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東方交換録  作者: シン
28/31

全てを込めて~迫る決着の時~

~霊夢Side~


「霊夢、貴女は下がって弾幕で援護を、さとりも同じく援護をしながら、可能な限りあいつの行動を読んで頂戴。諏訪子、あんたには大変だけど遠近両方で攻撃してもらうわ。レミリア、危険だけど近距離であいつの注意を引いて頂戴。各自、どんな攻撃が誰に来ても即座に対応して、次の動きを常にその場で考えて動きなさい。追い込みや連携なんて無理よ」

「言われなくても分かってるわよ。諏訪子、チャンスがあれば私ごとでいいわ。確実にやりなさい」

「そんなチャンスが来れば・・・だけどね。その代わり。後で文句言ったって聞かないからね」

「混ざってる雑音も、他の事に気を取られれば少しは消えるかもしれません。ですが、ほとんど意味は無いと思っていてくださいね」

「弱気なこと言ってんじゃ無いわよ。ここで私たちが負けたりしたらどうなるか分かったもんじゃないんだから。そろそろ行くわよ!散霊『夢想封印 寂』!」

「さてさて、ここらで何か目新しい事でもしようかな?例えば・・・」


 そう言いながらも弾幕を回避し、薙ぐように手を振るうミクス。何か飛んでくるかと思い身構えるも、何も飛んだりはしなかった。でも、こいつが特に意味も無いことするはずが無いし・・・。例えば・・・そう、弾幕を何かしらの方法で・・・っ!!


「全員上に跳びなさい!!回霊『夢想封印 侘』!」

「流石だな。もう気付いたか」

「霊夢の弾幕がそこらで消えてる・・・まさか、透明な弾幕!?」

「みたいだね。しかも、かなり広範囲に撃ってたみたいだよ」

「周囲の空気と弾幕を混ぜたのかしらね。ずいぶんいやらしい攻撃をしてくれるじゃない」

「おかえしはたっぷりと・・・ね!」

「っと、吸血鬼のお嬢様はせっかちだな。あわてなくても逃げたりしないぞ?」

「あら、他の人に取られる前にキープしただけよ。なんせ貴方は皆から追われてるんですからね」

「ダンスは苦手なんだけどな。それに、そっちの言うとおり、ずいぶんと人気者みたいでね!」

「そういうこと。こんな可愛い子に囲まれてるんだから、悪い気はしないでしょ?」

「その手に持ってたり飛ばしてくる刃物が無ければ・・・いや、なくてもお転婆だから一緒かな?」

「このくらい受けとめてもらわないと。男の子で・・・しょ!」

「おっ・・・と。オマケに足まで飛んでくる来た。どう思う?そこの薬師さん?」

「まぁ、はしたないのは確かだけど、それは今に始まったことじゃないですもの。諦めてちょうだい」

「あらら、そっけないお言葉におそろしい弓矢ですこと。痺れ薬みたいな簡単な薬は弾幕の矢にも付けれるのか」

「私ほどの天才になればそのくらいは簡単なのよ。こんな弾幕に付いてるからって効力を甘く見ないことね」

「そりゃあ薬師さんの作る薬なんだ。しっかりと気をつけさせてもらうよ」

「さとり、あいつの調子はどう?」

「ダメです・・・まだまだ雑音が消えません・・・あまりそっちに意識を持って行き過ぎると向こうからの攻撃に反応が間に合いませんから・・・」

「いいわ、少しずつでいいのよ。それが私たちの勝率を少しでも上げるんだから」


 そう、この状況、圧倒的に向こうが有利。あんな芸当をして、それを看破された直後の連続攻撃だってのに軽口を叩きながら悠々と捌いてる。身体能力でも相当な差があるのに、それに加えて心を読まれてるというこの状況。こちらも心を読むか、相手の心を読む能力を封じない限り、勝ち目はほぼ無いに等しい・・・私に出来ることは・・・考えること!!常に思考を止めないこと!!


