▼旅の途中で色んな物がバグっていました。【Lv13】
「さ、そろそろ暗くなってきたし、今日は此処らで休憩しようか?」
「なんか長い一日でしたよ……。」
木の幹に寄りかかり、深い溜息を付く。
ミワさん達に出会っていなければ、こんな事は起こらなかっただろう。
いつもなら今頃、宿探しをしているのがオチだ。
(…ん?)
森の中 + パーティー + 一夜。これは“ = 野宿”って
ヤツじゃないか?!
だとしたら、テント張りや薪集めを手伝わなければ!!
「皆さっ…!!」
なんか目の前に大きなハウスがありました。
「?! ?! ?!」
「あ、カケル君、早く入りなよ。冷えちゃうよ~」
中からミワさんが手招きする。あれだ、思いっきり山の中にある丸太ハウスだ。
言われた通り入ると、中は暖炉のおかげかバッチリ暖かかった(薪も常備)。
棚の上には可愛い陶器の置き物やぬいぐるみが飾られていてホーム的な何かを醸し出している。
何コレ。どっから出たの。
「小人用の家にミワちゃんが【拡大魔法】を掛けたんだよ。ちゃんと人数分 個室はあるよ。
カケル君の部屋は一番端ね。」
「あ、ハイ。じゃとりあえず荷物置いてきま____ 」
「待ちなさい初心者くん♪」
「ぐえっ」
後ろ襟を捕まれて一瞬気絶しそうになった。なんてパワフルなんだ。
「貴方の一日はまだ終わってないのです。」
「え、あ、はい?いや荷物置くだけですよ?」
話を聞いてるのかいないのか、ニッコリ笑いながら一言、こう言った。
「修行です。」
「___ッゼェ、ゼェ、ちょ、コレをほぼ毎日やるんですか…っ?!」
「当ったり前だよ。まあお疲れ!」
修行、それは近くの同じダンジョンを3回クリアする事だった。
「今の内に言っておくけど、ミワちゃんなんか自分の意志で付近のダンジョン5カ所くらいを
寝ないでも10回ずつクリアしてたからね、毎日。
ガルが「あの頃は力ずくで休ませようとしたりして、本ッ当に苦労した」って。」
「うっ…」
ゲストコーチのルフさんに意地悪く言われ、ミワさんは思い当たる事があったのか明後日の方向を
見てピューピューと口笛を吹いていた。
にしても、ミワさんがそんなに修行熱心なんて結構ビックリだ。
「やー、これがまた凄いんだよ?本部から警告が出ているモンスターの大群に自ら突っ込んで
ヤケクソに見えてくる程倒していく時もあったんだから。それからあの時も…」
「……ルフ、それ以上言ったらゲームオーバーにさせちゃうよ?」
ニッコリと悪魔スマイルでルフさんの肩を掴む。
言い方は比較的マイルドだが率直に言うと「殺すぞっ★」と言われているようなモンだ。(しかも
かなりの強者に。)
汗を流しながら「や~冗談冗談」とはぐらかす。
「今はHPが危なくなったらある程度回復はするけど、その内【回復スキル】と【防御スキル】も
上げて、自分でやって貰うからね。」
「あっはい!なんかスミマセン色々と…ミワさんみたいに強くなったら早々死ぬ事も
ないんだろうけど」
「……。」
目を見開いたまま黙るミワさんに、何か違和感を覚える。
「…あの、ミワさ…?」
「……「強ければ死なない」って事はないよ。」
____その時、一瞬だけ、彼女の目が、
何よりも深く、暗く、
……哀しそうに、見えた。
「_____毎日 死んでる。」
え…?
「…えっと、あの。」
「しっ!」
「へ?」
人差し指を唇に当てたまま何事も無かったかのように辺りを見回す。
その耳が段々と尖り始め___【エルフ族】に変化していった。
「誰かいる。」
ルフさんが真剣な顔で木に手を当て何か小声でブツブツ呟いているのを見て、「もしかしたら」と
自分も耳を澄ませる。
『___ダレカ、ダレカ ハヤク。』
『“血”ガイッパイ、オンナノコ、クルシンデル。』
「二人共、こっちだ!」
ルフさんは先程 居場所を聞いたのか、海の方向へ駆けていった。
初心者も初心者なりに必死でついていく。そこには、
「痛っ…!」
怪我だらけの、女の子がいた。




