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朝方の新月

作者: おりみみ
掲載日:2026/05/07

 時に、朝の青空に浮かぶ月を見た事があるだろうか?


 眠い目を擦ってあくびして、こんがり焼いた食パンを食べて、そんな変わりない朝に。


 そっと青空に寄り添うような白い月。


 ふとした時に発見した小さな幸福感は、何気ない朝に彩りを与えてくれる。


 古今和歌集に出てくる『有明の月』は夜明けの空に残された月を意味し、この朝方の月にあたる。


 古来から親しまれて来た白き月は、下弦の月、明けの三日月として風情を楽しむことができるのだ。


 しかしながら、私は朝方の新月が好きだ。


 当然、新月は月にとっての夜、私達には見えやしない。

 そもそも、新月は太陽と地球に挟まれる形で昼間に居座っている為、朝方の新月なんてものは存在しない。


 否、私たちに見えていないだけで、存在はしている。


 決して届くことの無い光を放ち、月の暗黒面でさえも私たちに向けることも無く、影の立役者として怠けずに居るのだ。


 その姿はまるで、私たち人間の様ではないかと、私は一人感動してしまった。


 決して届くことの無い努力に苛まれ、粉骨砕身したボロ雑巾に手を差し伸べる以前に、誰の視野の片隅にすら引っかからない。

 何しろ観察者でさえも社会に溶け込む月なのだから。


 しかし新月はいずれ満ちる。

 月の満ち欠けによって、夕暮れ時の美しい三日月、半熟ながらも存在感を放つ上弦の月、そして夜という名の劇場にて主役を独占する満月となる。


 私たち新月、さながら社会の新月が居ることを頭の片隅にでも置いて貰いたい。


 救いの手を差し伸べることが出来なくとも、新月が見えない光で輝いているということを。


 そう、君だけじゃない。

 身を削る新月の君が、いずれ願いを叶えし三日月になる君が、表裏一体の満月でもある君が、照りつける朝日に負けそうな時に、天を仰いでみて欲しい。


 存在しない朝方の新月が、確かにそこに存在しているだろう?

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