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東方交換録  作者: シン
26/31

選んだ道~開幕~


~さとりSide~


「長くなったな。これが俺の過去・・・俺がさとりをその力から解放したいと言った理由だ」

「ひ、ひどい・・・」

「嘘ではないことは閻魔である私が保証しましょう」

「そんなこと言われなくても分かるわよ・・・あのリアルな感覚が嘘なわけないもの・・・」

「ちっ・・・胸糞悪い話ね・・・自分が人間じゃなくて心底良かったわ・・・」

「人間側にだって正義はある。私がまだ普通の人間だった頃、魑魅魍魎や妖怪なんかが一部では信じられていた。それらは人間に害をなすモノとして、退治する者達はとても信仰を受けていた」

「いたわね、そんなやつらも。あるか無いかも分かんないような力に頼って、結局やられてるのばっかりだったけど」

「まぁその人たちは置いといて、貴方の世界ではそれが一般的な常識として広まっていた。妖怪は悪。異端は害。いなくなるに越したことはない。そんな常識がね」

「馬鹿みたいな話ね。人間なんてちっぽけな種族、妖怪が本気出したら1ヶ月もあれば滅ぶってのに」


 各々が彼の話を聞いた上での感想を述べていく・・・。私は・・・どうすればいいの・・・?私はあの人の気持ちが分かってしまう・・・。ううん・・・。あの人は、私以上の辛い目にあっている・・・。もし・・・私が彼の立場だとすれば・・・殺されていたのは家族であるこいし・・・。もしこいしが死んでしまえば・・・私は今こうしていられるのだろうか・・・。分からない・・・。


「まぁ、アンタがさとりの味方をしようとする理由は十分に分かったよ。ここでもう一つはっきりと聞いておきたい」

「俺の本当の目的・・・か?」

「分かってるなら話は早い。あんたは私達に『力を持たない者への復讐』とか『力によるこの世界の支配』なんて言い方をしていたが、結局のところ何が目的だい?あんたほどの力があれば、人間への復讐なんていくらでも出来るだろう。どうしてこんな回りくどいやり方をする?」

「そうだな。これも順を追って話そう。この世界に着き、萃香に出会い、この世界の事を聞いた。人間が住み、妖怪もおり、一部の妖怪達は人間とも共存している。そして、この世界で起きる『異変』を解決するのは『人間』が主力であり、その人間が避けられたりすることもなく、普通の生活を送っていることなんかをな」

「そうだね。うちの早苗だって、私らが異変を起こした後でも普通に人里で行動しても何も言われたりしない。それどころか、仲良く接してくれようとする人だっているくらいだ。知らないってことも無いんだけどね」

「そう。この世界の人間は平和を信じすぎている。何かが起きても大丈夫だと。だから、どうなるのかを見てやるんだ。本当に力を持つものに支配されたとき、人間がどうするのかをな」

「それが貴方にとっての復讐かしら?ずいぶんと小さいものね・・・もっと大それたものかと思っていたけど」

「それはお前達が『力を持っている者』だからそう思う。力を持たない人間からすれば、今まで自分達を守ってきてくれた者達が敗北し、より強い力を持った悪が現れる。これほどの恐怖があるか?」

「それはたしかにそうだろうねぇ。人間って弱い奴相手とか、強い後ろ盾があれば強気に行くけど、そうじゃなければ弱気一辺倒だからねぇ」

「そういうことだ。強き盾を失い、目の前に迫る自分の命を脅かす悪に出会った時、人間がどうするのか。それを見るのさ」

「でも、そのためにはまず、ここにいる全員を倒すことが条件なわけだけど、まさか勝つつもりかしら?」

「そうじゃなければこんなに堂々としていないわけだが・・・気に障ったかな?お嬢さん?」

「この人数相手によくそんな啖呵きるねぇ・・・怖くて見てらんないよ・・・」

「安心しろよ小町。お前の仕事を増やしたりはしないよ」

「この人数差で、これだけの戦力を相手に『殺すことなく勝つ』・・・そういうことかな?」

「流石神様は飲み込みが早い。つまりは、そういうことだ」


 絶対的な自信の表れ・・・。そして断固たる決意、覚悟。これだけの戦力を前に、ここまでの余裕。この人をここまで駆り立てるのはきっとあの子の・・・。


「さて、まずは改めて聞きたい。さっき見せた俺の過去・・・あれと俺の目的を聞いた今、敵対するのを止めるというやつはいるかな?もしいるのなら喜んで味方として迎え入れよう」

