メイドさんと悪魔の石前哨戦
明らかに空気が違う。空も何故か薄暗く、肌寒い感じがする。
今私たちがいるのは教会前だ。木もやせ細って葉っぱなどは全て落ちて裸状態。教会入り口付近などにはアンデットも確認出来た。
「やっぱりアンデットがいるね、ラファどうするの?」
「任せて!行くよー」
ラファは教会の屋根上まで飛んでいく。そこでくるくる回りながらなにか唱えている。
「聖なる光よ、土地を浄化し、真の姿を表せ!“ホーリーパージ”!」
ラファの魔法詠唱により周囲一帯を光が覆い暗かった雰囲気を吹き飛ばす。
浄化の光によりアンデットは消滅して、腐った土なども浄化により黒いモヤみたいなのが外に漏れ出ていく。
ラファの光魔法によりこの土地は浄化されていた。
「綺麗⋯⋯」
セーラはその浄化の光景を見て感想を漏らす。
「これで住めそうだね、じゃあ家の中と教会の中を見て回ろうか」
ひとまず探索。最初は自分たちが住み込むであろう家の様子を見ることにした。
「ん、立て付けが悪くなってるのか開かない」
扉は歪んでいて、そのせいで開いてないみたいだ。これは取り外すしかないな。
「セーラ手伝って、この扉を外すよ」
「わかった」
セーラに手伝ってもらい扉を外す。
中はホコリが大量に付いていてどれだけ人がいなかったのかわかる。
ある程度の生活必需品は揃っているようだが流石に年月が経ちすぎている。全部破棄した方がいいだろう。ベッドもあるけど布団なんか干してもまともに使えそうではないので買い直しだ。
屋根に穴が空いていてそこから風邪がビュービュー吹き込んでくる。住むにしてもリフォーム必須だよね。物件がタダの分リフォーム代に飛んでいきそう。
自分達の住む家はこのくらいにして次は教会だ。
教会の扉は破壊されており中はめちゃくちゃだろうと思った。
中に入れば案の定アンデットと思わしき残骸がちらばっている。
イスなどは散らばっていたり壊れていたりと様々だ。真ん中に行くとこの世界の神であろう像が置かれている。その足元にお供え物見たいのが置いてある。
それは見ただけでまずいものだとわかるものだった。
そのお供え物は拳ほどのひし形のクリスタルだ。だが綺麗な色合いではなく、明らかに邪悪な力があると感じさせる闇のオーラが見える。
これのせいでここがおかしくなったのもあるかもしれないと思うのでこれを無視はできない。だけど私が触っても大丈夫なのか保障がないのが怖い。
「ラファこれどう思う?」
困ったらラファに聞こう。
ラファは周りをウロウロしていた。声に気づき近づいてくる。そしてその石について調べ始めた。
「これはですね、悪魔の石です」
「悪魔の石?」
「はい、以前いた神官が悪事を働いたと聞きましたが多分それの残骸ですね、それが年月をおいてまた復活しようとしているようですね」
「それ、不味いじゃん、あとどれくらいで復活するの?」
「えーと、力の蓄積具合から見て明日でしょうか?」
明日⋯⋯明日⋯⋯明日!?いやいやなんてタイミングで私達来ちゃったんですか。もう無視できないじゃないですか。はぁ〜一体どうすれば。
「どうすればいい?」
「倒す!」
超わかりやすい。倒す。確かに出来るならそれがいいのでしょう。私たちが勝てるかが問題で。
勝てない場合はどうするのかも結構重要だ。セーラも顔を青くして狼狽えている。
「勝てるの?」
「主の強さなら問題ない、セーラは大変かもしれない」
それはつまり、レベルという意味でだろう。私のレベルが100。セーラがどれくらいかはわからないけどラファより弱いのは確実だろう。ラファは少なくとも私の武器に宿った精霊。なら100レベル近い強さはあるだろう。武器が私が最後に使ってた武器だから。
「私は今回も約立たずですか⋯⋯」
セーラは自分が役に立てないと言われ落ち込んでる。ここ最近のセーラは考え事ばかり、役に立てなくてどうすればいいか考えていたのだろう。私としてはそんなセーラは見てられない。なにか私たちにとって役に立つことを見つけてあげられればいいと思うけど⋯⋯。
「セーラ、安心して、出来る出来ないがあるのは当たり前、出来ることをやっていこ、私達はチームなんだから」
セーラはまだ納得してない表情だったが無理をしてもらう必要も無いのでここは任せてもらう。
今日復活することは無いので、いったん宿屋に戻ることにした。
明日は私とラファの2人で教会に向かい、復活した悪魔の石を倒すことに専念する。セーラはお留守番だ。そこでの問題が片付けばそのまま荷物を引き取りに行き教会の方に移住することにする。
◇◇◇