「これだけやっても、まだ効かないなんて、ほんと、どうかしてる、よ!」

「おお、怖い怖い。もう一人の神様と二人掛かりの時もそうだったけど、ほんと容赦なく急所を狙ってくるから避けなきゃほんとにヤバイな」

「その余裕が、気に食わないんだよ!!」

「っ!危ない危ない、もう少しで・・・」

「必殺『ハートブレイク』!」

「ぐっ・・・!掠めたか・・・!」

「しっ!!」

「っと!どんなにやばくても、あんたの攻撃だけは食らうわけにはいかないな。っと・・・ほんの一瞬でこれだ・・・やってられないなぁ・・・」

「諦めるなら今なら許すわよ?」

「まさか。ここから・・・だろ?」

「もちろん。まだまだ夜にもなってないもの。夜になり、夜が明けるまで踊りましょう?」

「熱いお誘い、感謝するよ。だけど、そこまで起きていられるかな?お嬢さん?」

「嫌でも起きてることになるわ。なんせ、主役の殿方と踊りっぱなしなんですものね」

「君一人のお相手をしてるわけにもいかないんだよ。なんせ、わがままなお嬢さんが多いから・・・な!」

「そうそう!!独り占めなんてさせないからね!!」

「あら、主役さんは大変ね。さぁ、どんどん行くわよ!」


 連続攻撃に次ぐ連続攻撃。先を読む暇を与えないほどの連撃で、徐々に攻撃は通りつつある。諏訪子はミクスの付近で鉄の輪同士をぶつけ合わせ、本人にも分からない反射を使い虚を突く攻撃を。レミリアはその間にも常に攻撃の手を緩めず、一瞬の隙を狙い確実な一撃を狙いに行く。もちろん、私やさとり、永琳の弾幕も手は緩めてはいない。この調子で攻め続ければ、勝率は上がるはず。


「っと・・・まさかここまでやるとはな・・・正直、見誤ってたよ・・・いいだろう。ここからは奥の手は惜しまないことにしよう」

「まだ何かあるの?こっちはいい加減先の見えないそっちの底にうんざりしてるんだけど?」

「ははっ、それにしっかり着いてきてる神様が何を言うやら・・・さて、準備は完了した。もう、攻撃は食らわない」

「ずいぶんな自信ね?でも、完全に読めない先の行動を、どうやって回避するのかしら?」

「さっきまでなら・・・な。嘘だと思うならやってみればいい。なんなら、君が一緒でも問題ないぞ?お嬢さん?」

「ほんと、人をおちょくるのが上手いわね・・・でも、たまにはそういう安い挑発にも乗ってあげようかしら。本気で・・・つっ!?な、何を!?」

「これはラッキー・・・なんてね?」


 明らかにあいつの纏う空気が変わった・・・。さっきまでと同じく軽口は出てるものの、なんだろうか・・・隙だらけのようにしか見えないのに、攻撃が当たる気がしない・・・。レミリアも多少の違和感はあれど、待っても仕方ないと考えたらしく、攻めに転じようとした・・・その間際のことだった。人間の目では追えない速度。私もギリギリってくらいだったけど、そんな速度で一気に横に回り込んだのだが、その回り込んだ先の目の前に、すでに弾幕が置いてあったのだ・・・今のは・・・何を・・・?


「今のに反応できるわけ・・・いえ、それ以前に、私がこの位置から攻撃しようとしたのは貴方の動きを見てからよ。このタイミング、角度なら反撃は無いという絶対的な自信があったから、その位置に飛び込んだ。でも、あんたはそれに対してしっかりと弾幕を返して見せた。むしろ、私が来る位置が分かっていたかのようにね・・・何をしたの?」

