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東方交換録  作者: シン
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先手必殺~花は蠢き、鬼は嗤う~

~レミリアSide~


「よかったのかしら?あの子を行かせちゃって」

「あら?もちろんじゃない。あの子だって、あいつと戦いたかったでしょうしね」

「私がしてるのはあの子の心配じゃなくて、貴女たちのことよ。あの子がいなくて、私に勝てるのかしら?」

「何よ、それこそ愚問ね。なんならハンデとして、私一人でやってあげてもいいのよ?」

「馬鹿なこと言わないでよレミィ。こんなの相手にハンデなんて、無謀通り越して尊敬されるレベルよ」

「どんな形であれ、尊敬されるのは嫌いじゃないわ。常人では出来ないことを出来るんだからね」

「お姉様!独り占めなんてダメ!!私だって遊ぶんだから!!」


 今、我が紅魔館の3人は、風見幽香と対面している。四季のフラワーマスターと呼ばれる大妖怪・・・その強さは、あのスキマにも匹敵するとかなんとか・・・どうだかわかんないけどね。


「あらあら、たかだか500年そこそこ生きただけの吸血鬼風情が、ずいぶんと大口を叩くじゃないの」

「無駄に年月を過ごして花を見てるしかないババァに言われても、痛くも痒くも無いわね」

「あら、花の良さがわからないなんて、まだまだ子供ね」

「その傘は紫外線避けかしら?若作りも大変ね」

「この傘は私の武器よ。ついさっきのことも忘れちゃったのかしら?若いのに大変ね~」

「年食ってるだけあって返す言葉が豊富ですこと」

「貴女と違って、しっかり世間を勉強してるだけよ。何百年も引きこもっててそんなことも分からないのね」

「レミィ・・・口先じゃ勝ち目は無さそうね」

「な、なによ!!口先で勝ったって関係無いわよ!!」

「あら?何を当たり前のことを言ってるの?それに、私は勝負なんてしたつもりは無いわ。普通に会話してるだけで、そっちが勝手に負けたって思ってるだけじゃないかしら?」


 あああああああ!!!!イライラする!!!!何よ!!ああ言えばこう言う!!馬鹿みたいに怒ってくれたらよかった物を!!


「それで、貴女の狙いは私をイライラさせて冷静さを忘れさせるってとこかしら?今の貴女みたいに、ね」

「っ!!ええ、そうね・・・おかげで冷静になれたけど」

「どういたしまして。何も無くったって勝てるのに、勝手に冷静さを欠いて自滅なんて、興醒めもいいとこだもの」

「全くね・・・レミィ、こいつは多分今までのどんな相手より強いわ。馬鹿なことやってたらやられるわよ。」

「お姉様・・・そろそろいい?もうフランお話飽きちゃった」

「アンタ達・・・好き放題言ってくれるじゃない・・・いいわ、長々と話してたって仕方ない。さっさとコイツを倒して、あの元凶の男をぶっ飛ばすわよ」

「貴女たちじゃ無理よ。私が行かせないし、何よりも、万が一行けたとしても、あいつには絶対勝てないわ」

「あら?アンタも挑んで返り討ちにあったのかしら?なっさけないわねぇ・・・」

「えぇ、そうよ。完膚なきまでにやられたわ」

「「え?」」

「あのお兄さんそんなに強いの?」

「強いわ。とんでもなくね」


 ど、どういうことよ・・・コイツですら手も足も出なかったですって・・・?そんなやつがいるわけが・・・


「たかだか能力を入れ替えるだけの力で、どうやって・・・」

「フフッ・・・」

「何がおかしいのよ」

「いえ、彼の言ったとおり、望んだとおりの方向に進んでると思ってね」

「それは、どういうことかしら?」

「別に喋ってもいいけど、そろそろその子が限界なんじゃない?」

「そうみたいね・・・」


 フランはどうやら我慢の限界が来たらしく、レーヴァテインを出していつでも攻撃できる状態だった。ま、この子にしてはよく我慢した方ね。


「お姉様、もういい?」

「えぇ、いいわ。行きなさい、フラン」

「エヘッ。お姉さん。フランと遊びましょう?」

「ええ、いらっしゃい。余力がある限り、いつまでも続けて遊んであげるわ」

「いいけど、そんな余力あげないよ。あなたがコンティニュー出来ないのさ!」


 言うやいなや、すぐにレーヴァテインを片手に飛び込むフラン。近づきながら片手で弾幕を放ち、一気に距離を詰める。もちろん、私やパチェも見てるだけでなく、私はグングニルを構えてあいつが避けるのを待つ。パチェもロイヤルフレアをいつでも発動できるように待機してる。まずは先手を・・・


「あらあら、最初からずいぶん飛ばすわね。でも、もう遅いわね」

「何を・・・っ!?」

「レミィ!!」


 いつの間にか足に蔦が絡まってる!!さっきの話の最中にすでに!!でも、この程度の蔦ごときで!!!!


