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10 演習訓練当日

翌日、演習場には魔法騎士と見学の数人の女性たちが集まっていた。

 円形型の広場には客席も用意されており、女性たちに目立たないように私は後方で見学をすることにした。

 気配を消してひっそりと座った。


「あら、アウリス様を応援しないの?」


 揶揄うように言ってくるのはいつの間にかやってきたソフィーだ。

 当たり前のように私の隣にソフィーは座ってニヤッと笑う。


「誰に聞いたの?私はただ魔法騎士がどうやって戦うのかなって興味があるから見にきているのよ」


 私がいうとソフィーは頷く。


「わかるわ、私は見たことあるけれどね。魔法なんて城に勤めていないと見学できないものね」

「で、誰に聞いたのよ」


 再度私が聞くとソフィーは演習場の中にいるフランシス様を指差した。


「マリア姫に書類を届けにきたフランシス様が明日の演習にミユールが来てアウリス様を応援するって教えてもらったのよ」

「マリア姫に面白いことがあったら報告しろってことね。何もないわよ、ただ見に来ているだけだし」


 呆れている私にソフィーは肩をすくめた。


「まぁー仕方ないわね。マリア姫は最近お忙しいの。人を揶揄うネタが欲しいのよ」


「あの人の性格も困ったものだわね」


 ため息をついていると演習場で準備をしているアウリス様と目があった。

 私は軽く頷いて手を上げる。

 その様子を見ていたソフィーがニヤニヤと笑ってくる。


「あらぁ、仲がいいじゃない」

「違うわよ。私の感情がぶれないか心配しているのよ。あれは完璧に迷惑をかけるなという顔をしていたわ」


 心を落ち着ける用に心がけようとしている私をちらりとソフィーみた。


「まぁ、それはあるわね。あんたが驚いたりしたらアウリス様も同じように驚いた感情になるわけでしょう?そりゃ模擬戦の時にそんなことをされたら怪我しかねないわね」


 怪我という言葉を聞いてそういうこともあるのかと眉を顰めた。


「私、そこまで考えていなかったわ」


 正直にいうとソフィーがなぜかため息をついた。


「アウリス様がピリついている理由がわるわね。ミユールが虫に驚いてアウリス様を殺しかねないわ」

「そんなことしないわよ」


 そうこうしているうちに準備が整ったのかアウリス様とフランシス様が演習場の中央に向き合って立っている。

初めて魔法が見れるのかとドキドキしているとアウリス様に睨まれた。


「ミユール、あんた今すごい期待しているの?」


 ソフィーに白い目で見られて私は頷きなら胸に手を置く。

 ドキドキしている胸をおさえながら気持ちを整えた。


「だって魔法が見られるのよ」

「私にもわかるわよ。アウリス様が不機嫌なの」


 ソフィーも身を乗り出して演習の様子を見守っている。

 気持ちを落ち着けながらアウリス様とフランシス様はお互い礼をするとゆっくりと剣を抜いた。


 一瞬お互い睨み合ったあと最初に動いたのはフランシス様だ。

 フランシス様が振り下ろした剣をアウリス様はやすやすと受け止める。

 ギィンという剣が触れ合う音が響いた。


 素早くフランシス様はアウリス様から離れると、左手で空中に何かを描く。

 ブゥンという空気が響く音が聞こえてフランシス様の左手に青白い光が現れアウリス様に投げられた。


「あれが魔法?」


 光の玉は一直線にアウリス様に向かう。

 アウリス様は剣で光の玉を叩き落とすと、私を睨みつつけた。


「あんた、今興奮して叫んでいたわよ」


 ソフィーの冷めた声に自分が興奮していたことに気づいてぎゅっと唇を閉じた。


「だって光の玉が出れば誰だって驚くわよ」


 感情的にならないようにしている私にソフィーはニヤリと笑う。


「剣も光らせることができるのよ。仕組みはわからないけれどね」


「すごーい。見たいわね」


「勝者、アウリス・オレイウ!」


 話に夢中になっている間に、アウリス様とフランシス様の模擬戦の決着がついていた。

 いいところを見逃してしまったようだ。


「どうやって勝ったのか見逃したわ」


「すごかったわよ。アウリス様の剣が光っていたからね」


 含みを持たせたソフィーの言い方になぜ見逃してしまったのかという後悔がよし寄せる。

 光る剣など2度と見られないかもしれない。

 後悔をしている私の後ろで、いつの間にかやってきたアウリス様が声をかけてくる。


「叫んだり、落ち込んだりと普通に見てられないのか?」


 明らかに不機嫌なアウリス様の声色に恐る恐る振り返る。

 私を見下ろしている青い瞳と目があって背筋が思わずゾッとする。


「す、すいません。ご迷惑をおかけしました」

「今度は俺を恐れるのか。怒っているのが伝わって何よりだ。だが、なぜ俺まで嫌な気分にならないといけなんだ」


 イライラした様子のアウリス様の肩をフランシス様が叩いた。


「アウリスの機嫌が悪いのが見てわかるって新鮮だな。いつも無表情だから」


 ふふッと笑うフランシス様の手を払いのけてアウリス様は睨みつけた。


「他人の感情を体感してみろ。誰だってこうなる」


「自分の責任だろ」


 フランシス様に言われて流石のアウリス様も黙って大きなため息をひとつついた。


「なんか、すいませんでした」


 私が謝ると、フランシス様は爽やかに笑ってくれる。


「気にする必要ないよ。ミユール嬢だって被害者だしね」


「確かにそうですね」


 アウリス様は文句を言おうと口を開きかけて私の腕を引っ張った。

 肩がもげるほど引っ張られてアウリス様に抱き寄せられた。

 頭を叩かれるのかと身構えているとパンと言う乾いた音が響いて振動が体に伝わってくる。


「な、なんですか?」


 何が起こったのか分からず恐怖のあまりアウリス様の胸に抱きついてキョロキョロとする。

 演習場にいた全員に見られて訳がわからなくなっている私の背中をアウリス様が強く叩いた。


「落ち着け。攻撃魔法が飛んできただけだ」


 不安な私の感情が伝わっているのだろうアウリス様は不快な顔をしている。


「ヒィ、すいません。驚いたのはアウリス様に頭をカチ割れるかと思ったんです。まさか助けてくれるなんて思わず……」


 パニックになってペラペラと余計なことを話す私にアウリス様は呆れたのか文句を言おうと開きかけた口を閉じた。

 両端ではソフィーとフランシス様が大笑いをしている。


「どうやったら頭をカチ割られると思うの?流石のアウリスもそんなことしないよ」

「アウリス様に抱きついて言う言葉じゃないわよ」


 大笑いをしている2人にアウリス様は呆れている。

 呆れながらも審判をしていた騎士団長に無事なことを伝え試合が再開された。


 そうかアウリス様は私を守ってくれたのか。

 じんわりと心の奥が暖かくなってアウリス様に抱きつきながら彼を見上げる。

 

「庇ってくれてありがとうございます」


 じんわりと温かい気持ちになりながら感謝を伝えるとアウリス様は呆れた様子だったが青い瞳は少しだけ暖かさを感じた。


 

 


 

 

 

 

 

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