その道は正しきものか~従者としての選択~
~霊夢Side~
「妖夢、アンタどうやって・・・」
「にとりさんに教えていただきました。博霊神社の方を見てみたら、幽々子様がいたのが見えたと」
「あんな距離からどうやって・・・あ、そっか、今は椛の能力が入ってるんだったわね」
「なるほどね~。それで、もう一度聞くわ、妖夢。貴女はどっちの味方なのかしら?」
あのタイミングで来てくれたのはありがたかったけど、コイツは元より幽々子の従者・・・。向こう側に付いたって何も不思議じゃない・・・場合によってはかなり最悪の展開もあり得るわね・・・。
「幽々子様・・・私はいつも貴女の味方をしていました。それが周りに被害が出ることだとしても、貴女のためにと、尽くしてきました。それは今も昔も変わりません・・・」
「くっ・・・!やっぱりそっち側ってわけね!!」
「あら、霊夢ったら、話は最後まで聞かなきゃだめよ~?」
「何を・・・」
「ですが・・・今ここで、貴女の味方をすることは、貴女のためになりません。何を思ってそちら側に付いているのか、私には分かりませんが、これだけは分かります・・・。今の貴女の味方をしても、貴女は何も喜ばない。善悪も分からない従者など必要ないと、私を切り捨てるでしょう」
「妖夢・・・」
「あの男の目的、事情、考え、私には何も分かりません。ただ一つ分かることは、あの男の行動は、今の幻想卿にとっては悪だということです。だから幽々子様、お許しください。今初めて、私は貴女に背きます。貴女を倒し、あの男の目的を阻止します」
「そう・・・それだけの覚悟を持ってきたのね・・・。良かったわ、それでこそ、私の従者にふさわしいもの」
「幽々子様・・・!」
「妖夢、貴女を信じていいのね」
「はい!!私には迷いはありません!!迷いは剣を鈍らせます。私の全てを持って、幽々子様を止めます!」
「元気な子じゃないか。これで半分死んでるだなんて思えないね」
「チッ・・・信頼しあった主従関係、妬ましいわね・・・」
どうやら、今回は味方をしてくれるようね・・・少し意外だけど、それならこっちもかなりやりやすくなる。でも、一つだけ・・・すごく大事なことをまだ確認してない・・・。
「妖夢・・・」
「なんですか?霊夢さん」
「貴女・・・能力は大丈夫なの?」
「え?」
「「え?」」
「はぁ・・・やっぱりか・・・」
「あらあら、妖夢ったら、確認もせずに来ちゃったのね~」
「ど、どういうことですか?」
「とりあえず、いつもみたいに剣を振ってみなさい」
「は、はい・・・えい!!・・・あ、あれ・・・?」
妖夢は言われたとおり剣を振るけど、明らかにその動きにキレが無い・・・。これはやっぱり・・・ダメみたいね・・・。
「よし、分かったわ。妖夢、貴女は後ろで弾幕を撒きなさい」
「ちょ、ちょ、どういうことですか!?なんかいつもの感覚と全然違うんですけど!!」
「端的に言うわ、今アンタは『剣術を扱う程度の能力』を失ってるわ。だからいつものように剣術は使えない」
「な、なんでですか!?」
「あの男の能力よ、それが今回の異変なんだから・・・というか、アンタんとこに行った時言ったでしょ・・・?」
「あ、あの時は・・・幽々子様がいなくて心配でそれどころじゃなくてですね・・・」
「もう~妖夢ったら~。おっちょこちょいなところはほんと昔から変わらないんだから~」
「なんか・・・最初とずいぶんと印象が変わったねぇ・・・」
「ドジっ子属性持ち・・・妬ましいわ・・・」
これで戦力差はあんまり変わらないのが分かった。要は弾幕の手数は増えたってくらいね・・・。ほんともう・・・役に立つんだか立たないんだか・・・。
「ほら、分かったらとっとと下がりなさい。刀が使えない剣士なんているだけ邪魔よ」
「う・・・申し訳ないです・・・」
「まったく・・・さて、今ので結構時間食っちゃったし、そろそろ始めようかしら?」
「え~?私はもっとお話してたいわ~」
「この人はほんとやりにくい人だねぇ・・・」
「その余裕、ほんと妬ましいわね・・・」
「お生憎と、そっちの都合に付き合ってあげるほど・・・お人よしでも無いのよ!!」
「あらあら~すごい弾幕の数ね~避けられるかしら~?」
いつまでもコイツに付き合ってたんじゃ埒が明かない。一気に攻めるべく、弾幕を一気に飛ばす。相変わらず余裕の表情でひらひらとかわしていく。ほんとめんどくさいわねコイツは!