「ふん!こんなもので吸血鬼を止められると・・・」

「思ってないわ?だからこそ、油断せず追い討ちをかけるのよ」

「キャッ!!」

「パチェ!?」

「まずは一人ね・・・無視しちゃってごめんなさいね、今からしっかり遊んであげるわ、フランちゃん?」

「あぁ~んもう!!このお花邪魔ーー!!!」


 どうやらフランは花に邪魔され動けず、その隙に一気にこちらに来たらしい・・・いきなりパチェがやられるなんてね・・・


「やってくれるじゃないの・・・」

「これは弾幕ごっこじゃないんだから、開始の合図なんて無いのよ」

「分かってるわよ。だから・・・これで死んでも、恨まないことね!!」


 そう言いながら手に持っていたグングニルを全力で投げる。妖力を帯びたグングニルは轟音を響かせて跳んでいく。でも、もちろんこれは囮、分かってるわね・・・フラン。


「あら、怖いわね。でも、真正面からやっても意味無いんじゃないかしら?」

「えぇ、そうね。アンタが避けたのが左方向だったら意味は無かったわ」

「ええ~~~い!!!」

「あら、お花と遊ぶのはもう終わったのかしら?」


 投げたグングニルが避けられ、その直後にフランがレーヴァテインを思いっきり振り下ろす。幽香もそれを傘で受け止める。ここだ!!


「終わりよ!!」

「それはどうかしら?」

「減らず口を!!!」


 幽香の頭部に向けて、思い切り拳を振りぬく。常人なら一撃で消し飛ぶだろうけど、こいつなら死にはしないはず・・・


「あら、ずいぶんとかわいいパンチね?」

「ど、どうなって!!」

「動きを止めてもいいのかしら?」

「ガッ!!」


 幽香に蹴られ、私の身体が大きく吹き飛ぶ。空中で体勢を立て直し、幽香を見据える。今のはいったい・・・


「お姉様!!おかしいの!力が!!」

「フラン!?貴女もなの!?」

「なんかわかんないけど、急に力が入らなくなっちゃったの!」

「くっ・・・!何をした!!」

「手の内をばらしちゃうのもつまらないけど、いいわ。その焦った表情を見れただけでも十分だもの」

「馬鹿にして・・・!」

「私の能力は『花を操る程度の能力』。普段は使わないけど、やろうと思えば花を使ってなんでも出来る。例えば、『吸血鬼の力を常人と同じにする花粉』を持つ花を作ったりね」

「でも、お花なんてこの辺りには全然・・・」

「残念ながら即効性は付けられなかったのよ。まぁ、それでも十分に早かったほうかしらね?」

「まさか・・・あの蔦とフランの邪魔をした花が!!」

「お勉強してなかったレミリアお嬢様も、これは分かったみたいね?まぁ、分かったところで、もう遅いみたいだけど」


 迂闊だった・・・!!あの時点ですでに2重3重の罠が仕掛けられてたなんて・・・!!