「よく分かってるじゃないか。君が言ったとおり、君が来る位置が分かったから、そこに弾幕を置いただけさ」

「ですが!私の能力ではそんな先までは読み取れません!先読みしての攻撃だなんて・・・」

「誰が・・・それだけだって言ったかな?」

「え・・・?」

「言っただろ?俺の能力は混ぜる程度の能力。それはあらゆるものを混ぜられる。もちろん・・・」

「能力も例外じゃない・・・ってことね・・・」

「そういうことさ。さとりの心を読む能力は確かに強力だ。だが、瞬時に考えられた事柄には自身の反応で動かざるを得なくなる。足りないのは何か。それは先を見据える能力だ」

「先を・・・まさか貴様・・・!」

「流石、気付くのが早いな。その通り、君の能力、運命を操る能力を応用し、それに狼少女の千里先を見通す程度の能力を混ぜ、完成させた。名付けるなら、『未来を視る程度の能力』ってところか」

「そんなことが・・・」

「出来るさ。それほどまでに、君達一人ひとりの能力は強大過ぎる」

「それを全部使ってるやつが何を・・・」


 考えうる限りの最悪に一歩近付いたわね・・・。相手のさらなる強化。それも、こちらの攻撃がほぼ全て無力化されかねないほどの・・・。未来を視るなんて、そんな能力持ってるやつにどうやって攻撃を当てろってのよ・・・それに、言っては無いけど、元の能力である心を読む能力も残してるでしょうし・・・。あぁもう!!どんだけ馬鹿げてんのよコイツは!!


「その通りだ博霊の巫女。もちろん心を読む能力も残している」

「うっさいわね!!勝手に人の心読んでんじゃないわよ!」

「そう怒り狂って闇雲に撃ったって当たらないさ。その隙に乗じて攻撃しようとしても、な」

「ま、そりゃそうよね」

「神様の方も、さっきみたいにぶつかり合わせて意思と関係なく動かそうと、今度はこちらはその跳ね返る場所までしっかりと分かるんだ。それ以上無理して動かすと、そろそろ体力・・・というか、精神力みたいなのが持たないんじゃないか?」

「お気遣いありがとね。でも、伊達に神様やってんじゃないんだよ。こんなところで倒れたんじゃ、信仰してくれてる人間に申し訳が立たないよ!!」

「元気なことだ。だが、そうは言っても当たらないことには変わらないんだけどな。で、こんな風に相手に能力を利用された二人は、どうするかな?」

「くっ・・・!私ではどうにも・・・!」

「未来が視える・・・ね。それなら、私がこれから何を言うかも、分かるんでしょ?」

「あぁ、だから今心底驚いてるよ。なんせこんなことを言うんだからな」

「「それでも貴方じゃ私には勝てない」」


 二人の声が全く同時にその場に響く。私からの攻撃や、機を見ての永琳の矢、果ては諏訪子の鉄の輪の攻撃に至るまで、話をしながら片手間のように避けていく。こんな相手にレミリアは勝算があるって言うの・・・?


「強がり、ハッタリ、甘い考え。そのどれでも無いみたいだな。だが、思考を読まれ、動きを先読みされ、身体能力でも負けているそっちが、どうやって勝つつもりかな?」

「そうね、普通なら手も足も出ないわ。でも、私にはそれが出来るわ。簡単にね」

「なるほどな。運命を操る能力を使い、こちらが視た先の運命を書き換えるのか。確かに、それなら何をしてくるのか分からないから意味は無いだろうな」

「あら、読んじゃうなんてつまらないわね。でも、その通りよ。これなら読み合いは五分。後は相手を実力でねじ伏せるだけよ」

「だが、その実力が俺に負けてるとは考えないのか?」

「もちろんよ。何故なら私は、紅魔館の主、レミリア・スカーレットなのだから。この程度の相手に負けるわけにはいかないんですもの」

「言ってくれるじゃないか。それなら俺は、人生の先輩として一つアドバイスをしよう」

「何かしら?先輩?」

「それはとても簡単なことさ・・・舐めるな」

「がっ!?」

「レミリア!!」


 見え・・・なかった・・・。今、何をしたの?あいつはレミリアから数メートル離れた位置で会話をしてたはず・・・。なのに、目を離してもいなかったはずなのに、気付けばレミリアが真横に吹き飛び、その場には蹴り放ったような姿のミクスがいた・・・。早すぎた・・・?ううん、完全に見えなかった・・・。気付けばそこにいた。そんな感じに・・・


