▼そもそもの始まりは、バグでした。【Lv2】
「だっ、大丈夫ですか?!」
「ッ…!馬鹿、来るな!!」
茂みに倒れている傷だらけの青年が威圧を発する。
でも、そんなので怯む私じゃない。
「此処まで来ちゃったんで、後には戻れませんよ。一体どうし…」
「あぶねぇっ!」
反射的に身を屈めると、背中を掠めて針が木の幹に突き刺さった。
後ろを振り返ると、大きな蜂が敵意の籠もった目でこっちを見ている。
「チッ、だから来るなっつってんだろ。これだから村娘は…」
やれやれと言うように頭を振る。ちょっとムッとした。
「村娘のカテゴリでまとめないで下さい!もうこうなったら私が倒します!」
「はぁぁっ?! あのな、町民は戦う事を禁じられてるんだぞ!それにお前は【ノーマr】…」
「そんな法律より貴方の命の方が大事でしょう?!」
ぐっと、怯んだ。
「罰なら慣れてるんで、いくらでも受けてやりますよ。こう見えても私、結構スキルは
高いんです。」
立ちふさがるように前へ進むと、「待て」と声が止めた。
「お前、そもそもの武器装備してねーだろ。これ使え。どうなっても知らねーからな。」
ポイッと投げられた【銀の短剣】を慌てて受け取る。
「ありがとうございます!」
「フンッ。」
拗ねた子供みたいにそっぽを向いた。
敵は恐らく【フラワー・ビー】。そんぐらいの知識は持っている。
確か…
(この花に惹かれるモンスターなはずっ!)
もう一発、と飛ばされた針を避けて茂みに転がり込む。
大丈夫、あの花籠は反対側に設置したから、注意はそっちに向くはずだ。
あとは音を立てないように、そぅっと木を登って、顔の前に短剣を持ってくる。
そして、
大きく飛び上がり、刃を刺した。
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「なかなか悪くない戦法だったぜ。」
いつのまにか傷を皮膚から消して、青年はニヤリと笑った。
「そりゃどうも。家事をしていると嫌でもスキルは上がるのでね。そんな事より、この世界に
警察なんているのでしょうか?」
「は?」
「いやだって、私戦っちゃいましたし。あ、でもとりあえず捕まる前に、キルカさん達に
一言報告しなきゃ。」
通信画面を開こうとする前に、「ぶはっ!」と青年が吹いた。
「いやそれは、ぐふ、大丈夫だ。お前が戦ってる最中に免除しといたからな。」
「免除?貴方実はそんなに偉いんですか?」
偉いも何も、とまだ笑いながら言った。
「俺、一応【魔王】だし。」
………………は?




