集う協力者~その目に映るは~
~ミクスSide~
「四季のフラワーマスター、風見幽香だな?」
「貴方に名乗った覚えも無ければ、名前を呼ぶことを許可した覚えも無いんだけど?」
「そりゃあ初対面だからな。気を悪くしたなら謝ろう」
「あら、紳士なのね。そういう性格は嫌いじゃないわよ」
「それはどうも」
今、あいつに教わった場所に来て、最強クラスの妖怪と名高いこの風見幽香の目の前にいる。だが・・・
「まったく・・・ここまで強いとは聞いてないぞ・・・」
「あら?こんなただ花を愛するだけの女性に対して言うセリフかしら?」
「そう思うなら、とりあえずその出しまくってる殺気を収めてくれないか?落ち着いて話も出来やしない」
「それは、貴方のお話次第かしら?」
「ごもっともだな。いいだろう、こちらから話そう」
現在の状況、こちらの目的、今後の方向性などを手短に話す。もちろん、全て包み隠さずだ。
「なかなか素敵なことをしようとしてるじゃないの」
「その言い草は、どうやら交渉は決裂のようだな」
「私になんの利点だって無いもの。それに、そんなことをしたら私の大事なこのヒマワリ畑が壊されるかもしれないわ」
「確かに、利点は無いだろうな。そちらはこっちと違って『そういうの』を気にしない妖怪なんだろうしな」
「ええ、そうね。そんなのを気にしたって仕方ないもの」
「さて、こうなったら、とても面倒だがお前を敵に回したくは無いから、お前に味方に付いてもらわないとな」
「別に敵になるとも言ってないのだけど?」
「不確定要素は信じない主義なものでな」
「それで?どうしようって言うのかしら?」
「味方になるのを断ればこのヒマワリ畑を壊す」
その言葉を言い切った瞬間、俺の真横を極太のレーザーが通り過ぎる。次は無い、そう言いたいのだろうな。
「当てなくて良かったのか?」
「あら、久しぶりだから腕が鈍ってるだけよ」
「本当にそうなら、味方にする必要も無いんだがな」
「そうね、私の腕が感を取り戻す前に、さっきの言葉を撤回することをオススメするわ」
「それは、お前の回答次第かな?」
「ごもっともね。いいわ、後悔しないことね?」
まったく・・・戦うのは好きじゃないんだがな・・・
~幽香Side~
いきなりやって来たかと思えば、この男・・・この私に味方になれと言ってきた挙句、断れば私のヒマワリ畑を壊すだなんて・・・よっぽど死にたいらしいわね・・・
「言っておくけど、手加減は苦手なの。死にたくなかったら全力で逃げなさいな」
「安心しろ。こっちが手加減してやる」
「ずいぶん、舐めた口を利くものね?」
「本気ならもう勝負は着いてる頃だからな」
「その口、5分後に動くといいわね」
その言葉を皮切りに一気に接近する。まずは右の回し蹴り。腕でガードされるもそのまま回し切って吹き飛ばす。吹き飛んでる男に手を向け50ほどの弾幕を撃ち出す。避けられないようにバラけさせたけど、男に動きは無くそのまま直撃する。砂煙があがり、男の姿を隠す。
「まさか、これで終わりなわけじゃないでしょ?」
「まぁ、こんなので終わるくらいならあんな大口は叩けないな」
「あら、ずいぶん元気そうじゃない?ちょっとショックだわ」
「弾幕の威力はかなりの物だが、物理的な攻撃はやはり鬼の方が上か」
「あんな力だけの奴らと一緒にされてもね」
「これは失礼した。さぁ、次はこちらからも行こうか」
来るべき攻撃に備えて多少身構えるも、男から何かしてくる気配は無い。それなら・・・今のうちにこちらから仕掛けようかしら?相手の足元から蔦を・・・!!??
