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東方交換録  作者: シン
10/31

対峙する者たち~二つの白、二人の神~

~霊夢Side~


「霊符『夢想封印』!」

「あら怖い、『反魂蝶-参分咲』」


 こちらの放ったスペカによる弾幕が、幽々子の出したスペカによって全て相殺される。


「チッ!どきなさいよ!アンタにかまってる暇は無いのよ!」

「あら~?私は霊夢と遊んでて楽しいわよ~?」

「ああもう!!なんでアンタが相手なのよ!!めんどくさいわね!!」

「彼がどうしてもって言うからよ~。彼、そ~んなに萃香ちゃんが大事なのかしらね~?」


 ほんっとにもう!!!こっちは一気にいろいろあって若干混乱してるのに、さらにイライラさせて来るんだから!!ほんとコイツとはやりたくないのよ!!


「何よりも!!なんでアンタはそっち側に付いてんのよ!!アンタ力でどうのこうのとか、暇つぶしだとかと絶対縁が無いじゃないのよ!!」

「もう~そんな怒りながら聞きながら弾幕飛ばさないで~。怖いし避けなくちゃだから答えられないわ~」

「そう言いながらやり返してきてるのはどっちよ!!」

「だって~。そうしないと負けちゃうもの~」


 コイツと話してるとほんとにもう・・・あぁイライラする・・・。って、あいつら地底の・・・


「霊夢、手伝いに来たわよ」

「アタイたちも加勢するよ!」

「いいところに来たわね!」

「どうやって攻めるの?あいつ結構手ごわいわね」

「アタイは接近戦も出来るよ!」

「アンタ達!!そいつの相手お願いね!」

「「はいーー!!???」」

「あらあら?どうしたの?突然」

「アンタなんかとやってたら日が暮れるのよ!!だったらアンタを他の奴に任せて、私はさっさと黒幕を叩くのよ!」

「う~ん・・・大丈夫だとは思うけど、一応相手しろって言われたし、止めてくれると嬉しいんだけど?」

「嫌よ!もうさっさと何もかも終わらせたいの!!」

「そう・・・残念ね・・・」

「ちょ、ちょっと!!いきなりどういうことよ!!」

「簡単よ!どうせ勝てないだろうから、時間稼ぎだけしてなさい!!その間に私が終わらせるから!」

「無茶言うんじゃないよ!!この人強いって言っただろ!?」


 あぁもうどいつもこいつも・・・


「私の邪魔をするんじゃないわよ!!」

「いいわよ、言っても」

「あら、急に素直になったわね。じゃ、遠慮なく・・・」

「その代わり、私はこの二人に能力を使うわ」

「なっ!!?」


 それって・・・


「どうしたのよ・・・こいつの能力ってそんなにやばいの・・・?」

「橋姫のお嬢さん、私の能力が気になるかしら?」

「そ、そりゃあもちろん・・・でも、敵に教えるほどお人よしでも無いんでしょ?」

「いいえ、教えてあげるわよ。だって、じゃないとあまりにもかわいそうだものね」

「かわいそう?いったいどういうことだい?」

「火車の子猫ちゃん、あの飛んでる鳥をよく見てなさい。大丈夫、不意打ちなんかはしないって約束するわ」

「う、うん・・・」

「ごめんなさいね・・・」


 直後、空を元気に飛んでいた鳥は、突然動かなくなり、そのまま地に落ちた・・・そして、二度と動き出さない・・・


「な・・・何をしたのよ・・・」

「あの子の命を止めたのよ」

「それって・・・どういう・・・」

「コイツの能力はね、『死を操る程度の能力』」

「「!!??」」

「そう、生きとし生ける全ての生を、私の意志で終わらせられる。それが私の能力よ」

「そ、そんなとんでもない力・・・」

「で、でも、そんなに強い力!制約や反動があるはずだよ!!」

「制約は、相手の姿を見ていること。反動は、何も無いわ」

「そんなことあるわけが!!」

「正確には、もう無い・・・が正しいわね」

「それって、どういうことよ・・・」

「本来、この能力の反動は、一度能力を使うごとに、寿命が1年縮むというものだったの」

「でも、今のコイツは亡霊。死んでるやつに寿命なんてあるわけないもの」

「そ、そんな・・・じゃ、じゃあ・・・勝つ方法なんて・・・」

「霊夢、もう一度言うわ。私は貴女が行くのを止めはしない。その代わり、残されたこの二人に私の能力を使う」


 こんなの・・・選びようが無いじゃない・・・!!


