ある世界の物語(仮)
魔法で構成された世界、「グランド・ゼロ」。
そこには様々な種族の生き物が魔法と共に住んでいた。
そんな魔法世界の中心には全ての魔法の原点とされる巨大な岩石があった。
しかし、全ての魔法を手に入れようとしたハグリスと呼ばれる野心に満ちた人々によって、岩石は56の破片に砕かれてしまった。
次第に全ての破片を集めた者が、世界を支配できるという伝説が生まれた。
その10年後、父親を探すために旅に出ていた少年キリクは、全ての破片を集めることを夢見た少女ソラに出会う。
その瞬間こそが、壮大な旅の幕開けだったのであった・・・・
グランド・ゼロ最大の都市、ピルツバーグ。
世界最大のの人口を誇るこの町に、一人の少年が到着した。
「ここがピルツバーグ・・・・」
そう言う少年の姿を、人々は驚愕の表情を浮かべながら見る。
なぜなら少年の洋服は上から下まで1つの黒いマントで覆われていて、日の暮れかけた今の時間帯ではまるで死神のように見えるからだ。
「まずは宿を探すか。」
そういうと少年は歩き出し、泊るための宿を探し始めた。
しばらくすると、前方が騒がしい事に少年は気がついた。
何事かと思い、人の群れをおしやり覗き込むと、そこには数人の男に囲まれた1人の少女がいた。
年齢はまだ10代だろうか?
黒いストレートの髪を綺麗にショートで切りそろえていて、スラリとした手足は不思議な魅力に満ち溢れていた
少年は状況が読めるまで、その場の様子を見ることにした。
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「ちょっと、離してよ!」
私は必死になって腕をつかんでくる男に向かって叫んだ。
「ぐへへ、ねーちゃん可愛いじゃねいか。オラと遊ばないかい?げふぇふぇ」
お金を貯めるために居酒屋でバイトしたのが間違いだった。
まさか盗賊にからまれるなんて・・・
それにしても、さっきからべたべた触りすぎ!!
「嫌だ、離して!・・・この!」
少女が手を男に向けると、男の衣服に火が着いた。
「へっへっへ!ザマーミロ♪!」
「あっちちちち!!!!てめぇ、魔法を使いやがったな!!まてコラァ!!」
男は逃げようとした少女の体を地面にたたきつけ、火の着いたところに手をかざす。
すると、火が消えた。
「お、お前も魔法を使えるの・・・・?」
「我々は魔法盗賊「エレファント」だ。魔法が使えなくてどうする。」
声のする方をみると、ボスと思わしき大柄の大男がでてきた。
「コルクの旦那!今日の獲物はこの女でどうでしょうか?」
なによ、あんなのに勝てるわけないじゃない!
「ふむ、でかしたぞお前たち。あとで褒美をさずけよう。」
無理無理無理!!
私が使える魔法、戦闘向けのものほとんどないし・・・・
そのとき。
近くにいた一人の男が吹っ飛んだ。
「はい?」
私は驚きのあまりに口を半開きにしたままその光景を見ていた。
何が起きたのかようやく理解し始めたころ、私の前にはさっきまではいなかった黒服の少年が立っていた。
後ろ姿から見た感じ背は私より少し高め。真っ黒なマントを着てるからわからないけど、細身のようにお思える
「大丈夫?」
少年は振り返って訪ねてきた。
髪の毛は無造作に跳ねていて、少し眠そうな顔をしていた。
しかしその眼には、何か1つの芯のようなものが見えた。
「あ、うん大丈夫・・・」
少女はとっさに答えた。
不思議な事に、初対面の人と話すときの緊張感はなかった。
「おいおい、にいちゃん。カッコつけるのもほどほどになぁ!?」
はき捨てると同時に、盗賊の男が背後から少年に殴りかかる。
が、しかし、吹っ飛んだのは男の方だった。
「お前、いったい・・・」
盗賊達が一人残らず困惑の表情を浮かべているなか、
コルク一人が青ざめた顔をしていた。
お前まさか、「「稲妻の死神」キリクか・・・・?」
青ざめながらコルクが問う。
それを聞いた盗賊達の表情もみるみる青ざめていく。
私はそんな名前の人を聞いたことがなかった。
だから、彼らが青ざめた理由がわからなかった。
少年は黙ったまま盗賊達の方を見ている
とても寝むそうな顔で。
「いや、やつが今ここにいるはずがない。たとえ本物でも、この数なら勝てる!やれお前たち!!」
コルクの命令と同時に、武器を持った盗賊達が一斉に少年を襲いだす。中には遠距離魔法をつかって炎の矢を飛ばしているものもいる。
「俺の後ろから動かないでね?10秒で終わらすから。」
「え、いや、無理でしょ!!ねぇ!!」
パニックになっている私にお構いなしに、キリクと呼ばれた少年は動きだした。
向かってくる敵にむかって眼でやっと追えるほどの超速で走りだしたキリクは、盗賊を片っ端から殴り、蹴りとばした。
10秒たったころにはコルク以外の全ての盗賊が倒れていた。
「さて、もうやらないよね?」
息切れ1つしていないキリクは、絶望に浸っているコルクにめんどくさそうに聞いた。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ」
コルクは耐え切れずにその場から逃げ出した。
無理もない。
それほどまでにキリクは圧倒的だった。
「あ、あのありがとう!」
私は動揺を隠せなかったが、それでも勇気を振り絞ってお礼を言った。
「あ、あのお礼をしたいんだけど・・・」
「いいよ、別に。それより俺は今日とまる宿を探さなきゃいけないから。じゃあな。」
「あ、じゃじゃあさ!!」
背を向けて歩き始めていたキリクが振り返る。
「今夜私の家に泊まってよ!そしたらご飯でも作ってお礼できるし!!」
キリクは少し驚いた顔をしたが、すぐに元に戻った。
「お前、名前は?」
「私はソラ!あなたはキリクでいいんだよね!?」
「ああキリクだ。今日一日よろしくソラ。」
これがのちに伝説となる、二人の冒険の始まりだった・・・