「確かにあんたは相当な過去を背負ってる。私だって、そんなことを経験すれば、もしかすれば同じように考えたかもしれないでしょうね」

「月から移り住んだ私達。あんな大きな事をしでかしたというのに、ここの連中は私達を受け入れてくれた。馬鹿みたいよね・・・でも、私や姫様にとって、それはとても大きなことだった・・・私達にとって、この世界はそれだけで守る価値があるのよ」

「過去に縛られ生きる・・・あんたの半分程度とはいえ、長く生きてきて、変えられるのなら変えたい過去だってあったわ。でも、それだってほんの小さなことで乗り越えることが出来た。何にも代えがたい血を分けたたった一人の妹・・・あの子とともに過去を乗り越えられたからこそ、今の私がいるのよ。そんな些細なきっかけをくれたこの場所を、好き勝手させるわけにはいかないわね」

「地上の人間なんて下等な生き物。私にとってはどうなろうと知ったこっちゃ無いわよ。なんて・・・少し前の私なら言っていたでしょうね。でも、私は今回のことで気付かされたわ。誰しもが胸に秘めている、決して傷つけてはいけない大切な物があることを。あんたは、私の友人のそれを深く傷つけた。たとえそれが、あの子やあいつらの事を思ってのことなのだとしても、私はアンタを、簡単に許せそうに無いわね」

「別にあんたの考えが間違ってるとは言わないさ。誰しもそんなことが起きれば、そんな風に考えたくもなるだろうしね。でもね、それを許容できるほど、私達だって甘くは無いんだよ」

「あんたの世界はあんたの世界。私達の世界は私達の世界だよ。そっちの世界のごたごたした気持ちを、こっちの世界にまで持ってくるなんてのはお門違いってもんさ。それに何よりね、一番大切な理由があるのさ」

「「神様ってのは、いつも人間の味方なんだよ。覚えときな」」

「そうか、それがお前達の総意なんだな・・・残念だ・・・。お前達の内の何人かは、分かってくれるかもと思っていたんだがな・・・」

「よく言うねぇ。無理だと思ってたからこそ、アタイたちのようなはぐれ者ばっかり選んでたくせにさ」

「それ以上言ったら、この場でお前とのいろんな話を言っちゃうけど・・・それでもいいか?」

「わ、悪かったよ!!だから勘弁しておくれ!!」

「冗談だ。さて、そんな小町の上司であり、この幻想卿の統括者の一人でもある閻魔・・・映姫様は、どうする?」

「まず第一に、貴方の味方をするつもりはありません。ですが、貴方を悪と断じるには、まだ早計だと考えます。私は、この戦い全てを、見届けることにしましょう」

「いいのか?もしかすれば、取り返しの付かないことになるかもしれないぞ?」

「そうなれば、責任を持って、私が貴方を断罪しましょう」

「なんとまぁ・・・恐ろしいお方だな。小町が逃げたくなるのも頷ける」

「映姫様・・・」

「さて・・・最後は・・・」


 そう言って、彼は真っ直ぐに私の目を見てきた。まるで愛しい人でも見るような。まるで最愛の家族を見るような。そんな真っ直ぐな眼差しで、私を見る。本当に、心から・・・この呪われたとも言えるような力から解放したいという意思・・・それがはっきりと伝わってくる・・・。でも・・・私はまずは、知らなければいけない・・・大切なことを・・・。


「一つ・・・教えてください・・・」

「あぁ」

「何故・・・勇儀は貴方の味方になったのですか・・・?勇儀が、負けたからなんて単純な理由で、誰かの企みに加担するような。そんな性格じゃないのは知っています。教えてください」

