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「死んで国宝を返せ」と求められた少女。生き延びるため、国をひれ伏させる英雄を目指す  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第6話 忍び寄る危機

翌日。 ぱっちりと目を覚ましたクルチアは、布団の中で仰臥ぎょうがしたまま声を出す。


「ママ、熊の焼き肉をお願い」


ルザはエプロンで手を拭きながらクルチアの寝室に入ってきた。


「もう無いわよ。 昨日の焼き肉パーティーで、すっかり食べ尽くされちゃったの」


「ええっ! 私あんまり食べてない」


「皆そりゃあもう大喜びだったわよ。 クルチアちゃんのお陰で久しぶりに熊肉を食べれたって」


「もー」


そこにシンジがやって来た。 両手で籠を抱えている。


「クルチア」


「なに?」


「篭手が増えたぞ」


「増えた?」 どういうこと?


「これだ」


シンジは抱えていた籠をクルチアの布団の隣に置いた。 彼は昨日、熊の血などで汚れたノシメハナの篭手を洗って、この籠に入れていた。


クルチアは上半身を布団から起こし、籠の中を覗き込んだ。


「ホントだ増えてる!」


籠の中には4つの品が入っている。 でも待って、少し変。 増えた2つは篭手に見えない。 クルチアは篭手じゃないやつを籠から取り出し、正体を確認する。 それはブーツだった。


「これって、ブーツよね?」


篭手と同じ漆黒の竜鱗に覆われている。 靴底まで竜鱗だ。 他の部分と違って、横長で幅広い。 歩行に適する形状の鱗である。


「そうだ、ブーツだ。 篭手からブーツが生まれたんだ」


クルチアはシンジの意見を受け入れた。 篭手からブーツが生まれるとは思えないが、他に考えようもなかった。


          ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


ブーツが生まれたことで、イナギリ・クルチアの身に危険が迫ろうとしていた。 イナギリ家の床下に潜んでいた忍者が、"ブーツ誕生す!" の報を当局に持ち帰ったのだ。 ノシメハナ王国はノシメハナの篭手の行方を追跡調査すべく、イナギリ家の床下や屋根裏に忍者を送り込んでいた。


             ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


ブーツの誕生を知ったノシメハナ王国は、アーティファクトの専門家に軍務省の担当者を派遣した。


「先生、アーティファクトの篭手からブーツが生まれることなどあるのでしょうか?」


専門家はしばらく考え込んだ後、ポツリと回答する。


「...ブーツは復活したのでしょうな。 生まれたのではなく」


「復活? 生まれたのとどう違うのでしょう?」


「ご存知のように、多くのアーティファクトには自己修復作用があります。 傷ついても壊れても時間経過により自然と修復されます。 本件のブーツは新たに生まれたのではなく、かつて存在していたブーツが復活したのでしょう。 それ以外に考えようがありません」


当局の担当者は、篭手とブーツの関係で理解に苦しむ。


「ですがしかし、そうするとブーツが篭手の一部...?」


復活の理由を自己修復に求めるなら、ブーツと篭手が物理的につながっていなくてはならない。 しかしブーツが篭手の一部だと? まったくもって理解できない。


専門家はゆっくりと首を横に振る。 担当者の理解ががまるで見当違いな方向に向かっていると言わんばかりだ。


「篭手もブーツも全身鎧の一部であったと推察されます」


ズバリと回答を伝えられても、まだ担当者は理解が追いつかない。


「全身鎧? それはどういう―?」


「私の考えはこうです。 遥か昔、"ノシメハナの全身鎧" とでも言うべきアーティファクトが存在した。 その所有者が何らかの事情で大岩に両手を突っ込んだ状態で息絶えた。 何百年も放置されるうちに全身鎧は朽ち果てた。 所有者がいない道具は ―特にアーティファクトは― 朽ちやすいですからな。 しかし篭手だけが大岩の中に残った。 これがノシメハナの篭手です。 そしてノシメハナの篭手に新たな所有者が出現した今、全身鎧が復活しようとしている。 その手始めがブーツというわけです。 ま、あくまでも仮説ですが」


          ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


軍務省から報告を受けて、さしもの国王ノシメハナ・コテツも驚いた。


「ノシメハナの篭手が全身鎧だったと申すか!」


コテツは50代の男性。 端正で引き締まった顔をしている。 頭に載る簡素な王冠と上質だが簡素な衣服に、彼の実利志向が表れている。


「は、あくまでも可能性ですが」


そう答えたのは軍務大臣マスハナ・アキラ。 ノシメハナ王国で最も有力な大貴族の1人である。 特徴は、白くてタワシのようにゴワゴワと長い眉毛と、シワだらけの厳つい顔。 タフで攻撃的な性格が外見に表れている。


国王コテツは考え深い表情になる。


「ノシメハナの篭手が全身鎧に化けるとなると話が変わってくる。 イナギリ・クルチアだったか、村娘が持っていて良い代物ではない。 没収せねばなるまいな」


これまでノシメハナ王国はノシメハナの篭手を惰性的に放置していた。 アーティファクトであると確定すらしていなかったためだ。 その気になって探せば、王族や有力な家系の師弟に篭手の適合者がいるかもしれない。


「同感ですが、そう簡単にもいきません」


「何故だ?」


「専門家の話では、生き物に由来する素材で作られたアーティファクトは、いっときに1人の所有者しか認めません。 かの篭手があの娘を所有者と認めた以上、あの娘が死ぬまであの娘以外には使えないのです」


コテツは決まり悪げにかぶりを振る。


「あの娘をどうするかは、ひとまず保留しよう。 まず、ノシメハナの篭手が本当に全身鎧だったかを確認するのだ。 国中の文献と伝承を調べさせよ」

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