「お、お姉様・・・」

「大丈夫よ!!身体能力が無くったって、スペカは使えるわ!」

「ふふふ、その調子よ、もっと私を楽しませてちょうだい?」


「コンティニューが出来る限りね」


~魔理沙Side~


「へぇ~、てっきり幽香の方に行くと思ってたけど、こっちに来るんだ」

「ま、霊夢にやらせるのも気が引けるしな。それに、もうあいつとやりあうなんてごめんだぜ」

「おろ?その言い方だと、魔理沙はアタシと戦うのなんて全然気にしないって聞こえるな~」

「そのとおり・・・なんて、そんなわけないだろ?でも、これは異変なんだ。それを止めるのは私たちの仕事なんだぜ」

「えぇ、その通りです。萃香さん、悪いですがここで止めさせていただきますよ」

「はぁ・・・なんで私がこの人と戦わないといけないのやら・・・」

「あややや・・・これは確かに、すごくやりにくいですねぇ・・・」

「妖怪の山の連中も一緒かい。昔あんだけ躾けてやったのに、まーだ向かってくるなんて・・・これはもう一回躾が必要かい?」


 今私たちの目の前にいるのは一人の小柄な少女・・・の姿をしたとんでもない怪物、鬼の萃香。ついさっきまであいつのせいで忘れてたとはいえ、まさかこいつが向こう側だなんてな・・・ほんとにとんでもない連中ばっかり集めたもんだぜ。それに、妖怪の山の連中・・・特に天狗二人はこいつが苦手っぽいんだよなぁ・・・。


「なぁ、こいつらなんでこんなびびってんだ?」

「私も話でしか聞いたことが無かったんですが、なんでもその昔、妖怪の山のたくさんの妖怪達は、山の四天王と呼ばれるたった4人の鬼に負け、それからは鬼の娯楽のために、何度も戦わされ続けた、と」

「おろろ、そんな風に伝わっちゃってたのか。本当はすこーしばかり違うんだけどね」

「そうなのか?んじゃあ本当はどうなんだ?」

「4人で勝ったってとこまでは本当。ただ、その後は山の連中が勝手に『山を返せー』って戦いを挑んできてね。そのたびにアタシが相手してやってた。これが本当なんだよ」

「それじゃあ文さん達が怖がってるのも、文さんが何度も挑んで勝てなかったから・・・?」

「いえ・・・それは違います・・・」

「あれ?そうなんですか?」


 うん?話の流れから、てっきり挑んでた本人か、それを見てたかってところだと思ってたんだが・・・。


「あぁ、そいつらは特別でね。当事子供だったこいつらに、アタシが稽古をつけてやってたのさ」

「稽古・・・?あれが・・・?あんなのただのいじめじゃないですか!!勝てもしないのに何度も何度も戦わされて!!こっちの言い分を聞く耳も持たないで!!」

「おや?そうだったかい?でも、おかげで今じゃ山で随一の強さにまでなれてるじゃないか。感謝してもらいたいもんだよ」

「その点に関してはまぁ・・・」

「椛!!流されちゃダメですよ!!悪いのは圧倒的に向こうなんですから!!」

「あの・・・最初に聞いてた話そのままなような気が・・・」

「気のせい気のせい~」

「「気のせいじゃないですよ!!」」


 あぁ・・・なんというか・・・こいつらも大変な目にあってたんだな・・・。


「さってと。昔話に花を咲かせたいのも山々だけど、そろそろ始めないとミクスに怒られちゃいそうだ」

「他のとこも始まってるみたいだしな。私はいつでも準備OKだぜ?」

「私も大丈夫です!!」

「あややや・・・これはもうやるしか無さそうですね・・・椛!行きますよ!」

「文様・・・はい!萃香さん!!我々はもうあの頃の子供じゃありません!何百年と経った今、貴女にだって・・・」


 その瞬間、椛と文の顔の間を拳くらいの石が通り抜ける。さ、流石に今のはびびったんだぜ・・・。見ると、萃香がすごくにこやかな笑顔を二人に向けている。


「そうかそうか、そりゃあ楽しみだな。でも、二人とも・・・アタシが大嫌いなことってなんだか覚えてるかい?」

「「う、嘘を付くことです・・・」」

「そ。アタシは嘘が大嫌いだ。だから、私の前で嘘は言わない方がいい。そう言い聞かせてたね?」

「え、ええ・・・その通りです」

「じゃあ、まさかとは思うけど・・・椛は本気で『アタシに勝てる』って・・・そう言いたいのかい・・・?」

「っ!!そ、それは・・・」

「勝てるぜ」

「ちょっ!!魔理沙さん!!」

「言うねぇ魔理沙」


 まったく・・・こいつら本当にやる気あんのかよ・・・。


「正確には、『勝たなくちゃいけない』だ。私たちはこの異変を止めに来た。そして、それを止めるためには何が必要か。それはこいつを倒すことだ。だったら、勝てるって言うしかないんだぜ」

「よく分かってるじゃないか魔理沙。そ、今魔理沙が言った通りだ。本気で異変を止めたいってんなら、私くらい倒してもらわないとね。今のでごめんなさいなんて言ってたら、今頃二人ともそこら辺の端でおねんねしてたよ」

