*オチ?
「やっぱ運命の相手だって!」
「友だちという意味ではそうかもね」
車の中で茜が嬉しそうに声を上げて時弥がなだめる。家に到着するとさすがに眠くて時弥は歯を磨きすぐに寝床に潜り込んだ。
初夢は2日目の朝だというから今日の夢はただの夢だろう。
今日はなんだか色々と散々な日だった気がする……いや、正しくは昨日になるのかな? 考えたら今は早朝だ。そんな事を考えながら意識を遠ざけた。
「おはよ~。あら、どうしたの?」
昼過ぎに起きてきた茜がこたつで突っ伏している時弥を見下ろす。
「……なんでもない」
酷い夢を見て気分が悪いとは口が裂けても言えなかった。内容が内容なだけに……
なんだって俺が杜斗を襲わなきゃならないんだよ。思い出しただけで鳥肌が立つ。そもそも体格的にいって俺が適う訳ないし、だからって逆の夢も嫌だけど……と訳の解らない思考が頭の中で渦巻いた。
「あ、雪よ」
「!」
茜が嬉しそうに窓の外を指さした。立ち上がって窓に近づく。
音もなく降りてくる白い妖精──空は鈍色だが静まりかえった風景は切り取られた絵画のようで時弥は目を細めた。
こんな年越しもいいかもしれない。窓ガラスから放たれる外の冷気が肌に伝わり室内に目を向けた。
「……」
俺はここにいる。
ここがあったから俺は今ここにいるんだよな。
「時弥、おせち食べたら出かけるよ」
「ええっ!?」
時弥は逃げ出したい衝動にかられた。
END