覚悟・信頼・勇気~足りない物、大切な物、誇るべき物~
~霊夢Side~
「あぁもう!!なんでそんな服着ながらそんなに早いんだい!!」
「あらあら。子猫ちゃんの爪に当たったら一着しかないこの服がダメになっちゃうんだもの。怖いわ~」
「いやいや、その服まだ全く同じのが3着はタンスにありますから・・・」
「あら~?そうだったかしら?」
「それはそれでどうなのよ・・・」
「お燐!文句言ってないでもっと攻撃しなさい!!あんたらも話してる暇があるなら弾幕撒きなさい!!」
「アタイはこれでも必死だよ!あんた達の弾幕も避けながらなんだからね!」
「もう~霊夢~。あんまりやったら子猫ちゃんがかわいそうよ~?」
「うっさいわね!!あんたがさっさと負けて通してくれたらそれもすぐに終わるのよ!!」
「それはだ~め」
お燐が接近戦を始めてから数分。こちらも弾幕の手を緩めてはいないのに、以前として幽々子に決定打どころかろくな攻撃が与えられていない。幽々子からの弾幕の反撃こそほとんど無いものの、やっぱりこのままじゃジリ貧だし・・・。ほんと、こいつとはやりたく無いわね・・・。
「それに!!さっきからアタイの爪受けたり弾幕を弾いたりしてるその扇子はなんなんだい!?」
「これ~?こないだ人里で見つけたのよ~。この模様がすごく綺麗でね~」
「そんなとんでもないものを売ってる人里ってなんなのよ・・・」
「騙されないでください。あれは昔紫様からいただいた特注品ですから」
「もぉ~妖夢ったらばらしちゃうなんて酷いんだから~」
「だ~か~ら~~・・・世間話みたいなことばかりしてんじゃ無いわよ!!」
「ちょ!!その量の弾幕をいきなり飛ばさないでおくれよ!!」
「そんなもん忠告してから出したら避けられるでしょうが!!気合で避けなさい!!というか合間を縫って攻撃しなさい!!」
「無茶言うんじゃないよ!!」
ったく・・・いつまでもいつまでも長引かせようとばっかり・・・!こいつらもまんまとそれに乗っかって話してるし・・・。こっちは早く終わらせたいってのに・・・!
「もう・・・そこまで言うなら私もちゃんとしてあげるわよ~」
「最初っからそうしなさいっての・・・さぁ!あんたらもしっかり構えなさい!来るわよ!!」
「言われなくても構えてるわよ!」
「まずは・・・華霊『スワローテイルバタフライ』」
こっちが痺れを切らした頃、ようやく幽々子からの攻撃が来た。蝶を模した華やかな弾幕。しかしその動きに見とれていればすぐに囲まれる。こちらも弾幕を放ち相殺し、可能なものは避けて応戦する。この調子なら・・・
「次ね、反魂蝶『-伍分咲-』」
「な!?まだこっちは終わってないのに!!」
「ちっ!こりゃ避けるのも一苦労ね!」
「こんなんで接近戦なんて無理だよ!!」
一つ目のスペカがまだ途中だというのに2枚目のスペカの宣言。不可能な事では無いけど、普段の弾幕ごっこのルールでは禁止にされている。もちろん、これは戦いだからそんなの関係ないんだけど!
「やってくれるじゃないの・・・!」
「ありがとう。それじゃあ最後・・・亡郷『忘我卿-自尽-』」
「3枚目って・・・!!こんなのどうやって避けろってのよ!!」
「文句言う暇があったら動きなさい!!霊符『夢想封印 散』」
「アタイが一番危ないんだよバカーーーーー!!!!!」
悲痛なお燐の叫びはともかく、まさか3枚目まで使ってくるなんて・・・!こっちもスペカで少しは消したけど、それでも避けるのに徹さないとヤバイわね・・・さっきまで全くやる気無かったくせに急に本気出すんじゃないわよ!!