「貴方!!何をしたの!!」
「もう気付いたか、流石フラワーマスター」
「いいから答えなさい!!私の『花を操る程度の能力』をどこにやったの!!?」
「さぁて、どこだろうな?そんなことより、ボーっとしてていいのか?」
「!!」
気付けば私の周りには20ほどの弾幕が覆っていた。この男・・・いつの間に!!でも、この程度の数なら・・・!こちらが気付くのを待っていたかのように弾幕たちが動き出す。真っ直ぐ、弧を描き、曲がりくねり、周りと合わさり大きくなり。様々な動きをしながら迫ってくる。その全ての軌道を見切り、グレイズすることもなくかわしきる。が、その直後、後頭部に軽い衝撃が来る。驚いて飛びのき後ろを振り向くと、そこにはチョップをしたような体勢の男が立っていた。
「まずは一回だ。早い内に本気を出さないと、5分後には5回は死ぬことになるぞ?」
「そのようね・・・貴方を過小評価してたみたい」
「なんだ、思ったより冷静だな?てっきり手加減などするなと激怒するとばかり思っていた」
「あら?人を見かけで判断しないように教わらなかったかしら?今の私は、とても機嫌が悪いのよ」
「あいにく、ご機嫌斜めなお嬢様を宥めるやり方も教わっていなくてね、ご教授願えるかな?レディ?」
「なぁに、簡単なことよ。今すぐこの場で、私に殺されなさい」
そう言いながら傘を相手に向け、そこからいつも通りレーザーを放つ。今度は最初のように加減も外したりもしない。本気の一撃。でも、油断はしない。出力を弱めたりせず、そのまま撃ち続ける。そこにいるのは気配で分かってる。このまま押し切れば・・・
「レーザーってのは、要は熱の塊なわけだ」
「!!まだ!!!」
「そこに妖力を込めることにより、破壊力を与えている」
気配がこっちに近づいてくる・・・レーザーの真正面から・・・
「空気中には無数の水分が漂っている、それこそ、集める事が出来れば、熱すらも奪うほどにな」
「な、なんで・・・」
どんどん近づいてくる・・・ありえない・・・
「妖力は、こちらが同じ量を与えれば、相殺される・・・」
そして、気配も声も目の前にたどり着く・・・
「だから、こんな風に、真っ向から打ち破れる」
「う、嘘・・・」
私の撃つレーザーを、片手で受け止める男がそこにはいた・・・こんなこと・・・今まであり得なかった・・・
「ご機嫌麗しゅう・・・レディ?」
「ば、化け物・・・」
「そう、俺が言ったのは『その目』だ。分かってくれて嬉しいね・・・それじゃあ・・・」
「っ!!!」
自分の死を覚悟して堅く目を瞑るも、何も起きない・・・恐る恐る目を開けると、そこには頭を下げる男の姿があった。
「な、何を・・・」
「すまなかったな。力を返しておこう」
「それって、どういう・・・」
「お前はそんなに弱くない、そういうことだ」
「っ!!これは・・・貴方、相当な狸みたいね・・・」
こんな馬鹿げた力があるなんてね・・・
「こうでもしないと、お前を圧倒なんて出来ないさ」
「あら・・・その言い草だと、こうしなくても倒せる。と聞こえるけど?」
「さぁてね。それで、お話は受けていただけるかな?」
「分からないわね・・・」
「答えが分からないってのはまたどういうことだ?」
「違うわよ。それだけの力を持ってる貴方が、何故ここまで回りくどいやり方をするのか。それが分からないって言ってるの」
「本当の『力を持つ者』の苦しみを分からせるためには、半端な力を持つ者たちには『力を持たぬ者』になってもらわないといけないんでな」
「なるほどね・・・それで、私ならそれが分かると?」
「『あの目』を向けた時点で、そうだろう?」
「まったく・・・本当に分からないわね・・・」
ここまで、いいように丸め込まれるとはね・・・それも、全部彼の思いの強さによるもの・・・。勝てないわね・・・。
「いいわ、貴方に従ってあげる」
「いいや、従う仲間なんて必要ない。俺に・・・俺たちに欲しいのは」
「そうね、分かってるわ。私がなるべきものは」
「「『対等な協力者』」」