迫る決戦の時~尽きない疑問、浮かばない疑問~
~さとりSide~
勇儀・・・どうして・・・なんで貴女が・・・。
「さとり様・・・」
「お姉ちゃん・・・」
「ご、ごめんなさい二人とも!そうよね、落ち込んでる場合じゃないわ。こんな時こそしっかりしないと!」
「無理はしないでくださいね・・・?」
「大丈夫よ、お燐。ありがとう。こいしもね」
「うん・・・勇儀、どうしちゃったんだろうね・・・」
「知らないわよ!あんな奴!!私たちを裏切ってどこかに行ったんだもの!!」
「パルスィ・・・」
まだ、あの天子さんとのやり取りは話してない・・・話したら、余計に混乱するだろうから・・・今の私みたいに・・・。
「でも、変ですよね・・・アタイたちや、他の施設の人は皆能力が入れ替わってるってのに、さとり様だけそのままだなんて」
「そうね。ここまで来ると、相手は意図的に私だけをそのままにしているみたいね」
「どうしてだろうね?」
「分からないわ・・・でも、考えられるとしたら一つ。私に気付かせることで、自分の存在を知らせたかった・・・かしら?」
「なんのためによ」
「それも・・・わからない」
「何よ・・・わからない、わからない、わからない。分からないことばっかりじゃないの」
「でも、困ったね・・・これからどうしよう・・・」
先ほども言っていた通り、私以外は例に漏れず能力がバラバラに入れ替わっている。こいしの中にはパルスィの『嫉妬心を操る程度の能力』。パルスィの中にはお燐の『死体を持ち去る程度の能力』。お燐の中にはお空の『核融合を操る程度の能力』。そして残ったお空には、こいしの『無意識を操る程度の能力』が入っている。こいしが普通に会話に混ざっているのもそれのせいでしょう。お空はというと・・・
「うにゅ?」
「ほんとにアンタはいつもとかわんないねぇ・・・」
「難しいことわかんないもん」
「少しは疑問に思わないわけ・・・?」
「ん~・・・勇儀だったら心配しなくてもいいんじゃない?」
「な!!誰も心配なんかしてないでしょ!!」
「え~?でもさっきからすっごいソワソワしてるよ?」
「そっか、今はお空が『無意識を操る程度の能力』を持ってるから、そういう無意識なことに敏感なんだね」
「ほ、本当に心配なんかしてないわよ!!」
「それで?さとり様~。ほんとのところはどうなんですか~?」
「ふふっ、パルスィ?言ってもいいかしら?」
「んなっ!卑怯よそんなの!!」
「なるほど、言われたら困ることを考えてたわけだ」
「あ~ん~た~た~ち~!!!」
「パルスィが怒った~!逃げろ~!」
「「逃げろ~~!!」」
「待ちなさい!!」
ここの皆は、いつもと変わらない・・・能力が入れ替わっても、いつもと何も変わらない空気でいられる・・・。本当にいい子達ね。勇儀・・・貴女の居場所は・・・ここじゃないの・・・?
「さぁ、遊ぶのはそこまでにしましょう。私たちもそろそろ動かないとね」
「おっと、そうですね。それじゃあ準備しましょうか」
「無意識以外で外に出るなんていつぶりかな~?」
「常に日の当たる場所にいられる妬ましい奴らのところに行くのね・・・あぁもう、その行動力が妬ましいわ・・・」
「あ、いつものパルスィだ~」
「いつものってどういうことよ!」
「ほらほら、また遊び始めるつもりかい?アタイはもう準備出来てるよ」
「私も~!」
「私は別に準備なんていらないわ。持って行く物なんて無いし」
「あれ~準備まだなの私だけ~?」
「それなんだけどね、お空にはここに残って欲しいの」
「うにゅ?おるすばん?」
「そう、何があるか分からないから、誰かにここにいて欲しいの、お燐でもよかったけど、今のお燐なら戦闘でも何かの役に立つかもしれないもの」
「分かった~!さとり様、こいし様、お燐、パルスィ、いってらっしゃ~い!」
「行って来るよ~!」
「あんなのが留守番で大丈夫なの?」
「アタイが保障するよ。あの子はとっても強いから」
「さて、まずは外に出てから、目的地は博霊神社よ」
~諏訪子Side~
「ええ~~い!!!」
「おお、少しずつ威力も上がって来てるぜ」
「魔法って結構難しいんですね・・・」
「気合だけでなんとかなるなら楽だったんだけどな」
「早苗、そろそろ身体を休めておきなさい、そろそろ動くんだ」
「あ、はい!分かりました神奈子様」
「あややや・・・大変なことになってきましたね・・・」
「文様と能力が入れ替わってしまうなんて・・・」
「その文には私の能力が行って、椛の能力は私に来てるんだけどね~」