「それはな・・・お前達のためだ。さとり」

「っ!!」

「もう、気付いてるだろう?俺はこの話を勇儀たちにもした。そして、勇儀はかつて人間だけでなく、妖怪達からさえも疎まれ、地下の世界にまで追いやられた仲間達のことを話してくれた。ただ普通に暮らしていた。ただそれだけなのに、そんな仕打ちを受けた仲間達・・・。その気持ちが少しでも晴れるのならと、あいつは俺に協力してくれた」

「勇儀・・・っ!」

「たとえ、お前達の敵になろうと。たとえ、お前達と真っ向から戦うことになろうと。それでもお前達のためならと、俺に力を貸してくれたんだ。あの辛い思いを、悔しい思いを、ほんの少しでも晴らせるのなら・・・そう信じてな」

「そう・・・だったんですね・・・」

「勇儀のやつは、どこまでいっても、お前達地底の妖怪達との絆を、本当に大事にしていたんだ・・・。だから、そこだけは信じてやって欲しい・・・」

「馬鹿・・・ですね・・・」

「ん?」

「勇儀は・・・本当に大馬鹿です!!!なんで私達を頼ってくれなかったんですか!?なんで相談してくれなかったんですか!?なんでたった一人で・・・そこまで・・・うっ・・・」

「さとり・・・」

「でも・・・彼女は意識を失う前・・・っ、私にっ、こう・・・言いました・・・。『アタシがこっちに付いた意味なんて・・・はなっから無かったってことか』って・・・彼女は・・・勇儀はちゃんと気付いてくれた・・・そんなことしなくても・・・私達はもう、寂しくなんかないって。辛くなんかないって。だって・・・こんなにも大切な『家族』と一緒にいられるんですから!!」

「っ!!」

「貴方の気持ちは・・・痛いほど・・・苦しいほどに分かります・・・いいえ、私なんかの知る痛みと、比べ物にならないでしょう・・・。でも、私はもう、振り返るわけにはいかないんです。勇儀が教えてくれた大切なことを。これ以上傷つけないために・・・私は・・・貴方を止めます!!」

「そうか・・・勇儀・・・さとり・・・本当に・・・いい家族に出会えたんだな・・・」


 そう呟いた彼の言葉は、どこまでも優しく、本当に大切な人を祝福するような・・・そんな声でした・・・。私は、そんな彼の気持ちを裏切ってしまうことになる・・・。でも、私は前を向くと決めたから。この『瞳』で、しっかりとこの世界を見つめると決めたから。


「分かった・・・。それじゃあもう何も言わない。俺は、俺自身のために、この計画を全うしよう」

「そうさせないために」

「私達がいるんだよ!」

「貴方の力は未知数だもの、本気でいったっていいんでしょう?」

「輝夜、肩やられてるからって言い訳なんかするなよ?」

「アンタこそ、次やられたら助けてやらないわよ」

「姫様!私達も援護します!」

「傷薬も少しならあるよ!」

「ふふっ、まさか貴女からあんな殊勝な言葉を聴けるなんてね・・・終わったら妹様に教えてあげようかしら」

「パチェ。そうしたら絶交よ」

「冗談よ。さぁ、そろそろ構えましょうかしら?さっきの二の舞にならないようにね」

「大丈夫よ。今度は・・・親友の私が守ってあげるわ」

「本当に・・・いいのね?」

「ありがとう・・・天子さん・・・でも、私は決めたから。もう。大丈夫です」

「そう・・・それならいいわ。さぁ!行くわよ!!」

「はい!!」

「お~っと、意気込んでるところ悪いが、少しばかり待ってくれ」


 いざ戦いが始まるという直前、彼から突然待ったが入る・・・。この期に及んでまだ何かあるのでしょうか・・・?


