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▼どうやらこの世界は、バグってしまったようです。  作者: すみっこ
▼バグを直す前にやる事があるようです。
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▼バグを直す前にやる事があるようです。【Lv6】


ぴたぁっと動きを止めた【シーラ】がフルフルと震え始めるまでに数秒が経ち、

更に第一声が漏れるまでに更に2,3秒かかった。


「…か、小僧カケルのくせに、何で分かったんだ……?我の演技は完璧だったはず…」

「まあ確かに演技は完璧だったけどさ、あごを前に出してわざと偉そうに見せる

癖が少なからず出ちゃってたよ?出て無くても分かったと思うけど。」


クスリと笑うと、たちまちサタニアの顔が真っ赤になる。


「って事は貴様っ!分かっていてわざと【シーラ】として接していたのか?!」

「え、何の事?」

「こンの…ッ!」


胸ぐらを捕まれた時、スッと売り物なはずのタンスから【サタニア】が出てきた。


「だ、だからバレるって言ったじゃないですか~サタニアさん…」

「黙れシーラっ!我は悩んで悩んでこの方法を選択したというのに、こいつは

我を弄んで…!」


ふるふると震えるサタニアと、それを宥めるシーラ。


「って事は、看板のカンちゃん(笑)を黙らせたのは…」

「ああ、『焼き払うぞ』って事だ。」

「優しくして上げて下さい。」


………というか、なぜサタニアは此処にいるのだろう?


「いや、その…な。やっぱりあんな喧嘩したような雰囲気のままでは嫌じゃない

か。それで…」

「私はちゃんと止めたんですよ?向こうも理解しているし、何よりボスモンスターが

ダンジョンを留守にするなんて…」

「それはよくやってるから大丈夫って言ったじゃないか!」

「ちゃんと働いて下さい!今度から“サタニート”って呼びますよ?!」

ルフさんが吹いた。


「ま、まあせっかくですし、どうぞ商品を御覧になって下さい。」

元に戻ったシーラちゃんが苦笑いしながらもきちんと接客してくれる。

そうだ、僕らお買い物に来たんだ。


「そうだね、じゃあ折角だから【森守人】のアイテムを…」

「カケルさん“モリモリ”にしたんですか?!」


もりも…


「なあんだ早く言って下さいよ!つい昨日、モリモリの新商品を入荷したところ

なんです!」

バシバシと背中を叩きながら言う。痛い。


しかし嬉しそうに「モリモリ~♪」と口さずみながら倉庫へと走っていくシーラ

ちゃんの背中を見て黙っておいた。

この世界、見た目と実力のギャップの差が激しいのはよくある事だ。うん。


「ありましたっ!これです!」

ドォンッ!と凄い音をたてて段ボールが床にたたきつけられる。

……この世界、見た目と実力のギャップの差が激しいのは(以下略)


「へええっ、装備品から武器まであるんだ?」

今までその辺を物色していたミワさんが興味津々で中身を漁る。

「はい!何てったってうちは“大商店”ですからね!上から下まで揃えて

います!」

えっへんと胸を張るシーラちゃん。


「? この武器は…最新のか?」

そう言うガルさんの手元にあるのは、短くて軽そうな古木のワンド。

大した装飾品も無くノーマルな感じで、ツタがグルグル巻きになっていた。


「はい!それは【世界樹の杖】と言って、つい最近開発された物なんです!

特殊効果は土魔法up、更に自然と協和できるというエルフ族の特徴を最大限

引き出す物なんですよ~っ」

得意気に話すシーラちゃんを、ミワさんが黙って見つめていた。


「……?どうかしましたか?」

「えっ?!いや…私も昔そうやって接客していた時期があってさ、懐かしいなって」

ぴらぴらと手を振りながら苦笑いする。


「不良みたいな不審者が入ってきた時は驚いたな~。」

………ミワさんはどういう過去をお持ちなのだろうか…。


「えっと、じゃあソレにしようかな。」

「かしこまりましたっ!ついでに装備品も見ていきますか?」

「そうだね、あと売りたい物もあるし……」

「くくっ、小僧のくせにモリモリなんてなかなかやるな!」

「サタニアは黙っていて下さい。」

売り物のタンスをバタンと閉める。


「きっ貴様!何お」

「さあ!あんなサタニートは置いといて、さっさと用を済ませましょ?」

「う、うん。」


とりあえず初心者用の装備を出して、次々と現金に換えていく。


それをミワさんが何もせず、何も言わず、ただぼうっと、見る。





____。





「ミワさん?」

もう一度、声を掛けた。



「い…………は、」

「え?」

「今頃、あの二人はどうしてるんだろうな。悔やんでるかな。笑っているかな。

……それとも、もう私の事なんて 」



そう呟くミワさんを見てハッとする。


見ていない。


ミワさんの目が捕らえているのは僕らじゃなくて、その向こう。

入り口に立っている……




「ミワ?」




少しクセのある、赤毛の少女。





「かる、か。」





そう呟いたミワさんの姿が少女を押しのけて外へ消えていくのを見て、

見るだけで、僕はただ、目を見開く事しか出来なかった。



2、3回くらい“シーラちゃん”を“シーラたん”と打ち間違えました。

ガッツリ変態になっちゃいますね。


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