「姫様の能力ね・・・」

「ご明察。誰も使わないなんて言ってないからな」

「レミリアさん!!」

「悪いが、かなり強めにやらせてもらった。すぐには復帰は無理だろうな。確かに彼女の能力は強力だ。だが、すぐに何かを決め付けて考えるのは良くない。予想しうる限りの行動を対策しないとな」

「ほんと・・・化け物じみてるねぇ・・・」

「慣れてるさ。そんな言葉な」

「はぁ・・・仕方ないか・・・」

「永琳?」

「私も死ぬ気でやるわ。だから、あんた達も、しくじるんじゃないわよ」

「ちょっ!何を!!」

「「っ!?」」


 輝夜の能力・・・あれを使えば一瞬で場所を移動するなんて確かに造作も無いわけね。でも、こうなったら尚更どうしようもないじゃない・・・。そんな風に考え始めた頃、永琳が不穏な言葉とともに、自分に注射を打った。なんだってこいつらは何も伝えずにそうやって行動ばっかり!!


「驚いたな・・・かなり気を配っていたつもりだったが、まさかそんな手で来るとは・・・さて、どうしたものかな」

「永琳さん!!そんな薬に副作用が無いわけがありません!!どうしてそんな無茶を!!」

「な、何よ!!今こいつが打った薬がなんなのよ!」

「もしかして、心を読めなくした・・・とか?」

「えぇ、その通りよ。残念ながら一人分しか作れなかったからみんなの分は無いの」

「で、でも!そんな薬じゃさとりが言ってるみたいに副作用があるんじゃ!」

「えぇ、あるわよ。この薬を使えば、数分後には意識を失うわ」

「なっ!?アンタ!!なんてもん使ってんのよ!!しかもあいつは輝夜の能力だってあるんだから時間だって・・・」

「って、出来れば今頃あの薬師さんは倒れてるはずなんだけど・・・どういうことかな?」

「誰が、心を読めなくするだけって言ったかしら?」

「まだ、何かあるの?」

「この薬の効力は、自分以外の能力の拒絶。相手からの能力を受けなくなるわ」

「そうか、確かにそれなら時間を早めようとしても効かないのも頷けるな。でも、それでどうする?俺が能力を使えている限りこちらが有利な事には変わらないぞ?」

「そうね、どうしようかしら?まぁ、まずは真っ向からお相手させていただきましょうかし・・・ら!」

「おっと!中々早いな。最近の薬師ってのはそのくらい動けないと出来ないのかな?」

「うちは特別でね、このくらい出来ないと、毎日のように起きる殺し合いを止めれないのよ」

「なるほど。確かにあの二人を止めるならこのくらいは無いと・・・な!」

「っ!まだまだ・・・行くわよ!!」


 あの一瞬でとんでもない薬を作ったものね・・・。相手からの能力を完全に無効化する薬。反動は大きいものの、上手く行けばあいつを止められるかもしれない・・・でも、あいつ一人じゃ・・・。いや!ここで援護しないでどうするのよ!!私の動きや弾幕は読まれても、それと同時に動く永琳の動きが読めないならやる価値はあるはずよ!