「何が・・・」

「霊夢・・・?」

「何がアンタをそこまでさせるのよ!!アイツは今異変を起こしてる!!私は幻想卿を守るために、それを止めなくちゃいけない!!それをアンタがそこまでして邪魔するのは何でなの!!?」

「じゃあ、貴女は彼の何を知ってるの?」

「何を・・・!」

「彼が何をしてきて、どんな目に合って、どんな思いをしたのか。貴女は知ってるのかしら?」

「知らないわよ!!でもね!!あいつがどれだけ辛い目にあってようと、それが他人に被害を与えていい理由にはならないのよ!!あいつは間違っているの!」

「そう・・・貴女は彼を理解出来ない。理解しない。それが大多数の意見なのよ・・・だからこそ、私は彼を理解した」

「これはもう話し合う必要は無さそうね・・・」

「ええ、元より分かってもらえるなんて思ってないもの・・・」

「いいわ、それならさっさとアンタを倒してアイツを止める。話なら、全部終わらせた後にゆっくり聞いてやるわ」

「ふふ、そう簡単に行くかしら?あ、そうそう、二人とも、怖がらせちゃってごめんなさいね?霊夢が戦ってくれる限りは、絶対に能力を使わないって約束するわ」

「し・・・死ぬかと思ったよ・・・」

「こんなので死んだら、殺したアンタも霊夢も妬み殺してやるところだったわよ」


 さらっと怖いこと言ってんじゃないわよ・・・。それより、幽々子のあの言葉。多分何か事情はあるんでしょうね・・・。でも、だからって見過ごすわけにはいかないもの・・・。


「さぁ!そうと決まればさっさと再開するわよ!ずいぶん時間食っちゃったもの、さっさと終わらせるわよ!」

「私はもうちょっと話しててもいいのだけどね~」

「おっと、そうはいかないよ。今人数で有利なのはこっちなんだ。変なことが起きる前に、終わらせたいからね」

「もうアンタのお喋りには付き合わないわ。霊夢、指示をちょうだい」

「えぇ、まずは・・・」

「先手必勝・・・かしら?」

「「「!!」」」」


 ほんの一瞬、目配せ程度の瞬間目を離した隙に、気付けば大量の弾幕が周りを覆っていた。あんな一瞬でここまで・・・これがコイツの本気!!


「さぁ、避けられるかしら?」

「避けられるか、ですって?誰に言ってるのかしら?私は博霊神社の巫女にして、異変解決のプロ、博霊霊夢よ?この程度の弾幕避けられなくて、そんな肩書き名乗ってらんないのよ!」

「チッ・・・その自信満々な言葉・・・妬ましいわね・・・まぁ、私だって避けきって見せるわよ!」

「猫の瞬発力は伊達じゃないんだよ!当てられるもんなら当ててごらん!」

「あらあら、皆見事に避けるわねぇ」

「「「当然!!(でしょ!)(だよ!!)」」」

「で~も・・・これは弾幕ごっこじゃなくて、戦いなのよ?」

「霊夢!!」

「後ろ!?」


 しまった!!弾幕に集中し過ぎた!!こんな時に戦ってる相手を見失うなんて!!これは最悪一発で持っていかれるかもね・・・。・・・・・・・あれ?衝撃が来ない・・・?振り向くと、誰かの後姿が目に入る・・・。緑の服に銀色の髪、そして腰に差した鞘・・・まさかアンタが来るとはね・・・


「あらあら、貴女はどちら側なのかしら・・・妖夢?」


~諏訪子Side~


 この目の前にいる男・・・こいつが今回の異変の犯人のミクス・・・実力は完全に未知数だけど、鬼の二人に幽香なんてやつらが従ってるんだ・・・相当なんだろうね・・・。


「やれやれ・・・消去法とはいえ、俺が神様の相手なんかさせられるとは、なんとも恐れ多いな」

「なんなら、今ならこの異変をすぐに止めて、うちの神社を信仰すれば、アタシの権限でお咎め無しにしてやるよ?」

「これでも神様なんだから、発言力はかなりあるんだよ?」

「はいそうですか、と言えたら楽なんだがな。生憎ここまででかいことやってるんだ。こっちにだってそれなりの覚悟はあるさ」

「ま、そうだろうねぇ・・・野暮なこと聞いて悪かったね」

「いや、いいさ。無駄な被害を出したくないのは当然のことだしな。それで?あんたらの情報はある程度こちらには入っているが、こちらの情報はそちらにはほとんど無い。この圧倒的不利な状況、どうする?」