日が昇り、今日悪魔の石が復活する。あの石からどんな悪魔が生まれるのかわからないが用心することに越したことはないだろう。
セーラに留守番を頼み、私とラファは早速教会に向かう。
教会は昨日来た時と全然違う雰囲気を纏っている。空はさらに暗く、教会周辺には茨が覆い、昨日浄化したはずなのにまたアンデットが徘徊してる。しかも明らかに上位個体と思わしきものまでいる。
「これは予想外じゃない?」
「ですね、これはいくら主でも数で負けてますからキツいかと」
うーん辛辣、昨日は行けると言ってたのに実は無理でしたなんてあんまりだよ。流石に逃げ帰る訳には行かないよね。この町が廃墟になってしまう。
「でもやるしかないよ、幸いセーラは宿屋だし、私達が全力で相手すればいいんじゃない?」
「主がそう言うなら我はついて行くだけです」
「じゃあ周囲の雑魚狩りから始めて、本命のところに行きましょ」
「はい!」
私とラファは教会での討伐戦を始める。
教会周りに彷徨いてるアンデットは昨日までが普通のゾンビやスケルトンだったのに対し今日現れたのはゾンビキングが統率したアーマーゾンビ達やスケルトンキング統率のスケルトンライダー、スケルトンアーチャー、スケルトンバスターなどがいる。
ざっと数えただけでも100近い数いる。これが万が一外にでも出れば町はパンデミックになるだろう。
「せい!」
私は近づいてくるアーマーゾンビを斧で両断する。そしてその場で横に回転する。
「【旋風】」
“旋風”により周囲を囲んでいた敵は片付ける。狙うのは首。首と離して行動ができないようにする。胴体で真っ二つにすると這いずって来るので対処が面倒になるから多少無理をしてでも首を狙う。
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ラファは光魔法を使い倒していく。
「聖なる光よ、土地を浄化し、真の姿を表せ!“ホーリーパージ”!」
広範囲浄化魔法。これによりスケルトンやゾンビといった雑魚は処理出来る。しかし上位個体にはダメージを与えるだけで消滅させることが出来ない。
「聖なる光よ、槍の形持って、突き刺せ、“ホーリーランス”」
光魔法の“ホーリーランス”で敵を穿つ。頭に打ち込めば1発で倒すことができ、ほかの場所では2、3発と言ったところ結構キツいと感じた。
「“ホーリーランス”複数ロック」
敵をロックして数を増やす。魔力がある限りなるべくこの戦法で早く削りきり中に行きたい。主がいくら強くても数の暴力には勝てない。消耗すればいずれ攻撃を受けてしまうだろう。中にどんな存在がいるかも分からないのにここで消耗するのは避けたい。
我がもっとよく見ておくべきだった。主ならいけると思った私の勘違いだった。
「聖なる光よ、浄化の力で魔を滅せよ!“セインツ”」
上位浄化魔法により我が受け持つスケルトンキング除くスケルトンアーチャー、スケルトンライダー、スケルトンバスターを消滅させることが出来た。あとはキングのみ!
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ラファは光魔法を使い倒していく。明らかに私より殲滅力はある。私も魔法を使う方がいいか。
「凍らせ、穿て、“氷槍”」
氷槍を打つ、大してダメージはないらしくピンピンしてる。まぁゾンビだからな、これで炎が使えればまだ楽だったのに!
「精霊よ、我に力を、かの者らに業火を!」
精霊魔法で火の精霊を呼び出す。
「マカセナ“ファイアーサークル”」
火の円が広がっていく。当たったゾンビは燃えて塵となる。
殲滅スピードが段違いだった。このペースなら案外早く片付きそうだ。
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スケルトンキングが剣を持ちながら近づいてくる。
「光よ、貫け、“シャイン”」
スケルトンキングの頭に当てる。
「カタカタカタガァァ」
ダメージは受けた見たいだ。スケルトンキングが光魔法喰らった時頭の上の冠が光ったところを見るに多分光魔法の軽減効果がありそうだ。
それにより倒せないのだろう。もっと強い魔法を使う必要があるね。
「聖なる光よ、邪を滅し、悪を消せ、“ホーリーロスト”」
自分全体を聖なる光が包み込む。それを手の平に凝縮させ光の玉を作り出す。それをスケルトンキング目掛けて放つ。
それに当たったスケルトンキングは綺麗に消滅した。塵一つ残さずに浄化された。
「はぁはぁ⋯⋯ちょっと使い過ぎましたね、主我は戻らせてもらいます、ご武運を」
ラファはそのまま光となってミヤビの持つ聖戦戦斧の中に戻る。




