メイドさんと海の洞窟
会いにいく。そう決めたのはいいけどそうすぐに戻ることは出来ないわけで⋯。
とりあえずこの世界を冒険しながら戻ることにした。
どんなに急いでも3年はかかってしまう。たった数日一緒に過ごしただけだけどセーラのことは知ってるつもりだ。
少なくとも私がいなくなった程度で諦める訳が無い。きっとセーラも私を探す為に旅に出るとか言ってるんだろう。
だから私はそれに期待した色々冒険しながら戻ってみる事にした。すれ違いは怖いけど待つことは嫌いだ。だから冒険者として名前を広めながら冒険をすればセーラの耳にも入るかもしれない。
「よし、まずはギルドでなにか依頼でも見つけますか」
とりあえずアクアマリンで少し冒険者として活動しよう。ここは魚料理も食べられるらしいからね。前の世界を思い出すわね。こっちではお刺身って食べられるのかな?文明は前の世界ほど発達してるわけじゃないし流石に生は無理かな。
・シャークマン2匹討伐⋯8000ルピアDランク
・パールパル5個採掘⋯15000ルピアCランク
・ワカメ採取⋯1500ルピアGランク
うーんどれも水中戦闘が多いね。ちょっと無理かな。メイド服着たまま泳げるとは思えないし、せめて陸で出来る依頼は⋯⋯
・パルマ5個採取⋯3000ルピアGランク
・アクアキャンサー⋯30000ルピアCランク
海に比べると陸で受ける依頼は少ないわね。まぁ仕方ないか。このふたつ受けよう。
受付嬢⋯たしかイリンさんの所に持っていく。
「これね」
「あ、ミヤビさんじゃないですか、依頼ですね⋯2つ⋯了解しました」
「あ、そうだ、アクアキャンサーは浜辺に行けば出てくる?」
わからないことは聞く。これ大事。適当に話聞いて何すればいいか分からなくなってあっちこっち回って時間を無駄にした経験がある私は情報収集は馬鹿に出来ないと思い知った。だから知らないことは見栄を張らずに聞く。
「アクアキャンサーは西門から出てその先にある洞窟に出ますよ。満潮の時は洞窟内の半分は海に沈むので気をつけてください」
「ありがとう、気をつけるわ」
なるほど、海と面してるのか、満潮の時に行くのはダメだな。とりあえず行ってみてからそのまま入るか後日にするか決めよう。
私は西門から出て洞窟に行く。ラファを呼んで2人のんびり歩いていく。
ラファは基本的に街の中では戻ってもらうことにした。いちいち聞いてくる人に答えるが面倒になったからだ。
「主、今日はなにをしに?」
「今日は洞窟に行って依頼ができそうならやるよ」
「わかった」
◇◇◇
洞窟が見えた。どうやら今は沈んでないみたいだ。今のうちに行ってみよう。
そう決め、洞窟の中に入る。
洞窟は人が横に3人も並べばもういっぱいいっぱいになるくらい狭い。高さだけはそれなりにあるから私の武器はなんとか使える。
場所によれば長い武器は一切使えない事さえある。
敵はヒトデ型の魔物にイソギンチャク見たいな触手がウネウネしてるキモイやつがおもな敵だ。どれも斧で両断しながら進んでいく。
しばらく歩いていると少し広い場所に出た。半分は海が溜まってる場所に出た。
海が満ちた時ここまで流れて溜まるんだろう。
──カシャンカシャン
金属っぽいような硬い音が室内に響く。
どこから聞こえてくるのかわからない。周りの警戒をし始めた時
──ドーン
私の後ろで大きな音が聞こえた。急いで後ろを振り向き確認する。
見たのは青い色のカニだった。左右に4本の爪がありそれぞれ1本ずつ巨大な爪をしている。
「カニだ。アクアキャンサーか、天井から落ちてくるとはトリッキーな」
アクアキャンサーがでかい爪の方を振り下ろしてくるので後ろに大きく飛ぶ。飛んでる途中に“氷槍”を使う。
槍はカニの甲殻には傷をつけることが出来ない。硬さはそれなりにあるみたいだ。
「討伐証さえ渡せばほかの部位は自由にしていいからね、今日はカニ鍋でもしようかな」
今日のご飯を決めた私は綺麗に持って帰りたいので節の部分から切ることにする。
でかい爪を節の部分から切り落とし他の場所も斧で切断していく。足も切り落とし全部の足を落とされたアクアキャンサーは動けなくなる。
そのアクアキャンサーに近づき頭に斧を振り下ろす。半分ほど刺しアクアキャンサーを倒した。
討伐証の爪だけ別にして残りをアイテムボックスにいれる。
「さて帰ろうか」
「主〜」
さっきまでどこかに行ってたラファが戻ってきた。手には何か持ってるみたいだけどなんだろう。
「これ、あげる」
それは拳サイズくらいの宝石だった。
「綺麗だね、ありがとう」
「えっへん」
「帰ろうか」
そのまま洞窟を引き返す。引き返している最中徐々に水かさが上がってきている。ここに来た時はまだ湿った程度だった。でも今はもう膝下まで水に使っている。靴と靴下が濡れて嫌な気分になる。早めに戻らないとメイド服まで濡れてしまう。急いでもどる。
私が洞窟を出た時はもう腰まで水が来て結局下半身はずぶ濡れになってしまった。
もう帰ろう。
私の状態に気分が落ち込み。トボトボ街に戻る。
ギルドにはいる。
「あ、ミヤビさん⋯⋯ってどうしたんですか!?そんなびしょ濡れで!」
「イリンさん、洞窟に行って帰り道に満ちて来て濡れました」
「あ、そうでしたか、ちょっと奥に来てくれます?」
そう言われ私はイリンさんに奥に連れていかれる。更衣室みたいな所に連れていかれ1枚の服を渡された。
「これ私の予備の服なんですけど良かったら着てください」
「いや、それは悪いですよ」
「大丈夫です、女性なんですから気にしてください」
「分かりました、ありがとうございます」
そして私はメイド服を脱ぎ受付嬢の服を着る。
「似合ってますよ、このまま受付嬢として働きません?」
「遠慮しておきます、私は冒険がしたいですから」
と話し合い、依頼報告をして宿屋に帰ることにする。
「さよならー」
イリンさんが手を振ってくる。それに振り返しながらギルドを出る。




