表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/38

26話 貴族の友人

 食事を終えて、再度交流する部屋に行くと、ほとんど人はいなかった。

 少し早かったみたいだ。

 しかし、僕のお目当ての相手がいる。

 男爵子息のギジェルモだ。


「こんにちは、ギジェルモ」

「ベックス様、ギジェルモ・バハモンデです」

「さっき自己紹介したからいいよ。それにギジェルモの方が年上じゃないか。様付けは親のいる所だけにして、ベックスと呼んでよ」

「いいのですか?」


 周囲にいる貴族子女たちを見て、ギジェルモは場を気にしている。

 僕は一応、この部屋に置いては2番目に爵位が高い子供だ。

 爵位か、幼いことを理由にすれば問題ない。


「もちろん。それより聞きたいことがあるんだ?」

「はい」

「言いづらいなら小声で教えて欲しいんだけど、いつもどういう食事してる?」

「しょ、食事ですか⁉」

「うん、領でどのくらい食事が違うのか知りたくてね」

「メイドに聞きながらでもいいですか?」

「もちろん!」


 他の子たちが来る前に、僕たちは部屋の端に移動して話を始めた。

 僕とダニエラ、ギジェルモとメイドで領の食事話をしていく。

 聞くと、ギジェルモの男爵領は大麦をたくさん食べるという。

 自生した場所を広げて農地としたらしい。


 森から獣を、川で魚を、畑から大麦をというのが男爵領の食事だという。

 他にも畑では芋や豆を育てており、貴族だが手伝いをするらしい。

 僕には許してくれないのに、男爵子息は手伝うようだ。


「ダニエラ、もしかしてうちでも大麦作ってるの?」

「はい。規模が大きいので大麦を売って、ブスタマンテ伯爵領と取引して小麦を買います」

「そうなんだ」

「私もベックス、に質問していいですか?」

「うん」


 ギジェルモは少し悩んだのか顔を伏せる。

 暗い金髪が目を覆い隠して、サラサラと揺れ動く。

 貴族は髪質がいいな。僕もだが。


「騎士について教えて欲しいです」

「騎士のなに?」

「なんでもです」


 あまりにも抽象的過ぎる質問に何を答えればいいのか少し悩む。

 ギジェルモの目の輝きがすごいから、将来は騎士くらい動けるようになりたいのかな。


「ギジェルモの領の騎士はどういう武術流派なの?」

「ムロバンデロ流です」

「うちはそれとエミサリ流? だって」

「そうなんですか。男爵領では聞きません」

「そうなんだ、もしかすると他のことでも領によって違いがあるかもね」


 僕が答えると、今度は騎士の話から領による違いを探る話し合いになっていく。

 例えば、害獣は双口熊が多いらしい。

 うちはよく知らないけど畑を荒らすのはソンブロスクだ。


 魔術にも違いがあって、攻撃に使うのは水の魔術らしいけど、うちは土や岩だ。

 その後、男爵領の街の話を聞いていると武器の店、刻印魔術の店の話になった。


「えーと、ベックス。その腕輪って魔術具ですか?」

「そうだよ」

「見せてもらってもいいですか?」

「もちろん。発動させちゃダメだよ」

「はい。あ、失礼します」


 魔力を流すだけでは使えないが、一応は注意しておかないと、もしもがあるかもしれない。

 腕輪を外してギジェルモに渡すと、慎重に受け取って隈なく見始める。

 じっくりと見過ぎて、動きが少し変態じみていた。

 ギジェルモは常識ある風を装った変人になりそうだ。


「これは風の魔術具で、大きくする? 一体、どういった魔術具ですか?」

「これを発動して声を出すと、その声が大きくなって遠くまで届く魔術具だよ」


 刻印を読み取れるほどの勉強をしているんだな。

 受け取りながら答えると、ギジェルモは首を傾げたままだ。

 釈然としない顔のまま、疑問を教えてくれた。


「領では見たことありません。どういう時に使う魔術具ですか?」

「もしもの時、周囲に助けを求める魔術具だよ」

「助け、ですか?」

「そう。考えたことない?」

「はい、近くには護衛がいますから」


 心配性が足らない6歳児め。

 5歳児の僕の中には何歳だったかも分からない心配性がいるんだ。

 護衛を過信してはならない。


「例えば、僕がギジェルモに攻撃したら助けてくれるの?」

「いえ、今はマイテが対応します」

「マイテはギジェルモを守れるだけ戦えるの?」


