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邪神襲来!? ~潮騒の街から パート3~  作者: 南野 雪花
第5章 こんな地球連合軍は嫌だ
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こんな地球連合軍は嫌だ 5


 監察官と恒星間国家連盟の市民の末裔。

 それが澪の血族である。


 おそらく、という域を出ないが、彼らの子供は四人いたのではないか。

 で、それが巫、芝、稲津、穂村の四家のはじまり。

 後ろふたつは直系が絶え、稲津の隠し子の孫である稲積を残すのみだ。


 各家の眷属は、人造人間(クローン)の末裔とかそんな感じ。

 えらくふわっとした解釈だが、ちゃんとした記録が残っているわけではないので、こればかりは仕方がない。


 いずれにしても、澪の血族といわれる存在は、この地球で発生したものではないらしい。

 それが地球で暮らしているのはまずい、というのが監察官ハスターの主張である。


「ただ、今日の模擬戦を見る限り、きみたちは普通に地球(テラ)に馴染んでいるようだ」


 血族ばかりでなく、地球原産(・・)の神や、おそらく人類と(おぼ)しきものまで味方として駆けつけた。


「Meも! 御大将が! 好きさ!!」

「はいはい。オマエはすこし黙ろうな」


 突如として愛の告白を始めたヘンナノを、耶子がヘッドロックしながら遠ざける。

 心温まる父娘関係である。

 苦笑するハスター。


「ここまで馴染んでいるなら、きみたちはもう地球産として扱ってもさほど問題はないだろう、というのが私の結論だよ」


 まして、と、付け加える。

 やはり少年少女をいじめるというのは、あまり気持ちの良いものではない。

 中学校(ジュニアハイ)で憶える程度の能力で大はしゃぎしちゃってるような子供たちなら、なおさらだ。


「ただ、いくつか確認しておかないといけないことも、あるんだけどね」

「それは?」


 真剣な顔で暁貴が問う。

 ここが正念場だ。

 ハスターが武断から方針を変えてくれたなら、しっかりと条件を詰めなくてはならない。


有視界テレポート(ジャンプ)能力解放(ブースター)は、きみたちにとって、特別な力なのかな? サネタカが使ってずいぶんと盛り上がっていたようだけど」

「ん。そうでもないかな。縮地は私も使えるし、玉竜がゆかり限定ではあるけどブーストできるし」


 応えるのはこころである。

 どの情報を開示し、なにを秘匿するか。

 そういう判断は魔王より天界一の知恵者の方がずっと巧みだから。


「ふむ。ありふれた能力というには、大興奮だったんじゃないかな?」

「それは、実剛が処女を切った(初体験だった)からだよ」


 これまでまったく能力が発現することなく、ただの人間と変わらなかったのだと、知恵者が説明する。


「ということは、他の能力は使えないということかい? サネタカ」

「ですね。このふたつだけです」


 視線を向けられ、次期魔王が頷いた。

 ふうむと腕を組む監察官。


「おそらく、という域を出ないけど、きみたちはレラやハイドラの力を、限定的に受け継いでいるということなのだろうね」


 たとえば絵梨佳の使う不可視の剣。

 あれはインビジブルエアカッターという技で、難易度としては小学校に上がる前の子供が使いこなせるレベルの能力だ。

 地球人の年齢に換算した場合。


「うへえ……」


 おもわず顔をしかめるこころ。

 封神演義陣営のトップたる太公望を切り刻んだのが、日本でいう幼稚園児レベルの技とか。

 本人がきいたら泣いちゃうかもしれない。


「サネタカの能力解放は中学生くらいだね。そもそもこれができないと宇宙船乗り(セイラー)にはなれないってくらいの、基礎的な力だよ」


 ただ、能力解放ができて、風の剣ができない、というのは普通はありえない。

 能力というのは、基本的に順番に使えるようになっていくものだからだ。


 人によって使えないものがあったりとか、先に上位の技が使えるようになったりとか、そういう才能に依存したような発現の仕方はしないのである。

 もちろん得手不得手、というのは存在するが。


「つまり?」

「レラやハイドラは、部分的にしか遺伝しないよう、遺伝子に手を加えたんだろうね。地球(テラ)人がもつには、まだ強すぎる力だと考えたのかもしれないね」


 こころの問いに、肩をすくめてみせる。

 そこまで考えたなら、本星に戻ってから子作りすればいいのに、と苦笑しながら。


