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お寒いのがお好き  作者: 河野 る宇
◆年始です。
4/5

*あけまして

 車で三十分の所にある神社に向かう。

 神社近くの広めの道路に駐めて街頭の灯りを頼りに歩いていくと、初詣に行く人たちと合流する。到着するとすでに人は大勢いて賑やかな音が響いていた。

「目当ては破魔矢とおみくじよ」

 言って時弥の腕をグイと引き寄せる。

「わ!? ちょっと姉さん……ま──っ」

 顔を上げた時──目の前に人がいて見上げた。

「……」

「……」

 お互いに見知った顔だ。

「……あけましておめでとう」

「今年もよろしくな……」

「! あら、杜斗くんだっけ」

 茜の強引な説得に杜斗は仕方なく行動を共にする事になった。

「まさかこんな所で出会うなんてねぇ~。まさに運命の相手よね!」

「なんの話だ?」

「……気にしないで」

 時弥は頭を抱えた。

 賽銭箱の前に立つと自然と神妙な面持ちになるから不思議だ。

「作法どんなだったっけ」

「神社によっても違うだろ」

「まあいいいや……」

 二人は二礼二拍手して手を合わせ目を閉じる。祈りが終わり再度一礼をした。姉の破魔矢の購入を待ちおみくじの列に並ぶ。

「俺、去年は末吉だったんだよね」

「俺は中吉だった」

「あたしは大吉だったわ」

 今年の運勢を占ううえではとても重要な儀式だ。

 三人は慎重におみくじを引いた。

「あ~。今年は中吉か。残念」

 茜は不満げに発する。

「……杜斗は?」

 時弥は自分のおみくじをチラリと見て杜斗に問いかけた。

「大吉」

「時弥は?」

 茜は弟のおみくじをのぞき込んだ。

「あら、大吉じゃない」

 羨ましそうに2人の手元を見つめる。

「なんて書いてるの?」

「失せ物、しばらくすれば見つかる」

「なんでそこ言うのよ」

「や、なんとなくこの項目って不思議と先に目が行かない?」

「そんなとこはいいから恋愛のとこ見せなさい」

 茜は苛ついて時弥の手からおみくじを奪い取った。

「……」

 内容を読み時弥と杜斗を交互に見やる。

「やっぱり運命の相手ね」

「言うと思ったよ」

 返されるおみくじをげんなりした表情で受け取った。

 おみくじに書かれていた恋愛運は──『すぐ近くにいる。逃がしてはならない』

 時弥は薄笑いを浮かべて心の中で涙を流す。しかし他の項目はとても良い事が書かれているので持ち帰る事にした。

「……」

 それを見ていた杜斗の顔が険しい。

「え、なに?」

「まだサイフに入れてるのか」

「あ……買うタイミング逸しちゃって」

 サイフにチラリと見えた自衛隊員の証明書は大半の者が専用パスケースを購入しそこに入れている。

 杜斗もちゃんとパスケースに入れて持ち歩いていた。

「!」

 苦笑いを浮かべて頭をポリポリとかく時弥の視界に、木に向かう姉の姿が映る。

「中身が気に入らなかったの?」

「そうよ」

 木に結びつけ再びおみくじを引きに行った。

「何度でも引いて良いものなのか?」

「うん。自分が良いと思うまでやっていいものなんだってさ」

 持ち帰るおみくじは時々、取り出して中身を読み返すことが良いとされている。そうする事で注意や気を引き締める効果があるのだそうな。

 最近では、おみくじ帳なるものもあり。記念にと集める人も多いらしい。

「ん、まあこれでいいわ」

 三回目でようやく納得したおみくじが引けたらしい。時弥たちは親への土産としてベビーカステラを買い杜斗と別れた。

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