 僕が小首を傾げながら、ギジェルモのメイドに顔を向ける。

 雰囲気が柔らかいダニエラとは違って、キリっとしている茶髪のマイテは質問に首を横に振った。


「いえ、ベックス・ムリーヨ様。私は戦えません」

「そうだよね。だからギジェルモもいつ襲われてもいいように準備しておくといいよ」

「怖いこと言わないでください」

「そうだよ、ベックス。公爵屋敷でもしもを言わないで欲しいな」

「これは失礼しました、ゴドフレド様」


 いつの間にか来ていたゴドフレド様が、僕の背後から肩に手を置いた。

 確かに言うべきではなかったが、もしもに備えるのは僕の、日本の記憶を、ゲーム世界の記憶を得た僕の使命のようなものだから仕方ない。


「いいよ。それより魔術具の腕輪を見せてもらえるか?」

「はい。魔術は発動しないでください」

「分かったよ」


 腕輪を外してゴドフレド様に渡すと、ギジェルモ程ではないがじっくりと見ていく。

 満足したのか笑いながら、腕輪を返してくれた。


「ベックスとギジェルモは魔術具が好きなのか?」

「はい」

「は、はい!」


 僕はそこまで好きというわけでは無いが、ゴドフレド様の気遣いだろうと返事をしておいた。

 すると、僕に続いてギジェルモはキラキラと目を輝かせて、緊張しながら返事をしている。

 このギジェルモを知られてマイテはどう思っているのかと、見ると口の端が笑っている。うれしそうだ。


「私が魔術具を作ってもらっている店があるんだけど、いまから見に行ってみるか?」

「はい、ぜひ!」

「はい。お願いします」


 そうして、僕とギジェルモはゴドフレド様の気遣いによって、公爵領の魔術具店に向かうこととなった。

 他所の領で魔術具の品質は変わるのか、知りたかったからありがたい。

 まず間違いなく王都に近い方が流通は強いから、品質が高いだろう。


 しかも公爵家の子息が魔術具を作ってもらうとなると、装飾も凝っていそうだ。

 ギジェルモのように僕もワクワクしてきたぞ。

 ゴドフレド様に準備が出来れば、屋敷の外に出ているように言われた僕は交流部屋から出て、準備をした。


 秋になったとはいえ、辺境伯領よりは暖かい公爵領だからベニートからもらったケープを羽織って外に出る。

 しばらく待っていると、僕と同じように護衛とメイドを連れたギジェルモが毛皮のマントを羽織って出てきた。


「暑くないのギジェルモ?」

「はい、ベックスは寒くないですか?」

「うん。他の子たちは来るの?」

「いえ、私とベックスとゴドフレド様です」

「そうなんだ」

「誘われないと行けませんから」


 神妙な顔をしてギジェルモが言っているが、僕はそんな礼儀を習ってない。

 恐らくは一歩引いて謙虚であれという話だろう。

 本当に行きたいなら、頼み込む、もしくは後から向かうから、他の子たちは公爵家子息といる面倒を考えたのだろう。幼い辺境伯子息もいるし。


「そんなのあるんだ」

「家ではそうだと聞きました。父がそれで失敗したことがあるようで」

「ああ」


 ギジェルモの言葉からなんとなく想像が出来た。

 意を決して私も、と出たら行く人たちが冷たい目で見てくる。あの感じ。

 あれ? 過去の僕も似たような経験をしているのか。

 大多数からお前は呼んでいないと、目で語り掛けてくる、あれだ。


「魔術具店には歩いていくのでしょうか?」

「どうだろう、護衛とメイドは連れて行けるのかな?」


 僕は全面的に公爵家の護衛を信用していない。

 初めて外に出て、知らない場所が怖いのもあるだろうが、辺境伯領でいるよりも襲撃受けやすい状況だからだ。

 公爵家の護衛たちはゴドフレド様が最優先だし、爵位としても優先したことに文句を言えないだろうからというのも理由だ。


 話をしていると屋敷の正面にある門から馬車が入ってきた。

 4本足で普通の馬に見える。

 引いている馬車は箱型だけど軽そうだ。辺境伯家の馬車が少しおかしいんだろうな。


「ふたりとも馬車で向かうよ」

「護衛とメイドはどうしますか?」

「護衛はうちが用意するから、メイドだけ連れて来て」

「はい」

「はい、分かりました」


 仕方ない。言われてしまっては従うほかない。

 ペドロを帰らせて、ダニエラと馬車に乗り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