 確かに、相手はさっきの通り未知数。おまけにこっちの情報をある程度持ってる。神奈子と一つ目配せをする。ここは・・・


「「先手必勝!!」」

「神祭『エクスパンデット・オンバシラ』!」

「開宴『二拝二拍一杯』!」

「神様二人分のスペカか・・・こいつは中々なご挨拶だ」

「減らず口叩く暇があったら避けてみな!!」

「もちろん!そう簡単には逃がさないけどね!!」


 私たち二人のスペカによる弾幕が辺り一帯に広がる。これで仕留められるとは思えないけど、少しは実力を測れるはず・・・あわよくばそのまま追撃を入れてやる!!


「ふむ・・・なら、こちらはまずは避ける事に徹してみようか」

「なんだと・・・?」

「なぁに、別に俺が自分の意思でこれを避ける必要は無いんだ。なんせ、身体が無意識に動いてくれるからな」

「チッ!『無意識を操る程度の能力』か!でも!!そっちがそう来るなら・・・土着神『ケロちゃん風雨に負けず』!!」

「スペカの2枚発動か!!」

「この物量なら、無意識に動こうったって、避けられる場所は無いよ!!」


 本来の弾幕ごっこのルールだとダメだけど、これは戦いなんだ。文句は言われないはずだよね。さぁ、どう出る?


「確かにこれはそのままだと厳しいか・・・さて、どうやって避けるんだろうな?」

「何を!!」

「さぁな?この能力にでも聞いてくれ。俺だってどうするのか分からないんだ」

「じゃあそのまま突っ立ったまま、ぶっ倒れちまいな!」


 スペカ3枚分の弾幕が一気に襲い掛かる。特に動いた様子も無かったし、まさか本当に直撃した・・・?


「なるほど・・・こうやって避けたか」

「「っ!?」」


 突然背後からミクスの声が聞こえた!慌てて飛びのきながら振り返ると、そこには傷一つないミクスが立っていた。一体・・・どうやって・・・?


