逆境、困惑、嘲笑~吸血鬼の誇り、主の誇り
~レミリアSide~
「さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら?」
「卑怯な手を使っておいて、よくもそんな言葉が使えたものね・・・」
「あら?貴女のことだからてっきり『戦いに卑怯なんて無いわ』なんて言うかと思ったのだけど?」
「普段ならね。ここまで露骨だと流石に言うわよ」
「ずいぶんと調子がいいのね?身勝手もここまで来れば長所にでもなりそうだわ」
「私にとっては私の全てが長所よ。今不利な状況を作っている『吸血鬼』という種族だってね」
「お姉様・・・」
「まだまだ元気は有り余ってるみたいね。それでこそ、いたぶり甲斐があるわ」
「やれるもんならやってみなさいな」
とは言ったものの、この状況はかなりまずい・・・。幸いなことに、こいつの花粉による弱体化は『攻撃に使う力だけ』を抑えるものらしく、他の飛ぶ能力や移動での脚力、弾幕は普通に使える。ただ、その弾幕の威力も『力』とみなされるようで、当たっても致命傷どころかかすり傷さえ与えられない。グングニルやレーヴァテインは、普段とはあまりにも振りが遅くなり、コイツ相手に当てられるものじゃない。圧倒的にこちらが不利。フランもずっと困惑してる・・・。どうすれば・・・。
「考えてるところ悪いけど、あんまりボーっとしてると、すぐに終わっちゃうわよ?」
「ふん!アンタなんて考え事しながらでも勝てるって余裕の現れよ!」
「そう、もうちょっときついお灸が必要なようね?」
「来るわよフラン!シャキっとしなさい!」
「う、うん」
幽香が傘を横一線に振ると、そこからいくつもの弾幕が撃ち出される。一つひとつのサイズは拳程度だけど、数が多くて避けずらい・・・そして、これの狙いは・・・。
「やっぱり・・・!そう来ると思ってたわよ!!」
「よく気付いたわね、でも・・・ガードしてもね!!」
「ぐっ・・・!」
「お姉様!!」
「貴女にはこれよ」
避けきった先に待っていた幽香。その傘の振り下ろしを両腕で受けるも、そのまま一気に地面へと叩き落される。フランもこちらに来ようとしてたけど、幽香の弾幕で来れない。地面に激突した時の砂埃で前が見えないけど、あいつなら確実に追撃に来る・・・そこを・・・
「っ!?」
「あら?ビックリしたかしら?隙だらけよ!」
「ガッ!!?」
砂埃が晴れかけたその瞬間、目の前に突然開かれた傘が現れた。突然のことに驚き一瞬硬直してしまい、回し蹴りの直撃を食らってしまった・・・コイツ・・・!!
「ずいぶんとトリッキーな戦いをするものね」
「貴女とは生きてる年季が違うもの。これに驚いてるようじゃ、まだまだね」
「お姉様!?大丈夫!?」
「大丈夫よ、フラン」
「あらあら、妹にまで心配させちゃうなんて、悪いお姉さんね?」
「うう~!!能力が使えたらお姉さんだってすぐに壊せるのに~!!!」
「それが出来ないように、能力をバラバラにしてるのよ」
能力・・・もしかしたら・・・!
「あら?今度は貴女から向かってくるのかしら?」
「えぇ、そろそろ守って逃げて、そんな戦いには飽きたのよ」
「で、でもお姉様・・・」
「フラン、弾幕で援護なさい。」
「お姉様・・・分かった!!」
「相談は終わったかしら?さぁ、どこからでもいらっしゃい?」
「もちろん、そうさせてもらうわよ!!」
「行くよ!!禁弾『スターボウブレイク』!!」
「貴女の羽みたいに綺麗な弾幕ね。でも、威力は落ちてるわね」
「や、やっぱりスペカもダメなんだ・・・」
そこまでは予想通り。効かない攻撃を避けようともしない・・・。その隙に一気に近づき、正拳の構えを取る。フランにスペカを撃たせたのは・・・
「はぁぁぁ!!」
「ふふっ・・・威勢だけは戻ったみたいだけど・・・そんな少女のか細い力で何を・・・ぐっ!?」
この一撃のためよ!!幽香の腹に目掛けて思い切り正拳を打ち込む。効かないとたかを括っていたのもあり、想定外のダメージに幽香が一気に飛びのく。
「何故・・・!?まだ花粉の効力は無くなってないはずよ!!」
「えぇ・・・吸血鬼の力は封じられたままよ・・・。でもね、私は紅魔館の主、レミリア・スカーレットなのよ」
「何を今さら・・・まさか!」
「主たるものが、従者の力を把握できていないわけが無いでしょう?何せこの力は、私が唯一認めて門番とした子の力だもの。『吸血鬼の力』では無いわ」
やっぱり、今私の中にある『気を使う程度の能力』。これは元々美鈴の能力だから、吸血鬼の力と認識されないみたいね・・・。それが分かれば・・・。
「フラン!!貴女の中には私の親友の力が入ってるはずよ!」
「パチュリーの能力・・・」
「あの子は私が唯一親友だと認めた子よ。その力を持って、負けることは許さないわ。何より・・・」
「?」
「貴女は、この紅魔館の主である私の妹、フランドール・スカーレットよ。いつまでそうしてウジウジしてるのかしら?」
「お姉様・・・!」
「チッ!やってくれたわね・・・!まさかそんな方法があったなんて予想外だったわ・・・」
「あら?さっきまでの余裕が嘘みたいね?まぁ、気を込めた拳はかなり効くものね、分からないでも無いわ」
「えぇ、かなり効いたわ・・・でも、もう食らわないわ。この一回で倒せなかった時点で、貴女の負けよ」
「さぁ・・・それはどうかしら?」
これで状況は3:7程度には持っていけた。まだこちらが不利なことには変わらないけど、勝ちの道が見えた・・・。
「お姉様、もう大丈夫だよ」
「そう、流石私の妹ね」
「ずいぶんいい妹を持ったわね」
「あら?さっき言わなかったかしら?私にとっては私の全てが長所なのよ。この『吸血鬼』という生まれも、フランという妹がいることも、全てね」
「お姉様・・・私もお姉様が私のお姉様でよかった!」
「泣かせるじゃない。いいわ、さっきまでみたいなお遊びはここまで、ここからは、本気で潰すわ」
「これもさっき言ったわね・・・」
「「やれるもんならやってみなさい!!」」