「永琳!上手くやりなさいよ!神技『八方龍殺陣』!」

「こっちも援護するよ!!」

「ちっ!さっきまでならいざ知らず、今この状況じゃ相当邪魔だな!」

「さっきまで当たり前のように出来てたことが出来ないだけで、ずいぶん動きが鈍いんじゃない?」

「言ってくれるな。だけど、こんなんじゃ負けるつもりはさらさら無いけどな」

「そうね。こっちだってまだまだここからよ!」

「っつ!スカートの中にメスとは、薬師じゃなくて曲芸師だったのかな?」

「あらあら、こういうのは淑女の嗜みでしてよ?いつ、どんな相手に襲われるか分からないんですもの」

「怖い世の中だ。今後は淑女に気をつけるとするよ」

「こっちとも遊んでくれないと、ね!」

「小さい女の子はおもちゃと来たか。子守も楽じゃ無さそうだ」

「まだそんなこと言う余裕があるんだね」

「余裕なんて無いさ。これは口が勝手に動いてるだけだよ」

「そういうのを、余裕って言うんだよ!」

「っと、こんな風に話してるけど、そろそろお時間の方がまずいんじゃないかな?」

「えぇ、そろそろ時間かもしれないわね。その前になんとかしないと、ね」

「そう言われると無性に邪魔したくなるな!っと」

「くっ!そう言いながら攻撃してくるなんて、ほんとにお口が勝手に動いてるみたいね!」


 私のスペカの弾幕、さとりからの援護の弾幕、そして諏訪子からの鉄の輪の攻撃。完全に動きが読めない永琳を相手にしながらも、こちらの攻撃をほぼ全てかわしている。永琳の攻撃も、やはり身体能力の差が大きいのか、中々当たらない。このままじゃ永琳が倒れて完全に・・・どうする・・・?


「あぁもう!!なんでここまで当たらないのさ!!」

「そっちの攻撃はまだ視えてるからな。さぁ、もう後が無いぞ?どうする?」

「どうするも何も、無理をしてでもあんたを止めるしかない・・・でしょ!!」

「いい蹴りだ。だが・・・甘い!!」

「うっ!!」

「永琳さん!!」

「まだ・・・まだよ・・・」

「もう止めておけ、これ以上は痛めつけたくない」

「あら、紳士ね。でも・・・レディのダンスのお誘いを無碍にするのは・・・よろしくなくって・・・よ!」

「そのふらついた動きがダンスとは、到底思えないな。死にはしないからといって無理をすれば、どんな後遺症が残るかも分からないんだ。これ以上はもう・・・」

「・・・いたの・・・」

「ん?」

「あの姫様が・・・泣いたのよ・・・妹紅が死ぬかもってなった時にね・・・。私はあの子の付き人として・・・あの子が悲しむ事を許すわけにはいかない・・・そのためには・・・貴方を倒さないといけないのよ!!」

「そうか・・・いいだろう。最後まで相手してやる!来い!」

「はああああああああああ!!!!!」

「ぐっ・・・!これで・・・終わりだ!!!」

「がぁっ!!!」

「永琳!!!!」

「最後の一撃・・・とんでもなくでかかったな・・・だが、これでもう・・・!?」

「え?」

「さとり?どうしたの?」

「き、聞こえます・・・聞こえるんです!!彼の声がはっきりと!!」

「え!?」

「まさか・・・っ!やっぱりか!!最後の最後でやってくれたな!!」


 さとりの驚きとともに、ミクスの大声があたりに響く。長く続くかと思われた攻防はそこからすぐに決着が付いた。最後の一撃。完全に全てを出し切った最後の一撃はミクスに防がれ、反撃の掌底で永琳の体は吹き飛ぶ。そのまま永琳は動く気配はなかった。薬と相まって意識を失ったのだろう・・・。でも、その直後のことだった。何がどうなってるのよ・・・


「永琳さんの・・・薬・・・?」

「そうか!永琳がきっと、最後にあいつに薬を打ったんだ!」

「でも、そんな素振りは無かったし、それに、能力を封じる薬なんてすぐには作れないでしょうし・・・」

「いや、出来たさ、彼女ならね。おそらくだが、途中のメスでの攻撃の際に出た血を回収し、それを元に作ったんだろう。俺が最後に放った掌底に合わせたんだろう、袖の内側にこれが刺さってたよ」