「あらあら、すごいわね~」
「バカにして・・・!」
「パルスィ!左!」
「くっ!避けきれない!」
「お燐!アンタは右後ろよ!」
「分かってるよ!アタイはこんなもんじゃ・・・」
「じゃあこういうのはどうかしら?」
「ちょ!今接近戦はずるいぃっ!!」
「お燐!!」
避けきれずにパルスィが数発受け、お燐はなんとか避けるも幽々子からの直接攻撃で私たちのそばまで吹き飛ばされる。こちらがかなり消耗したのを見計らったかのように、弾幕は止んだ。分かってはいたけど・・・やっぱりこいつらじゃ厳しいわね・・・。
「あんた達、まだ戦える?」
「無理って言って休ませてもらえるなら、無理ね」
「まだまだいける・・・とは言いがたいかねぇ・・・」
「それだけ言えりゃ十分ね。妖夢。アンタは・・・」
「なんで・・・ですか・・・?」
「アンタ、全部避けきった・・・ってわけじゃなさそうね」
「なんでですか幽々子様!!何で私に弾幕を向けなかったんですか!!!」
「弾幕を向けられなかった・・・?それってどういう・・・」
「だって貴女・・・本気で私を倒そうとしてないんですもの」
「そ、それは!!」
「おっと、今のは聞き捨てならないわね」
地底の二人は結構ダメージを受けたものの、まだ戦えるくらいだろう。問題は妖夢が全く攻撃をされていないということ。幽々子が言うには、倒す気が無いってことみたいだけど・・・ここはあいつらに任せましょうかね。
「わ、私はそんなこと・・・!本気で!!」
「あれが本気・・・もしそうなら、貴女はもううちには戻って来なくていいわ」
「な!?」
「そうね。むしろ今すぐこの場から消えてちょうだい」
「パルスィ・・・さん・・・?」
「私たちは本気でこの異変を止めに来てる。そんな中、自分より上の相手にすら本気を出せないような味方、必要無いのよ」
「で、でも・・・幽々子様は・・・」
「私は勇儀を殺すつもりで来てた」
「っ!!」
「多分他の子たちは違うでしょうね。止めるために、真意を聞き出すために、また一緒に馬鹿やるためにって。でも、私は違う」
「パルスィ・・・」
「あいつは、地底の平穏を・・・この世界の平穏を乱そうとする奴に加担した。私たち地底の妖怪の絆を裏切った・・・これがどれほどの事か、アンタに分かるかしら?」
地底の妖怪達だって、元々は地上に住んでいた。でも、その類稀なる力を畏れられ、人間はおろか、同じ妖怪たちからも疎まれた。一人、また一人とその妖怪たちは住処を追われ、気付けば地下は一つの集落のようになっていた。畏れられ、疎まれ、追いやられた者たち・・・その絆は固く、時には良き友人として、時には良きライバルとして、そして、時には家族として・・・地底の妖怪の絆は誰よりも深い。この間の宴会でさとりがこんな風に言ってたわね・・・。その一人がどこの誰とも分からないやつにほだされて、挙句敵になるだなんて、そりゃこのくらい怒るわよね。
「アンタにとっての主従の絆。それがどれだけ大事なものか、私たちには計れないでしょうね。でも・・・アンタはさっきこう言ったはずよ。『今の貴女の味方をしても、貴女はきっと喜ばない」と、『貴女を倒し、あの男の目的を阻止する』と・・・あの言葉は全部嘘だったのかしら?」
「嘘なんかじゃ!!!・・・嘘・・・なんかじゃ・・・」
「嘘の真剣な言葉、嘘の決意、嘘の本気・・・アンタの言う主従関係は・・・アンタの言う絆は、その程度なのかし・・・」
「違う!!!!」
核心を突いた一言を遮る妖夢の大声。さぁ、ここからね・・・
「違わないわね。別に私のようにしろだなんて言わないわ。でもね、止めると思ったのなら・・・それを口にしたのなら・・・何故迷うのかしら?」
「そ、それは・・・」
「アンタに足りてないものはたくさんあるけど、その中でも大きく足りてないのが三つ・・・『覚悟』と『信頼』、そして『勇気』」
「覚悟・・・信頼・・・ゆう・・・き・・・」
「一つ目の覚悟・・・さっきも言ったとおり、アンタの言葉、アンタの決意は、今のままじゃ全部嘘になる。もちろん、そんな薄っぺらな物を本気だと言うのなら、アイツとの絆も、全て嘘になる。だから覚悟をするんだ。どんな目にあってでもアイツを止めると。たとえ傷つけることになっても倒すと。たとえ何がおきても逃げないと。完全な覚悟をするんだ」
「・・・はい・・・」
「二つ目の信頼・・・これは私たちをって意味じゃない。もちろん、私たちだって信頼はしてもらいたいけど、アンタは何よりも、アンタの主の事を信頼するんだ」
「幽々子様を・・・?」