今、私たちは守矢神社の前に集まってる。と言ってももうすぐ出発するところなんだけど。メンバーは早苗、魔理沙、神奈子、私、文屋、白狼天狗、河童という妖怪の山メンバー+αって感じになってる。あ、魔理沙は早苗に能力のコツを教えに来てる。
「しっかしねぇ・・・まさか私と諏訪子の能力はそのまま入れ替わるだけとはね」
「他の皆みたいにローテーションとかじゃなかったもんね」
「神奈子様の『乾を操る程度の能力』と、諏訪子様の『坤を操る程度の能力』・・・真逆の二人が入れ替わるなんて・・・」
「まぁ、こんな能力他の子に扱えないしちょうどいいんじゃない?」
「そうだな。まぁ、能力なんて無くともなんとかなるが」
「あややや、流石神様、素晴らしい自信ですね」
「文様~。文様の『風を操る程度の能力』って、扱い難しくないですか?ちょっと加減間違えたら大惨事になるんじゃ・・・」
「何を今さら・・・私が普段どれだけ細心の注意を払ってるか分かりましたか?それだけ大変なんですよ、その能力は」
「まぁ、その能力が今は無いから、幻想卿最速なんて名乗れないけどね~」
「そうですね~。代わりにこんな役に立つかどうかも分からない『水を操る程度の能力』なんてのをもらいましたしね~」
「水はすごいんだぞ~?こう・・・ドバー!ビシャー!!ザザー!!って!」
「説明下手くそ過ぎでしょ!!」
「で、私には椛の『千里先を見通す程度の能力』かぁ。これがずっとあったら、ばれること無く盟友を観察出来るのになぁ・・・」
「そんな変な使い方しないでくださいよ・・・」
とまぁ、こんな感じに皆入れ替わってる。文屋は少し不満そうだけども、使えない能力じゃないだけ良かったと思うべきだろうね。これでもし、山の厄神なんかと代わってたら、この場にいることすら無かったかもしれないよ。
「さぁさぁ、このまま話してたって埒はあかないんだ。そろそろ出るよ」
「お、待ちくたびれたんだぜ」
「魔理沙は何もしてなかったじゃん」
「それは酷いぜ。せっかく早苗の面倒見に来てやったのによ」
「いやいや、助かりましたよ魔理沙さん」
「お礼はまた今度何か借りに来るぜ」
「あややや?犯行予告ですか?これはスクープのチャンスですね・・・」
「いや、そこは事前に止めましょうよ」
「にとり印の罠、今なら格安だよ」
「こっちもこっちで商売しない」
「こらこら、いつまで続けるつもりだ?」
「怒られてしまいましたね。じゃあ行きましょうか・・・っとその前に」
「どうしたんですか?文様」
「にとりさん、貴女はこの山に残っててください」
「え?どうしたのさ急に」
「何があるか分かりませんからね、念には念を入れる必要がありますから。椛の能力があれば状況把握も早いはずです。万が一の時は、どこかに応援を頼みたいんです」
「神様二人を前にして『もしも』なんてよく言ったね~」
「神様二人がいるからこそ『もしも』なんですよ。あり得ないような何かが起きたときに備えて、ってわけです」
「流石は文屋、口は達者だねぇ」
「いえいえ、それほどでも~。というわけでにとりさん、頼まれてもらえますか?」
「うん。そういうことなら仕方ないね。引き受けたよ」
これで、全部の準備は万全だね。さぁ、今度こそあらためて。
「出発するよ!まずは博霊神社へ!」
~ミクスSide~
「ここまでは順調だな・・・」
「思いのほか人数が多いみたいだけども、大丈夫なのかい?」
「あら?一人4、5人くらいを受け持てばちょうどいいんじゃない?」
「おっと、地底の連中はアタシがやるよ。あいつらの事はアタシが一番知ってるからね」
「私はべつにいいよ~。元より暇つぶしだからね~」
「鬼さんたちは好戦的だね~。うちの地獄の鬼たちも、少しくらい見習ってもらいたいもんだよ」
まったく・・・こいつらを引き入れるのには本当に苦労させられた・・・だが、それに見合った力を持っている。限りなく俺に近く、『あの目』を知っている者たち・・・
「さぁ、そろそろ幕が上がるぞ」
「おろ?もうそんな時間かい?」
「へへ・・・腕が鳴るねぇ・・・」
「久しぶりに、本気を出すかもね・・・」
「よーっしいつでもこーい!!」
「まぁそう慌てるなよ」
「そうそう~。慌てたって疲れちゃうだけよ~?もっとゆ~っくりしてたらいいのよ~」
「もちろん、あんたにも働いてもらう、大丈夫だな?」
「ええ、もちろんよ~。ふふふ、いつ以来かしら?」
俺たち『6人』は皆準備を始めた。
「さぁ、集まって貰おうか。俺たちのいる博霊神社までな」