「そ、そんな小さな針で・・・」

「最後の最後にすごい置き土産を作ってくれたものね・・・まだ勝機はあるわよ!!」

「永琳には後でお礼言わなきゃね!!さぁ、ここからだよ!!」

「まいったな・・・まぁ、仕方ないか。能力が封印されたのは痛いが、要はあの頃に戻ったわけだ・・・。ここからは本当の実力でお相手しよう。俺の・・・俺だけの実力でな」

「ははは・・・こりゃ・・・楽じゃ無さそうだね・・・」

「弱気になってる暇は無いわよ!いつまで効果が続くかも分からないんだから!!」

「ここからは私は心を読んで援護に徹します!お二人とも!お気をつけて!」


 永琳が最後に残したこのチャンス。逃すわけにはいかないわね。でも、こいつだって1000年以上を生きた妖怪。元々持つ身体能力だって相当なものがあるのは分かってる。あくまでこっちはようやく戦いの舞台に引き摺り下ろしたくらいの状況だもの・・・向こうもそこそこなダメージはあるけど、こっちだってもう残り3人しかいない。お互いに必死な状況。でも、負けるわけにはいかないものね!


「さっきまでみたくはいかないよ!!行け!!」

「私も行くわよ!!」

「研ぎ澄ませ・・・思い出せ・・・。・・・っ!」

「ちっ!!早いね!!さとり!アイツが行動を起こそうとしたら叫びな!!なんだっていいから分かるようにね!」

「はい・・・ですが、今は、彼は何も考えてません。完全に感覚だけで避けているみたいです」

「そうだろうね!!でも、その方がいい。すぐに思考が変わったのが分かるからね!!あんた自身もすぐに動けるようにするのを忘れないようにね!!」

「はい!!」

「それにしたってどうなってのよコイツ!!さっきまでと変わらないくらい当たらないじゃない!」

「それだけコイツの元の能力が高いんだよ!アンタも気をつけときなよ!!」

「っ!諏訪子さん!!」

「っと!レディに自分から手を出すのは、嫌なんじゃなかったっけ!?」

「それだけ危ないもの飛ばしてきてよく言うな。それに、そういうポリシー持ったままじゃ、どうにもきつそうだから・・・な!!」

「霊夢さん!」

「分かってる!!片手間の弾幕程度に当たるほどやわじゃないっての!!」

「博霊の巫女。流石の腕前だと賞賛させてもらうよ。だが、これ以上着いてくるのはもう厳しいんじゃないか?」

「うっさいわね!!たとえアンタがどんだけ強かろうと、他の全員が倒れようと、私は異変を止めなくちゃいけないのよ!!それは幻想卿を守る博霊としての義務じゃない、私自身がそう決めたからよ!!」

「そうか・・・。なら俺も、全力で応えよう。止められるのなら、止めてみろ!!」


 そこからは凄まじい攻防だった。諏訪子が先ほどまでと同じく接近戦と鉄の輪での攻撃を行い、私が弾幕で援護と要所での追撃、さとりがアイツの思考を読み取り危険回避のために動く。アイツも一人だってのにそれら全てと戦い、無傷とはいかないものの、こちらも少しずつ消耗してきている・・・このままじゃジリ貧かもしれないわね・・・。


