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天使が消えた日  作者:
デスゲーム 始動編
3/3

Ⅱ <キー>

文がぐっだぐだな可能性大

「美味かった♪ ヒョウさん、ごちになりまーす!」

 オレは上機嫌で口元についたバニラアイスを舐めとる。


「くっそ、次はお前に払わせてやるからな!」

 こちらは悔しそうに歯ぎしりをして、アイテムストレージ欄からお金を取り出す。


「8000ぺルになります」

 NPCの店員が自然すぎて逆に怖い笑顔を浮かべる。ヒョウは憎々しげにオレを睨んだ後、NPCに銀貨を8枚投げた。

 このゲームでの通貨はぺルで統一されており、金貨が10000ぺル、銀貨が1000ぺル、銅貨が100ぺル、白貨が10ぺルとなっている。

 ヒョウも一応は熟練プレイヤーなので、銀貨8枚くらい楽勝だがやっぱりかなり悔しそうだ。


 これで5連勝!

 ヒョウに見えないくらい小さくガッツポーズを作る。


「ヒョウさーん、次は頑張りましょうねー」

 小馬鹿にした口調でヒョウに話しかける。

 自然にオレの眼前に突き出していた右の拳をプルプルと痙攣させて静止する。額にはいくつもの血管が浮き出ていて、今にもぶ千切れそうな勢いだ。


 ――自分で挑発しといてあれだけど、こいつよく耐えたな。オレなら問答無用で殴ってただろうに。


 このゲーム内では、全ての〈感情〉というものを制御することが出来ない。

 少しでもむかついたら、頭の中には確かな怒気が溢れ、少しでも悲しければ瞳から涙がこぼれる。

 よくいえば、感情が豊かになり、悪く言えば感情を隠すことが出来ないのだ。


 面倒くさいシステムではあるが、オレは結構これを気に入っている。

 自分の感情を一切包み込まずに伝えられる、というのは現実ではそう出来るものでは無い。多少は相手に合わせたり、気を遣ったりして自分の〈本心〉を晒す機会は極僅かだと言えるだろう。


 だから、せめてゲームくらいでは、自分の気持ちを素直に伝えるのもいいんじゃないだろうか。

 楽しむためにゲームをやっているのに、そんなとこで気を使ってもバカバカしいしな。


 支払いを済ませたヒョウと合流し、町をかっぽする。先日までクエストばかりやっていたから、流石に今からモンスターを狩りに行こうとは思えない。どこで時間をつぶそうか……と思考を続けて歩いていると、ふいにショーケースに入った一匹の〈ネコ〉と目が合った。


「うっ」


 思わず唸り声を上げる。じーっと此方を見据える翡翠色の瞳は何を考えているかわからないが、どこか神秘性を感じる。毛色は真っ黒とまではいかないが、グレーよりの黒と言った感じ。特徴的なのは尻尾の形状で、なんと鍵の形になっているのだ。


 オレは頭の中に渦巻く感情を出来る限り抑え込み、声に出して叫んだ。


「か、可愛い!」

 オレは両肩を小さく揺らし、目の前のネコへと歩み寄る。

 ショーケースのオブジェクトに囲まれ、窮屈そうに首を掻いている姿を見て、もう一度発狂する。


「ヒョウ! ヒョウ! オレこいつ買う!」

 テンションが上がり、何度もその場でジャンプをしながらヒョウの背中をバシバシ叩きまくる。


「いってぇよ! 買うのはわかったから叩くな!」

 さっきの〈ゲーム〉で負けたのが悔しかったのか、少しイライラしている様子で怒鳴り返してくる。


 ……全く心の小さい男だ。

 内心でやれやれ、と首を振る。


「うわ、なんか知んないけど。馬鹿にされた気がした」





 ◇ ◇

「お買い上げ、ありがとうございました!」

 灼熱の太陽が降り注ぐ中、カラカラとした空気にピンポーンという機械音声と、威勢のいい店員さんの声が響き渡る。同時にオレは店内から飛び出し、さっそくアイテムストレージを開ける。透明のウインドゥの中にはいくつかのアイテムがストレージされており、オレはその中の一つをクリックする。クリックしたアイテム名は〈鍵の卵〉。

 刹那、眼前にバスケットボールほどの小さめの球体が出現し、その球体が少しずつ形を変えて生物の形へと変化していく。完全に形を成す時に目がくらむぐらいの強烈な光を発し、瞼を下ろしてしまう。


 そして、ようやく光が収まり急いで両目を開ける。そして、絶句した。


「にゃぁ……ぁ?」

 右の耳をぴょこんと動かし、小首を傾げる。

 その動作だけで、オレはハートを全力で打ち抜かれた気分になり、胸を抑える。

「ぐあっ! なんだこのドキドキ……ハッ! もしや、これが恋!」


「ちげぇよ! 飛躍させすぎだろ! いや、でも確かに可愛いのは事実だな」

 ヒョウが自分の尻尾でじゃれている途中のカギネコに指を差し出す。カギネコは差し出された指を一切ためらいなく――噛んだ。


「いたッ!? なんで噛むんだよ!?」


「うっとおしかったんだよな。そうだよな、キー?」

 喉をごろごろよ鳴らすように撫でてやる。

「にゃぅ」

 キーは気持ちよさそうに目を細め、身体を丸くしてオレの膝に飛び乗ってくる。

「すでに命名済みかよ……」

 ツッコむことに疲れてきたのか、もう叫ぶこともせずに疲れた表情で肩を落とす。

 その様子をオレの肩の上で憐れむようにキーが鳴く。



「俺、そいつに嫌われるようなことしたっけか?」

ヒョウの心からの疑問に、キーは「にゃぉ」と短く答えを返した。

次回ギルドメンバー出演。

その次くらいにバトルいれようかな。

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