「不公平だとは思わないか?」

「さっきまで私達二人を悠々と捌いてたやつが何を言うかと思えば・・・」

「あぁ、言葉が足りなかったな。そっちは能力をバラバラに入れ替えられ、こっちの能力も未知数。そんな状態で戦うなんて、不公平じゃないかと聞いているんだ」

「それは、どういう意味かな?」

「計画も明かした今、自分にとって有利な状況で勝ったところで、自分に納得が出来ない。そういうことさ」

「この人数相手に『自分の能力をばらし、全員の能力を戻して勝つ』そう聞こえるわね」

「物分りのいいお嬢さんだな。つまり、そういうことだ」

「ずいぶんと舐められたものね。でも、そうしてくれると助かるのは事実かしら?」

「じゃあ教えよう、俺の能力は・・・」

「『混ぜる程度の能力』・・・でしょ?」

「これはこれは博霊の巫女・・・遅ればせな登場ながら、よく分かったものだな」

「アンタの昔話は幽々子から聞いたわ。あの子供が持っていた力、それがアンタの能力そのものね」


 彼が能力を明かそうとしたその時、霊夢さんがパルスィとお燐とともに現れ、ずばり彼の能力を言い当てた・・・でも、混ぜる程度の能力・・・そう考えればいろいろと納得が行くのかもしれませんね。


「そう、今彼女が言った通り、俺の能力はこちらの世界のように言えば『混ぜる程度の能力』だ。混ぜると言ってもいろいろあるが、混ぜるというのに該当すれば、大体の事は出来る。モノとモノを混ぜ合わせる『ミックス』や、モノとモノをごちゃ混ぜにする『シャッフル』と、使い分けも出来るしな」

「私達の能力を入れ替えたのは後者ね。少しずつ広がっていったのは、まだ能力に慣れてなかったからかしら?」

「そういうことだな」

「それなら私達が戦ってる最中にさとりの能力を奪ったのはどういう仕組みなわけよ?」

「あれは単純なトリックみたいなもんさ。さとりにあえて俺が直前に脳内に声をかけ、あたかも奪うように言う。その直後に、さとりの中にお前達の『今は自分の能力を使えない』という認識を混ぜた。そして、彼女は能力が使えなくなったと錯覚し、俺はそのまま能力を使用出来た。そういうわけだ」

「私達と戦ってる最中にころころ能力を変えてたのも・・・」

「あぁ、一度自分の中に混ぜた能力はいつでも発動出来る。なんせ完全に自分の力の一部にするわけだからな」

「まさに化け物みたいな能力だね・・・幻想卿全員と同時に戦うみたいなもんじゃないか」

「そういうことだ。な?知らないと不公平だっただろ?」


 とんでもない能力・・・。それに、彼の過去の話や、現に神二人と互角に渡り合えてることからも分かるとおり、身体能力も相当なものでしょう・・・。どうすれば・・・。


「さて、俺の能力の種明かしはこんなもんでいいだろう。次に、お前達皆の能力を元に戻そう」

「これだけ囲まれてながらその余裕・・・妬ましいわね・・・」

「アタイは能力が戻っても戦闘じゃあんまり役立たないんだがねぇ・・・今持ってるのも役立たないけど」

「悪いな、もう戻しちまったよ」

「いや、いいんだけどもねぇ・・・」

「さて、そういえばまだ君の意見を聞いてなかったな・・・この中での唯一の人間である、君の意見を」


 そう言って霊夢さんを見やる。たしかに、彼女からすれば、世界は違えど同じ人間のしたことであり、自分が彼女と同じ『特殊な力を持った人間』でもある。私もそれは気にはなっている・・・。しかし、数秒と待たずしてその口は開かれた。


「馬鹿ねぇ。同じ人間が何人もいるわけじゃないのよ。私は私のやりたいように生きる。それを邪魔するってんなら、妖怪だろうが人間だろうがぶっ飛ばすわ。今私はこの異変を解決したいと思ってる。そして、アンタはその異変を起こしたやつ。分かったかしら?」

「っくく・・・あっはははははは!!!!最高だ!!!実に分かりやすいじゃないか!!君とはこんな形じゃなく、別の形で知り合ってれば、仲良くなれたかもな」

「私はアンタみたいな回りくどいやつは好きじゃないわ」

「それは残念。さて、他の役者さんたちはずいぶんとお待たせしてしまったかな?」

「いいのよ。主役ってのはお色直しに時間が掛かるものだからね。開演時刻には間に合ってるわ」

「それは何より。さぁ、それじゃあ始めようか。どうぞお手柔らかに・・・レディ達?」


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