「ふぅ・・・やはり神様に博霊の巫女と能力無しで、さらに心を読まれながらの同時は中々に辛いか・・・だが、そちらももう長くはもたなそうだな」

「はぁ・・・はぁ・・・余計な、お世話だよ・・・」

「諏訪子さん!これ以上は危険です!ただでさえ長時間、しかも複数の鉄の輪も常に動かしながら、彼と接近戦をしてるんです!これ以上は本当に・・・」

「は・・・馬鹿言ってんじゃないよ・・・まだまだ・・・だよ・・・」

「馬鹿言ってんのはアンタよ!!もうボロボロじゃないの!!後は私たちでやるから!!アンタはもう・・・」

「へへっ・・・確かにボロボロかもしれないね・・・でも、まだ終わるわけにはいかないんだよ・・・後、少しなんだからね・・・」

「少しって・・・一体・・・」

「何か企んでるみたいだな・・・だが、それを許すほど甘くは無いぞ!!」

「くっ!!せぇい!!!」

「狙いが荒くなってきてるな、それに、動かせる鉄の輪の数も減って・・・っ!!まさか!!」

「気付かれちゃったかぁ・・・でも・・・次で最後・・・だよ!」

「させるか!!」

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!!」

「なっ!?ぐっ・・・!!まさか・・・まだ動けたとはな・・・!」

「言ったでしょう・・・?私は・・・貴方程度の相手に・・・負けてるわけにはいかないって・・・。さぁ、後は頼んだわよ・・・」

「いい活躍だったよ・・・。さぁ、行くよ!発動!」

「ぐっ・・・!!くぅ・・・っ!!」


 あと少しと言いながら戦い続ける諏訪子に対し、直前で何かに気付いた様子のミクス。急いで止めようとするも、レミリアのスペカによりそれは阻まれた。レミリアもそれで力を使い果たしたのか倒れこむも、どうやら間に合ったらしい。諏訪子の合図とともに、周囲に紋様のようなものが浮かび上がり、ミクスが突然苦しみ始めた。この紋様は・・・妖怪の力を封じる結界!?まさか・・・戦闘中にこれを作ってたっていうの!?やっぱりこいつも化け物ね・・・。


「はぁ・・・はぁ・・・っ!」

「さとり!!そっか、あんたも影響を・・・」

「ごめんよさとり・・・伝えてアンタが逃げちゃうと・・・こいつに気付かれるかもって思ってね・・・」

「大丈夫・・・です・・・分かって・・・ましたから」

「霊夢・・・これであいつは・・・今までのような身体能力は無い・・・アンタが決めな・・・」

「全く・・・あんた達皆、無茶ばっかりなんだから・・・」

「一番弱い人間が頑張ってるんだ・・・神様が頑張らないで、どうするのさ・・・」

「それもそうね。いいわ、後は私がやってあげる。今はもう休みなさい」

「あぁ・・・そうさせてもらうよ・・・」

「やってくれたな、あの神様も・・・」

「あら、まだ普通に動けるのね」

「そこまでやわじゃないさ。ただ、さっきまでの傷と合わせて、一気に持っていかれた。正直、ここから勝つのはかなり至難の業かもな」

「そう・・・なら、今から私と『弾幕ごっこ』をしない?」

「は?何を言って・・・」

「アンタは、やろうと思えばこんなことしなくても幻想卿を支配するなんて簡単に出来たはずよ」

「っ!」

「でも、あえてそれをしなかった。それは、心のどこかでわだかまりのようなものがあったから・・・違うかしら?」

「・・・どうだろうな・・・。今となっては、俺にだって分からないさ・・・」

「まぁ、それはいいわ。それで、どうするの?この『弾幕ごっこ』の誘い。受けるの?受けないの?」

「一つ聞きたい・・・。もし、弾幕ごっこで、俺が勝ったら、どうするつもりだ?弾幕ごっこで勝とうと、そちらはまだ動けるだろう」

「弾幕ごっこだろうとなんだろうと、負けは負けよ。スッパリ諦めて、アンタの支配を受け入れるしか無いわね」

「おいおい・・・ここまでしといて、仲間の皆がどう思うかとか考えないのか?」

「私に任せるって言ったのはあいつらよ。その私が決めたんだもの。文句なんて言わせないわ。それに」

「それに?」

「アンタ、『弾幕ごっこ』で私に勝てるつもりかしら?」

「そうだったな・・・俺としたことが失念していたよ・・・良いだろう・・・受けよう。そのお誘いを」

「手短にやるわ。時間制限は無し。スペカも無しで、1度でも被弾した時点で終了。いいわね?」

「あぁ、問題ない。さとり、辛いところすまないが、この戦いの見届け人をお願いできるか・・・?」

「分かりました・・・。しっかり、見届けます・・・」

「ありがとう。それじゃあ、始めようか。俺の最初で最後の、『弾幕ごっこ』をな!」


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