「お燐!パルスィ!妖夢!アンタ達もボサッとしてないでさっさと弾幕撃ちなさい!!さっさとあの男ぶっ飛ばさないとなんだから!」
「「「は、はい!!!」」」
「もう~霊夢~?そんなに怒ると疲れちゃうわよ~?」
「あ・ん・た・が~・・・疲れさせてるんでしょうが~~!!!」
「やぁん、霊夢ったらこわ~い」
他3人にも言って一気に弾幕を増やす。合計4人分の弾幕だってのに、こいつはまだ減らず口を叩きながら避けている。時には身体を捻って、時には己の弾幕で相殺し、時には手に持つ扇子で軌道を逸らして・・・このままじゃ本当に埒が明かないわね・・・。
「パルスィ!」
「分かってるわよ!嫉妬『緑色の目をした目に見えない怪物』!」
「綺麗な弾幕ね~」
「お燐!」
「あいよ!贖罪『旧地獄の針山』!」
「あらあら・・・こっちは痛そうねぇ・・・」
「妖夢も!」
「はい!符の壱『二重の苦輪』!」
「逃げ場がなくなっちゃいそうよ~」
「最後!霊符『夢想封印 集』!」
「これは完全に避けられないわねぇ~」
普通ならあり得ない、4人分の同時スペカ発動。大体のやつなら二人分すらきついけど、こいつだったらこれでも足りないかもしれないわね・・・。
「もう・・・そんな悪い子達はお仕置きよ?桜符『完全なる墨染の桜-開花-』」
「ちょ!!いきなりそんなレベルのを使うわけ!?」
「4人がかりでスペカ使っててそのセリフを言うのかしら?」
「これじゃアタイたちが悪者だねぇ」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。こんな大勢に対して一人で対抗できる奴が正義の味方なわけないでしょ」
「流石幽々子様ですね・・・」
こちらの4人がかりのスペカの弾幕は、幽々子の一枚のスペカで半数近くが相殺され、残りはまた先ほどのように避けきって見せた・・・ほんと・・・とんでもない奴ね、コイツも・・・。
「うふふ、避けきっちゃったわ~。さて、次はどうするのかしら?」
「完全に遊んでるわね・・・」
「勝ち目無いんじゃないのかい?これ」
「こっちがさっさと倒して行かないとダメなのに、向こうは避けるのに徹して時間稼ぎしてるみたいだし・・・こっちが圧倒的に不利ね・・・まったく、妬ましいわ・・・」
「私が接近戦を出来れば・・・」
「そうか、その手があったか」
「え?」
「お燐、アンタ動きに自信あるんだったわね」
「すごく嫌な予感がするからさっきの言葉を取り消したいねぇ」
「私に弾幕食らってから嫌々行くか、私の弾幕を食らう前にきびきび行くか、選んでいいわよ?」
「こんなとこ来るんじゃ無かったよ!!!」
「妖夢」
「な、なんですか・・・?」
「行けると思ったらアンタも行きなさい」
「で、でも・・・」
「行けると思ったらでいいのよ。パルスィ、また弾幕で援護よ、お燐に当てても私が許すわ」
「お燐、悪く思わないでね、これも勝つためよ」
「今はアンタがその安全な位置にいるのが妬ましいねぇ!!」
「作戦会議は終わったのかしら~?」
「えぇ、待たせたわね」
正直、お燐一人に接近戦なんて厳しいとは思う。でも、少しでも勝算を見出すには、幽々子の隙を作り出さないといけない。弾幕だけじゃそれは厳しい。悪いけど、頼んだわよ・・・
「さぁ、第2ラウンドよ!」
「行くのはアタイだけどね!」
「文句は終わった後にしっかり聞いてあげるわよ」
「うふふ、さぁ、どこからでもいらっしゃい?」
「私の・・・剣術・・・」