「私たちがここに合流する前、最初は勇儀と向き合っていた。でも、さとりは私たちに、別の場所に行けって言ったんだよ。あの勇儀を前にしてね。もちろん、相応の何かはあったんだろうけど、最初は信じられなかった。あいつは優しいからね・・・どこかで手を抜いたり、わざと負けたりするんじゃないかって・・・それ以前に自分を犠牲にしてなんて考えてるんじゃないかってね。でもね、あいつの目を見て、任せられると思ったんだ。殺すようなつもりで来てる私を、そんな必要はないんだと諭すような目。でも、その奥で絶対に止めるという固い意志を灯した目・・・だから私は、あいつを信頼した」
「アタイだってそうだよ。本当にさとり様が心配で心配で・・・でも、何故か不思議と、大丈夫だって思えちゃったんだ・・・でなきゃ今頃こっちにいないさね」
「誰かを信頼するってのは、そんなに簡単なことじゃない・・・たとえそれが、どんなに親しい相手だったとしてもだ。でもね、信頼することが出来れば、それは自分の力になるのよ。たとえそれが敵でもね。だからアンタは、まずアンタの主を信頼しなさい。自分が覚悟を決め、本当に本気でぶつかっても、決して取り返しのつかないようなことにはならないと。自分が本気でぶつかれば、きっと目を覚ましてくれると。自分が信じたその人と、必ずまたいつもどおりに戻れると、相手を信頼しなさい」
「はい・・・!」
覚悟に信頼・・・確かにあいつには足りてないわね。攻撃の手も最初っから緩いし、それで止められるわけないでしょうに。それに、もし本気でやって、もしもがあったら、なんて、あんた以外の3人が本気でやってるのをヘラヘラ笑いながらいなしてる奴があんた一人の本気でもしもがあるわけないでしょ。ったく・・・気付くのが遅すぎんのよね。
「そして、最後の勇気・・・さっきの二つにしてもそうだけど、覚悟を決めるのにも勇気がいるし、信頼するのだって勇気がいるわ。戦うことにも、本気の言葉を話すのにも。とても勇気がいる・・・でもね、一番勇気が必要なのは、そんなところじゃない。一番勇気が必要なのは、自分を認める時よ」
「自分を・・・認める?」
「アンタ、たしか「剣術を扱う程度の能力」だったわね?その剣術の鍛錬はしてたのかしら?」
「もちろん、毎日欠かさずに」
「それなら、今こそ勇気を振り絞って、自分を認めてあげなさい。今までの鍛錬は、決して無駄なんかじゃない。たとえ能力がなくなったって、その鍛錬をしてた自分はいなくなったりしない。だからきっと大丈夫。弱い部分も、強い部分も、過去も今も、全てが自分なんだって、認めてあげなさい。もしも一人じゃ出来ないってんなら、私が足りない勇気を分けてあげる。だから・・・今のアンタの全てを・・・今までのアンタの全てを、認めてあげなさい」
「っっ!!!はいっ!!!!」
「いや~、熱血教官パルスィ先生のいい説教だったねぇ」
「うるさい!!足手まといは邪魔なだけだもの!!」
「照れない照れない。いや~今のは勇儀や地底の皆にも聞かせてあげなきゃね~」
「言ったら本当に殺すわよ!!!」
「冗談だってば。さて、そっちでサボってた霊夢も、そろそろいいかい?」
「あんたらの話が長くて、もうほっといて行こうかと思ってたところよ」
「そしたらアタイたちが死んじゃうじゃないか!!勘弁しておくれよ!!」
「だ~からちゃんと待ってたでしょうが」
まぁ、ニコニコ笑顔で見てたあいつがすんなり通してくれたら、だったけどね。ま、途中でちゃちゃ入れなかったりしてくれた分こっちとしては都合も悪くないんだけど、ずいぶんと手間取っちゃったしね。そろそろ行かないとほんとにやばいかもだし。
「さてと、じゃあそろそろ再開しましょうか?妖夢、あんたももういけるわね?」
「それなんですけど霊夢さん。お願いがあります」
「何よ?」
「前衛は私一人でやります。皆さんは、バックアップをお願いしたいんです」
「その言葉の意味、分かってて言ってるのよね?」
「幽々子様に真っ向から挑み、全方位からの敵味方全ての弾幕を相手にする。そう言ってます」
「パルスィ、あんたのせいでこんな無茶言うようになっちゃったけど、大丈夫だと思うかしら?」
「丸投げしといてよく言うわよ。ま、さっきまでなら鼻で笑ってたけど、今だったら・・・そうね、お燐よりは信頼してあげるわ」
「アタイもう帰っていいかい?」
「馬鹿言ってないで、さっさと準備するわよ。向こうも準備できたみたいだしね」
「幽々子様、先ほどまでの私は、確かに貴女の従者たる資格は無かったようです。他人にそれを気付かされるようでは、まだまだだと反省しています」
「そうね。さっきまでの貴女じゃ、私は本当に戻って来なくていいと思っていたわ。でも、今は違うのよね?」
「はい。今度こそ迷いません。たとえ貴女を傷つけることになろうとも、貴女を止め、あの男の目的を阻止してみせます」
「いい目ね。昔に一度、同じ目を見たわ。あの時にそっくり・・・」
「それって・・・」
「ふふっ、今度話してあげるわ。この異変を止められたら、だけど」
「では・・・白玉楼が主、西行寺幽々子の従者、魂魄妖夢、参ります!!!」




