身は自己責任でお願いします。
2つ、ギルド登録をしたら仕事はしっかり受けること、一月に1回は必ず仕事はしてください。
3つ、パーティーを組んでの仕事がメインになります。1人で依頼を受けるのは万が一があるので控えること。
4つ、ギルマスの命令は絶対。
とこんな感じか、まぁ普通のことだよね。パーティー組まないといけないのが大変なところかな。まだ知り合い0だしそれが何とかなれば問題ないかな。
「読みました。大丈夫なので登録お願いします」
「かしこまりました、ではまずこちらの用紙に名前と年齢と職業を記入してください、その後裏庭で試験がありますのでそちらを受けて登録完了になります」
なるほど。
名前はミヤビ。年齢は18。職業か・・・・・・どうしようかな。メイド?戦士?どっちがいいのかな?
職業・・・メイドでいいかな。
メイドの心得とかよくわからないスキルあるし。
「出来ました」
「わかりました、では試験に移りますので裏庭までお願いします」
私は受付嬢の後ろをついて行く。
その私の後ろには何故かさっきまで私のことを見てた冒険者達がついてくる。いや意味わからん。なんでついてくるの?まさか見てる気?やりづらいわー。
そんなことを思いながら歩いて裏庭までやってきた。
「ミヤビさんは武器はお持ちですか?なければお貸ししますが」
「・・・借りてもいいですかね?」
「大丈夫ですよ、ちなみに何をお使いになりますか?」
「斧で・・・あ、長いやつでお願いします」
「お、斧ですか、わかりました」
受付嬢は室内に入り男を連れてきて私に斧を持ってきてくれた。
私はそれを受け取り少し振り回して確認する。
「ありがと、それで試験って何するの?」
「試験はですね、これから魔物を召喚するのでそちらを討伐することです。じゃあ行きますね」
受付嬢が言った途端、地面に魔法陣が浮き上がってくる。そこから現れたのは灰色のスライムだ。
原型をとどめていないくらいドロドロしてて気持ち悪い。
「それでは始めてください」
「じゃあやりますか」
私は斧を片手で持ち地面をずる様な感じで飛び出す。そしてそのままスイングする感じで下から上に振り上げる。スキルを覚えていれば今のでアースインパクトが放てたはずだ。
私はその振り上げた武器を今度は振り下ろす。斧をどかせばスライムは核が潰れて死んでいる。周囲にある地面には亀裂が入ってる。これで試験は終わりかな。
「終わりましたよ」
ポカーンとした受付嬢に向けて教えると取り繕うように私の試験クリアを教えてくれた。
「試験終了です。お疲れ様でした、これでミヤビさんはGランク冒険者です、これからよろしくお願いします。では中に戻りましょうか」
私はそのまま中に入る。後ろを振り返ったら後ろをついてきていた冒険者達は口を開けっ放しで放心していた。うーんやり過ぎかな?
そのまま受付に来て今度はギルドカード作成に移り、それが終えるまで暇ができてしまった。
「ギルドカード作成まであと五分ほどお待ちください」
「じゃあ仕事見てきますね、場所はどこですか?」
「掲示板はあちらに左側の赤い方がCから上で右側の青い方がGからですね」
「ありがとう」
私はそのまま青い掲示板に向かう。掲示板には沢山の依頼が貼り出されている。オオカミ討伐、ゴブリン討伐、ジャコ草採取、護衛依頼、結構種類は多いみたいだな。私は討伐系にしようかなその方が楽だし。
そう言えばパーティー組まないとなのか、どうすればいいんだろ、後で受付の人に聞いてみようかな。
「ミヤビさん」
お、噂をすればなんとやら、登録が終わったみたいだ。
受付に戻るとシルバープレートみたいな物が用意されている。これがもしかしてギルドカードかな?
「ミヤビさん、ギルドカード登録が完了しました。こちらがギルドカードになります。それではこれから少しだけ説明させていただきます。まずこのギルドカードは基本的には再発行は出来ません、ギルドカードには名前と年齢と職業、そしてランクが書かれてます。依頼を受ける際には提示をお願いします」
「失くしたらどうすればいいの?」
「失くすことは無いです。このギルドカードには自身の魔力を感知して離れることがないというのがあります。それをするにはギルドカードに魔力を与えることで完了します。ミヤビさんもそれをすればカード紛失はしませんよ」
「なるほど、ありがと」
「続きましてランク上げについてです。こちらのランク上げは依頼のこなした数、それから決闘することです。依頼についてはそのまんまですね。決闘についてですがこれはお互いが決闘する気があるならば決闘しても構いません。ただし殺傷の類はダメですので訓練用の武器での決闘になります。この決闘で勝つとギルドカードに星がつきます、それが一定になると上のランクになります」
「わかりました」
わかりやすいね。依頼をこなすか決闘するかってことか。まぁ依頼こなしながら決闘申し込まれたらやる感じで充分かな。
「では説明は以上になります、なにか質問はありますか?」
「じゃあ1つだけ」
「なんでしょう」
「パーティーを組むにはどうすればいいんですか?知り合いもいないのでどうやって組めばいいのかわからなくて・・・・・・」
「なるほど、パーティーにつきましては募集用紙が青の横の緑の掲示板の所に貼ってあります。そこで条件を見て気になったらパーティーを組んでみて合う合わないを検討することが出来ます。それから他の人達からのスカウトまたはその逆もありますね」
「わかりました、ありがとうございます」
「これからの活躍に期待しております、私の名前はエリンですのでお忘れなく」
こうして受付嬢もといエリンさんからの説明が終わった。ギルドカードについては結構簡単なので助かった。とりあえず魔力流して紛失しないようにしておいて、今日のところはこんな感じで大丈夫かな?
パーティーについては明日考えればいいか。今日はこのまま宿屋探して拠点を確保しとかないとだね。
私は冒険者ギルドを出ることにした。