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目が覚めると、私の部屋に大勢の人がいた。
「雅様!お目覚めになったのですね!」
大勢はわっと歓声を上げる。その声に少し頭痛が襲った。まだ、体は本調子ではないのだろう。
一人が粥と水を持ってきて静かに話しかける。
「川は浄化されたようです。本当にありがとうございました。
それで…あの…お目覚めの直後に申し訳ないのですが、珀様が…」
言われた場所に行ってみると、珀は森の一つの大きな木にぐるりと体を押し付けていた。
その中心には、人がいた。
「あなたは、誰ですか。」
私が眠っている間、月が赤くなったという。即ち、森が開き侵入者が入ってきたということ。
「オレは佑だ。中央から逃げてきた。勝手に入ってすまないが、君たちの森を荒らす気はない。放してくれはしないか。」
「…危害を加えることはしないという証拠はありますか?」
「ない。」
その潔さにいささか驚いた。普通ならこの状況、信じてくれと叫ぶのが妥当ではないのだろうか。
「珀、放しておやりなさい。」
「雅!」
焦りを浮かべる珀に、きつく目を向ける。すると、渋々その男から拘束を解いた。しかしまだ、警戒して辺りは離れなかった。
「私の部屋に来なさい。話を聞きましょう。」
「さて、佑…といいましたか。貴方はニンゲンでしょう?どうして、敵対するこの森へ…殺されるかもしれないのに。」
「オレは、ただ無我夢中だった。あいつらのしていることは間違っているから。…何から話していいか…」
佑は、ぽつぽつと話を始めた。