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▼どうやらこの世界は、バグってしまったようです。  作者: すみっこ
▼バグを直しに出掛けましょう。~電脳族編~
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▼バグを直しに出掛けましょう。~電脳族編~ 【Lv5】

「さ、最初のバグって…【キングバニィ】が巨大化したやつですか?!」

「そうだよ。此処に侵入するには100万桁のパスワードが必要なのに…バグって

なかなか厄介だね。」


窓にすがりついて見ると、前の時よりも大きい…き、機械?で出来たような

モンスターが暴れていた。

「エコさん、あれ何ですか?」

「………。」

「本来はLv76くらいの【ソルジャー】だと思います!あわわ、どうしよ…?!」


ログさんはかなり混乱しているようで、なんだか出ちゃいけないものが色々と

出ている。

ニズムさんはというと、すでに対処法を検索するため姿を消していた。さすが。


_____俯いて何も言わないエコさんの顔を覗き込む。


「あの、エコさん?」

「…………す。」

「え?今なんて…」


小さい声で何か言った気がして聞き返そうとした瞬間、バン!と窓を叩いて

立ち上がる。

そして、


「ぶっ殺す。」

「は?」


バリンッ!と派手な音を立てて硝子の破片が飛び散る。

そこから飛び降りたエコさんは、なんと軽やかにストンと地面に着地した。


「に、人間じゃない…!」

「ゲームだから当たり前でしょ~。カケルくんは行かないの?」

「いやだってこんな高さから飛び降ります?ミワさんは慣れてるかもしれません

けど…てミワさんんっ?!」


思わず振り返るとミワさんがキョトンとした顔でこちらを見ていた。

「なんで驚いてるの?」

「だって、いきなり後ろに!」

私たち(・・・)、さっきからいたけど。」

「……たち?」


いました。


「うわああああっ!ガルさんルフさんリリさんレイさんアスカさんっ?!」

「混乱しながらも全員の名前を読み上げる君の対応力はすごいよね。」


呆れた顔でアスカさんがやれやれと首を振る。

………と思った瞬間、レイさんになぜか悪戯をした猫のように首根っこを

捕まれていた。



嫌な予感しかしなi「わぎゃあああああああああああっ?!」



今までの人生の中でダントツ一位に輝きそうな奇声を上げて、案の定割れた窓の外に放り投げられた。

動作的には『ヒョイッ』と音が聞こえそうなくらい軽かったのに、実際の威力は

新幹線の屋根に縛られたまま発車したようだった。

(※スキルは正しく使いましょう)


あっでもさっきのエコさんみた「へぶっ!!」

…………駄目でした。


「大丈夫ですかぁ?カケルさん。」

「……ハイ、HPハ減リマシタケド、ナントカ。」


コンクリートにめり込んだ顔を引きはがし、てへっと笑ってから上を見て青ざめる。

デカかった。デカいなんてものじゃない…浮遊島レベルだった。


「来たところ悪いですけど、下がっていた方がいいと思いますよ。何とかします

から。」

苛立ちを隠すように、淡々とエコさんは言う。

上げた手から風が吹いて、空に真っ黒い雲が渦のようにして現れた。


「………私、ずっと黙っていた事があるんです。」

「へ?」


そう言うと【エコ】は、空いていたもう一方の片手で初めてヘッドホンを外した。


ただただ違和感を放つ、沢山のピアス。



「____今じゃ考えられないかもしれないけど、元ヤンなんですよね、私。」



てへっと(おど)けて笑ってみせた。

僕も、周りの人も、いつの間にかいたパーティーメンバーも、固まって何も言えなくなっている。

動き続けているのは【ソルジャー】だけ。


「色々あって現役引退したんですけど、そこからの生活がホンット酷くて。

情報(メディア)だけが私を救ってくれたんです。この世界に来たら、絶対

【電脳族】になるんだって決めていて、その決断は大正解で。

上手く言えませんけど、この町は私の大切な、第二の故郷なんです。」


だから、と前を向く。

その目にはちろりと炎が燃えていて、過去を思わせる目つきだった。



「……機械だとしてもこんな事するなんて、絶対許さねぇ。アタシがカタを

つけて終わらせてやる。」



いよいよ雲は国全体を覆っていった。

周りのざわめきから確かに「くるぞ、【エコ】の最強奥義が…!」という言葉が

聞こえる。

巨大兵器は【エコ】を見つけて、腕を振り下ろした。




「くらいやがれっ!【疾風(ライトニング・)迅雷(トルネード)】!!」




瞬間、耳をつんざく雷が巨体を貫いた。



-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「いや~それにしてもビックリしましたねえ、ルフさん?」

「そうですねえ。かなり衝撃的な事実でしたねえ、アスカさん。」

ニヤニヤしながら実況のようにエコさんを間に挟んで喋っているのは、まあ

案の定ルフさんとアスカさんだ。


「落ち着、落ち着くんですよエコ、こんな事になる覚悟で告白したんですから、怒らない怒らない…!」

「おいエコそんな事いっといて手からバチバチ花火出てんぞ!」


モンスターから出てきた素材を回収しながらガルさんが注意を飛ばす。

でもよく考えたら、こういう怒りっぽいところはヤンキーの名残かもしれない。


「あの、エコさん!」


勇気を出して一歩前に出ると、本人は少々驚いた顔で「何ですか?」と首を傾げた。



「その…過去の事、言ってくれて嬉しかったです!あ、有り難う御座いました!」



それ以外言葉が見つからなくて、ペコリと頭を下げる。

周りの人がみんなこっちを見ていて恥ずかしかったけれど、でも、ちゃんと言えた。




「_____エコ、ちょっと。」


ふいにミワさんが両方の二人をひっぺ剥がして耳元で何か呟く。



「………次こんな事したら、絶対許さないから。」



小さい声でうまく聞き取れなかったけど、その言葉を聞いた後のエコさんの顔は

今にも泣き出しそうだった。

そしてそんな彼女とは裏腹に、ミワさんは酷く腹を立てたような顔をして、

きびすを返して人混みに消えていった。



エコって意外にモテるのかなと思ったり思わなかったり。


                ……いや、ただ単にいじられキャラなだけか。


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