「そんなに逃げなくてもいいだろ?俺は最初に、『まずは避ける事に徹する』と言ったじゃないか」

「そうだったね、突然声がして、ビックリして記憶が飛んじまってたよ」

「今度はどんなトリックを使ったのかな?」

「教えてやってもいいが・・・そんなに全部教えてたんじゃあつまらないだろ?」

「確かにそうかもしれないねぇ。でも、アンタはアタシたちの能力や戦いを知ってるんだ。教えてくれたっていいんじゃないかい?」

「神奈子、そりゃあ屁理屈って言うんだよ」

「だからって、分からないまんまじゃ対策の立てようも無いじゃないかい。聞けたら儲けもんってくらいだよ」

「ふむ・・・確かに、それもそうか」

「え?納得しちゃうの?」


 なーんか調子狂うなぁ・・・こいつ・・・本当はそんな悪い奴じゃないんじゃないかな・・・


「よし、こうしよう。今の答えは明かさない。その代わり、今と同じ手段は使わないと約束しよう」

「それを、アタシたちに信じろってのかい?」

「ご自由にどうぞ?ただ、俺はどっかの誰かのせいで、嘘が嫌いなもんでな。信じようが信じまいが、まだ答えは明かさないし、使わない」

「神奈子、ここは信じるしか無さそうだね。言い合っててもきりがないよ」

「そうみたいだねぇ・・・全く・・・神様相手に隠し事たぁ、いい度胸してるじゃないか。気に入ったよ」

「信じてもらえて何よりだ。さて、どうする?同じ手は使わないが、また弾幕で攻めるか?もちろん、今度はこちらも反撃させてもらうがな」

「反撃ねぇ・・・こちらからは攻めない。そういうことかい?」

「女性相手にこちらから攻撃なんて、褒められたものじゃないだろう?」

「おや?こんな千年とか生きてるのを女性だなんて言っちゃっていいの?」

「諏訪子?コイツの前にアンタをぶっ倒してもいいんだよ?」

「じょ、冗談だってば~」


 今、一瞬だけ神奈子の目が本気だった・・・。


「なぁに、俺だって結構長いこと生きてるさ、それにそっちの神様に関しては完全に見た目が子供なんだ。少し気が引けてな」

「人を見た目で判断すると痛い目を見る。って教わらなかったかな?なんなら、今から私が教えてあげるけど?」

「おっと、そいつは勘弁してくれ。よーく身に染みて実感したのが何回もある」

「分かってるならいいよ。さ、そろそろ改めて始めようか?」

「そうだねぇ。他のとこも大変みたいだ。アタシ達でさっさと終わらせるよ」

「やっとか。まぁ、こっちとしてはゆっくりだろうが急いでだろうが、どっちでもいいんだがな」

「そんな余裕でいられるのも今の内だけだよ」

「こっからは、さっきみたいにはいかないからね」


 多分、神奈子も同じことを考えてるだろうな・・・それなら、私がやるべきは・・・


「アタシ達が出来るのは」

「弾幕だけじゃないんだよ!」

「そう来たか」


 ミクスに向けて、両手に取り出した鉄の輪を投げつける。それを避けたところに一気に神奈子が走り込み、胸の位置に掌底を打ち込む。それを身体の外側でいなしたミクスに向け、先ほど投げた鉄の輪を操り足元に追撃を向ける。それを足を上げて避けた。


「今だよ神奈子!!」

「はぁ!!」


 足を上げて体勢を崩しているミクスに対し、先ほど受け流された勢いのまま、流された方向の足を軸にして回し蹴りを放つ。


「おっと、怖いなぁ」

「チッ、やるじゃないかい」


 直撃するかに見えた回し蹴りも、上げなかった足を軸にしたミクスの回し蹴りで、お互いの回し蹴り同士がぶつかる。


「そこだぁ!!」


 ぶつかり合って止まってるミクスに向けて、もう一度鉄の輪を向ける。足を狙っても避けられるかもだから・・・狙うのは腰!あの体勢から身体の軸はずらせないはず!!


「攻撃する時に声を出すのって、相手に『今から攻撃しますよ』って教えるのと一緒なんだって知ってるか?」

「な!!」

「ぐっ・・・!」


 拮抗してたように見えた二人の回し蹴りが、ミクスの言葉と同時に神奈子が吹き飛ばされ、そのままミクスは鉄の輪を避ける。あそこから神奈子を吹っ飛ばすなんて・・・


「やっぱり・・・一筋縄じゃいかなそうだねぇ・・・」

「ここまでとはね」

「すごい連携だな・・・あの声が無ければあれは食らってただろう。これは奥の手の一つも使わざるを得ないかもな」

「こっちはかなり必死だってのに、そっちはまだ奥の手を何個も残してるってかい?笑えないねぇ・・・」

「ハッタリ・・・ってことも無さそうだね」

「さぁ、次はどう来る?それとも、こっちから行くのがお望みか?」

「おや?女性に自分から攻撃するのは嫌なんじゃなかったのかい?」

「女性のお願いには弱くてね。ついつい聞いてしまうんだよ」

「降参して~ってのはダメ?」

「子供のわがままは管轄外だ」

「言ってくれるね・・・」


 さて、とは言ったものの、本当にどうしようか・・・って言ってもやっぱり攻め続けるしか無いよね・・・。


「いくよ、神奈子。今度は力負けしちゃダメだよ」

「そっちこそ、神様のくせに相手に助言なんてもらってんじゃないよ」

「そっちから来るみたいだな」

「そっちのお望みどおりに・・・ね!!」


 そう言いながら、新しく手に取った鉄の輪を思いっきり投げる・・・フリをする。狙いは、アンタの真後ろに落ちてる方だ!


「あぁ、さっきから何かをちらちら見てると思ったら・・・これを見てたのか」

「神奈子!」

「おう!!」


 見抜かれてたか・・・でもそれでも間を空けたりしない!一気に攻める!神奈子の正拳を外側に流し、今度はミクスが体勢の崩れた神奈子に掌底を放つ。


「おっと、流石神様、学習してるな」

「生きてる年季が違うんだよ!」

「アタシと向き合ってて余所見にお喋りとは、余裕だねぇ!」


 掌底をしようとした腕に向けて鉄の輪を放ち、ミクスは急いで腕を引っ込める。そこに神奈子が一歩踏み込んで蹴り上げを放つ。それをバク宙でかわした。今度こそ・・・!


「なるほど・・・よく考えられた連携だな・・・やはり、使うしか無さそうだな。奥の手の一つをな」

「あの体勢からまだ避けるんだね・・・ほんと器用だよ」

「でも、この距離の弾幕は予想出来たかい!」


 バク宙の状態から身体を捻り、無理やり避ける。そして着地した所に神奈子が距離を詰め、弾幕を放つ。これなら!


「あぁ、もちろん・・・なんせ、聞こえたからな」


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