火炎
気付けば、既に教室の至る所が紅に染まっていた。
やがて異形のモノは「獲物」を見据えて、刃のような黒い翼をはためかせた。
「ウヌカ…!ワラワノエモノハ…ウヌカ…!」
地獄の底から響くような、ドス黒い声色。
もはや人の形を留めていないわそーは、不気味な笑みを湛えて 僕に翼を突き付ける。
「ヤット…ヤットミツケタ…キヒ…キヒヒヒヒヒヒヒィ!!!」
くそ…!こんな時に何か起きれば…!
例えば、手から炎が出るとか…。
そう思った途端、手から炎が出た。
「!?」
何が起きたのか分からないといった様子のわそー。
けれど、一番驚いたのは他ならぬ僕だ。
手のひらに感じる確かな熱が、僕の頭に妙な感覚を流し込んでいるように思えた。
揺らめく炎の記憶…。
何にせよ、自信という物が出てきた。
「わそーが何だ! 紅炎『クリムゾンフレイム』!!」
辺りをワインレッドの炎が焼き尽くし、忽ちわそーは火達磨と化す。
「ギッ…ギィエエエエエエエエエエエエエーーーッ!!!…ユ、ユルサン…!ユルサンゾォォォーッ!」
わそーが翼から無数の羽根を撃ち出す。
それを軽く焼き払うと、僕は追撃の体制に入った。
「剛炎『エクスプレイザー』!!」
見知らぬ炎の名が、勝手に口から飛び出す。
それと同時に、両腕から極めて太い火炎が噴き出した。
「…ギッ…ギィィィヤァァァーーー!!!」
もうわそーは半身を完全に焼き切られ、動くことすらままならない。
そうして僕は訳の分からぬまま教室を抜け出し、「生存者」を探すべく歩き始めた。