表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「死んで国宝を返せ」と求められた少女。生き延びるため、国をひれ伏させる英雄を目指す  作者: 好きな言葉はタナボタ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/12

第2話 住所・氏名・年齢・職業を記入しなさい

衛兵は、竜鱗に包まれるクルチアの両手に強い視線を注ぐ。


「君、篭手を岩から引き抜いたのか?」


「そーなんですっ!」


クルチアは少し不安になり確認を求める。


「私が(もら)っちゃっていいんですよね?」


衛兵は事務的に応じる。


「手続きがある。 一緒に来てもらおう」


手続き? ちょっぴり不安になりながら、クルチアは衛兵の後に続いて部屋を出た。


     ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


クルチアは城の奥にある事務室に連れて行かれた。 衛兵は事務室にいた事務員に告げる。


篭手(こて)の適合者が現れた。 連絡を頼む」


事務員は驚いた顔になったが、速やかに事務室を出ていった。


どこに何を連絡するの? 疑問に思うクルチアを衛兵は椅子に座らせ、書類の記入を求める。


「ここに住所・氏名・年齢・職業を記入しなさい」


「えー、どうしてですか?」


身元を明かすのを躊躇うクルチアを衛兵は面倒くさそうに促した。


「いいから早く書いて」


        ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


「書けました」


クルチアが告げると、衛兵は用紙を手に取り記入事項を確認し始めた。


「名前はイナギリ・クルチア。 住所はノシメハナ郡カスミ村... 君は高校生なのか?」


「はい」


「女子高生が篭手を何に使うんだね?」


「えっと、鑑賞っていうか...」


「カンショウ?」


「眺めて楽しむことです」


「要するに使わないんだな?」


「いえ使わないのではなく鑑賞します。 装備したりも...」


「戦闘には使わないんだろう?」


「まあ、そうですね」


拳闘の試合や練習にも使えない。 このように硬い物で殴ると相手が怪我をする。


        ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


そのとき、誰かが事務室に入ってきた。


「やあ君かい? 篭手を引き抜いたという女の子は」


クルチアは声の方を振り向いた。 衛兵とも事務員とも違う、良い身なりの男性だ。 年齢は20代半ば。 黒髪、黒目。 頬に余分な肉が無いスッキリした顔立ち。 頭髪は小ざっぱりと切り揃えられ、清潔感に溢れている。


衛兵が驚きの声を上げる。


「殿下!」


察するに、この男性はノシメハナ王国の王子らしい。


「その篭手を私にも見せてくれないか?」


クルチアは渋々とノシメハナの篭手を差し出し、王子はそれを受け取った。


「これがノシメハナの篭手か」


そして試着しようとしたが、篭手に手が入らなかった。


「やはりダメだな」


王子は苦笑しながらクルチアに篭手を返し、クルチアの個人情報が書かれた用紙をテーブルの上から取り上げた。


「イナギリ・クルチアか。 良い名前だね」


「どおも」


「この篭手をどうするつもりだい?」


「...()でる予定です」


ちょっと言い方を変えてみた。 実際、"鑑賞する" より "愛でる" のほうがしっくりくる。 撫でたり抱きしめたり頬ずりしたり、もちろん装着したりもするのだから。


意外にも王子はクルチアの意向に理解を示した。


「あるいは、それがこの篭手の望みかもしれないな。 だから君を所有者として認めた」


「じゃあ、この篭手を私が(もら)っても...」


「無論だ。 篭手は君を選んだんだ。 それにそのサイズじゃ、もう大人の男の手は入らない」


クルチアは感激のあまり篭手をギュッと抱きしめる。 篭手の爪が、クルチアの白い喉をチクリと刺す。


「ありがとうございます!」


「だが願わくば、この篭手を戦闘に使って欲しい。 もしも強力なアーティファクトなら、愛でるだけでは国家的な損失だからね」


そう言い残して、王子は事務室を出ていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