「わ、私は別に何も言ってないですよ!!」

「何も言わないなんて保守ももちろん論外だよ。まったく・・・何百年も経ってるってのに・・・ちっとも成長してないじゃないか」

「な、なんか改めて言われるとカチンと来ますね」

「おや?ワンコが一丁前に怒ったかい?怖いなら、今なら飼い主の天狗と一緒に山に帰ったら見逃してやるよ?」

「ご安心を、もうふっきれましたから」

「あややや・・・そこまで言われて引き下がっては、山の天狗全てに申し訳が立ちませんね・・・覚悟してもらいますよ?」

「こんだけ言ってようやくかい・・・世話が焼けるガキどもだねぇ・・・ところで、あんたらのボスがいないけど、どうしたんだい?」

「すごく今さらだな」

「お二人には彼・・・ミクスさんのお相手をしていただきます。私たちの中であの人に勝てるとしたら、あのお二人しかいないでしょうし」

「なるほどね・・・アンタ達の本当の仕事は時間稼ぎってわけだ」

「私はしっかりお前も倒すつもりだぜ?」

「さぁ、もう大丈夫です。今度こそ、私たちの成長を貴女にお見せしますよ!」

「お二人だけに任せるわけには行きませんから!萃香さん、貴女を倒して我々も彼を止めに向かいますよ!」


 全員が戦闘態勢に入る。萃香も肩を鳴らしながら準備をする。そういや、弾幕ごっこ無しでコイツとやるなんて思ってもみなかったぜ・・・


「ところでさ」

「な~んだよ。せっかくもうすぐ始まるってのによ~」

「あぁ、ごめんごめん。でもさ、幽々子のところに霊夢一人だけなんて、大丈夫なのかい?いくら霊夢でも、幽々子相手に一人はきついだろ?」

「あぁ、そのことですか。その辺りはご安心を。地底組の二人が応援に来てますし、我々の仲間は優秀なんですよ」

「うん?まだ誰かいるのかい?」

「ええ、いますよ。うちの山の一番のエンジニアが」

「ふ~ん・・・なるほど、そういうことか。よし、これで知りたいことも全部分かったし、今度こそ始めようか」


 今度こそ、全員に緊張が走る。いつ、どこから攻撃が来てもいいように身構える。さて・・・どうするか・・・。


「なーにいつまでも身構えてんだい」

「なんだ?まだなんかあんのか?」

「違う違う。先手をくれてやるって言ってんだよ」

「ど、どういうことですか・・・」

「簡単さ。この人数差で、そっちが先手を取って、ようやくアタシと対等だって言ってんだよ。それとも、まだ足りないってんなら片手でやってやろうか?」

「いくらなんでも舐めすぎでは・・・?もう昔の我々ではないのですよ?」

「悔しかったら力で示してみな。それが出来たら一人前だと認めてやるよ。このヒヨッコども」

「いくら萃香さんとも言えど、ここまで言われては我慢の限界です!!お覚悟!!」

「あ、椛!!」


 萃香の挑発に乗り、椛が一気に萃香に向かっていく。いつもの剣と盾を構え、一気に振り下ろす。萃香は一歩も動こうとしない。っておい!!このままじゃ本当に!


「獲った!!」

「へぇ・・・ずいぶん力をつけてきてるじゃないか」

「なっ!!??」

「でも、そんなんじゃあ鬼の指一本落とせやしないよ」

「椛!引きなさい!!」

「っ!!はい!!」


 一気に椛が戻ってくる。それにしても驚いた・・・まさかあの椛の剣を指一本で止めちまうなんてな・・・やっぱり鬼ってのはとんでもねぇな・・・。


「まったく・・・せっかく先手をやったのにこれじゃあ意味無いね・・・なんならもう一回チャンスをやろうか?」

「ば、馬鹿にしないでください!!今ので十分ですよ!!」

「そうかい?だったらいいんだけどね」

「さぁ!今度こそ始めますよ!!」

「皆さん!しっかり見ててくださいね!あの人はとんでもない実力の持ち主ですから、目を離したらそれだけで危険です」

「分かってるんだぜ。さっきの石投げも見てたしな」


 さぁ、今度こそだ。とりあえず開幕にどでかいの一発撃つか。えーっと八卦炉は・・・。


「魔理沙さん!!」

「え?」

「ごめんね魔理沙、ちょっとの間寝ててね」


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