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9  演習訓練のお誘い

アウリス様と契約魔法で結ばれてからさらに数週間が経った。

 私と感情を共有することにもなれたのかアウリス様は煩いことを言ってくることは少なくなっている。

 私の仕事もマリア姫様と魔法騎士のを半分にしてで行き来している事が多くなった。

 魔法騎士の詰め所にも慣れたもので、それぞれにお茶を入れて配る余裕すら出てきた。

 珍しく書類整理をしている騎士様たちにお茶を配って歩く。


「ミユール嬢は休日何して過ごしているの?寮に住んでいるんでしょ?」


 フランシス様は報告書を書くのに飽きたのか両手をあげて伸びをしながら聞いてきた。


「掃除とか、簡単な縫い物とかですかねぇ。あとは小さなキッチンがついているんでジャム作ったりしますよ」


「へぇ、おしゃれだね」


「実家が田舎なんで、山や畑で採れた果物を加工するのが当たり前なんですよ。それをお茶に入れて飲んだり、クッキーにつけて食べたりしています」


 忙しくて最近手紙を出していないけれど、両親は元気だろうか。

 最後にやり取りしたのは半年前だ。

 お父様がぎっくり腰になったという手紙だったことを思い出した。

 数年会っていない両親が年老いてしまったと妙に悲しくなってくる。


「……なぜこの会話で落ち込むのかが理解ができない」


 フランシス様の隣の席でアウリス様が手を止めて私を見つめた。

 表情は無いが私の感情が伝わってしまったようだ。


「両親が元気かなと心配になったんです。お父様がぎっくり腰になったらしいんですが、治ったかなって」


 私が言うとアウリス様は肩をすくめた。


「手紙を書けばいいだろう」

「まぁ、そうですよね。忙しくて忘れていました。なんだか両親が年取ったんだなと思うと悲しくなったんです」


 両親は年老いて、兄も結婚をしてお嫁さんと実家に住んで家を継ぐべく準備をしている。

 そんな中で私だけ人生が動いていない悲しさも感じて悲しくなってくる。

 アウリス様はため息をついて頬杖をつきながら私を見つめる。

 その仕草が妙に色っぽくてどきりとする。


「何を心配しているのか知らんが、悲しんでいても状況は変わらないだろう」


 私の悲しみが伝わったのかアウリス様らしくない発言をした。

 もしかしたら彼なりに励ましてくれているのかもしれない。


「アウリスが優しい言葉をかけるなんて。俺は嬉しくて涙が出るねぇ」


 茶化すように言うフランシス様にアウリス様はうんざりした様子だ。


「両親が歳をとったと言う理由だけでこれだけ悲しむ女が面倒なだけだ。早く契約魔法を解除したい……」


 毎日のように契約魔法を解除する魔法を研究しているアウリス様だがまだ判明しない。

 天才と言われた彼でもできない事があるのだ。

 意外と私を気遣ってくれる事が多くなった。

 私の感情が直接彼の不快感になるからだろうが、それでも気遣ってくれるのは嬉しいことだ。


「実家には帰らないの?」


 気軽に聞いてくるフランシス様に私は軽く首を傾げる。


「結婚しないのかと色々聞かれて気分が落ち込むので帰りたくないんですよね。兄は結婚して早々子供作っていますし」


 甥っ子が生まれた後に帰省した時の自分の家じゃない感を思い出す。

 生まれた家なのだが、私のいる空間がないのだ。

 変わらず私に接してくれたのは幼い頃に飼い始めた犬ぐらいだ。

 雑種だが昔と変わらず私に懐いてくれていた。

 

 アウリス様はため息をついた。


「なるほど、お前は居づらいから実家を避けているのか」


「ど、どうしてわかるんですか?思考を読みました?」


 驚く私にアウリス様は鼻で笑う。


「だいたい想像がつく。それでこの落ち込みか……」


 自分の胸を痛そうに触ってまたため息をついた。


「なぜこんなに他人の気持ちを感じないといけないんだ」


「それはアウリスが面白半分で禁忌の魔法を改造したからだよ」


 フランシス様に言われてアウリス様は珍しく項垂れている。

 私と感情を共有している事がよっぽどいやらしい。


「そういえば、禁忌の魔法を使ったのにアウリス様はお咎めないんですか?」


 会議にかけるらしいことを聞いていたがアウリス様は普通に仕事をしている。

 疑問に思う私にフランシス様はニヤッと笑った。


「問題になっているが、アウリスの様子を見てこれが罰になるってことで終了。解除の魔法を早く生み出せってことになっているんだよ」


「なるほど。私も感情をなるべく出さないように生きるのが不便なので早くお願いしますね」


 微笑む私にアウリス様は舌打ちをした。


 可愛くない人だ。

 そう思いながらも、アウリス様が本気で私を嫌がっていない事がわかり胸の奥が温かくなった。


「今日は一日中書類の整理だけれど、明日は演習かー」


 首を回しながらフランス様が呟くので私は壁に貼られている予定表に視線を移した。

 確かに明日の日付には全体合同演習と書いてある。


「何をするんですか?」


 普通の騎士なら剣の訓練だろうが魔法騎士となると想像がつかない。

 フランシスは面倒くさそうに首を回しながら答えてくれる。


「何って、普通に剣と魔法を使って戦闘訓練だよ。ミユール嬢も見学すれば。見学は自由だよ」


 魔法と剣の訓練なんて見た事がない。

 剣の訓練も見た事がないが魔法が混じると凄いに違いない。

 ワクワクしながら私は頷いた。


「絶対に観に行きます」


 私がワクワクしていることが伝わったのだろう、アウリス様はため息をついて自分の胸を撫でてため息をついていた。

 


 

 

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