 ともあれ、限定的な能力しか持たず、地球原産の神や人間とも親しく交わっている以上、排除するというのは乱暴すぎる。

 このまま地球(テラ)人として暮らすなら、経過観察ということで問題ないだろう。


 ただし、そこで問題になるのは、澪の血族の目的(・・)だ。

 もし彼らがこの力を用いて地球(テラ)の支配をたくらむとかいうなら、監察官として看過できない。


「どうかな? この点は」

「ん。それはないよ。暁貴さんと愉快な仲間の目的は、町おこしだからね」


 くすくすとこころが笑う。

 いろんな神話の神や、伝説の鬼や、勇者やニンジャや聖職者や、人間までよってたかって(・・・・・・・)何をするかといえば、町おこしだ。

 彼らが望むのは、澪という小さな町を発展させ、みんなが笑って暮らせる場所にすること。

 たったそれだけ。


「ふむ? どうして集まる必要があるのだろうか?」

「あなたたちには理解が難しいかもしれないね」


 異能を持つというのは、それだけで差別の対象となってしまう。

 持っていない者が大多数を占める世界では。

 そしてそれは結局のところ、二者択一にならざるを得ない。

 打倒するか、打倒されるか。


「きっとあなたたちは、そういう愚かさとは無縁なんだろう? ハスター」

「まあ、差別とか偏見とかいう単語を聞いたのは、一万年ぶりくらいだね。きみたちでいうところの学校で習ったことがある程度だよ」

「だと思った。私たちの文明は未熟で、あなたたちには遠く及ばない。だからコミュニティを広げることなく、この小さな町で平和に暮らしたいってことさ」


 言い終え、知恵者が魔王に視線を投げる。

 なにか付け加えることはあるかい、と。


「平和に暮らす事業の一環として、うまいもんを作るってのがあるぞってくらいだな」


 暁貴が笑った。

 けっこうどうでも良い部分を口にしながら。


「ほほう」


 そしてなぜかハスターが食いつく。


「秋にもグルメイベントが予定されてるんだぜ」


 そういって耶子に視線を送った。

 軽く頷き、ガネーシャの転生者が続ける。


「澪さんに負けないもんを出品しますよ。負けないっていうか、ウチらが圧勝ですけどね」


 ふふんと胸を反らしたりして。

 ハスターの目が細まる。


(こころ)みに問うんだけど、そういうのは頻繁におこなわれるのかな?」

「頻繁かどうかはわからんが、毎月どっかこっかで食い物系のイベントはやるかな。なにしろ北海道は食の王国だからな」


 にかっと笑う魔王。


「私が食べに行ってもいいのかな?」

「もちろん。澪は受容と蓄積を旨としていますから。どこの陣営の人でも、どんな立場の人でも、お客として訪れてくれるのは大歓迎です」


 応えたのは次期魔王。

 街の空気は自由に。

 これは、彼らが改革を志したときから掲げているスローガンだ。


 よそ者を見たらドロボウと思え、などという排他的な空気こそ、最も忌避される類のものだ。

 敵でもドロボウでもスパイでも大歓迎。

 それが澪に吹く風となる。


 ただし、殺したり盗んだり騙したりしたら当たり前のように処罰されるけどね。


「なるほど。きみたちのことが少しだけ判ってきたよ。サネタカ」

「良かったです」

「澪の血族を排除すべき、という私の考えは白紙撤回しよう」


 わだかまりをとく笑顔を見せる。

 ほとんどの者がほっと胸を撫で下ろした。


 暁貴とこころなど、ちいさく掌を合わせたほどである。

 このセリフを引き出すために、澪の血族なんてたいしたことないよーんと、なんにも野望なんてないよーんと、アピールしまくったのだから。


「よし。宴会だな。勝てなかったから祝勝会ってわけにゃいかねえが」

「チクショー会ですね。伯父さん」

「負けたの、主にお前のせいなんだぞ? 実剛」

「さーせん」


 魔王と次期魔王がくだらないことを言っている。


「あなたたちも参加してくれるだろう?」

「いいのかい? 私は今の今まで敵だったのだけど」

「手打ちが済んだのなら敵じゃない。それが澪流らしいよ」


 肩をすくめる天界一の知恵者。

 まったく、彼女だって半年ちょっと前までは敵だったのだ。

 なんで暁貴の立場を代弁して、頑張って交渉してるんだって話である。


 まさか私まで、人たらしの魔王に籠絡されているとか?

 不吉な想像をしてしまい、慌ててぶんぶんと頭を振るこころだった。


 


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