17話 恐ろしい夢
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酒と豆の祭りを終え、屋敷に戻って眠り始めると久しぶりに夢を見た。
どうやら初めて見た夢から、時を遡っているようだ。
前回は恐らくゲームが始まる前、その前はプレイヤーとの戦闘前だった。
今回はさらに前、恐らく襲撃後だ。
何歳か分からないが、目線が同じくらいだから年は近いのかな?
――部屋で放心状態になり、動かない足を見つめる僕。
右足だけが動かないようで、傍には杖が立て掛けてある。
『ベックス様』
『なに、ダニエラ?』
返事をしながら見ると、ずいぶんとげっそりしたダニエラがいた。
僕の知るダニエラとはあまりにも違っているが、何があったのか。
『そろそろ魔術の勉強をしましょう』
『いや。外に行きたい』
言いながら杖で体を支えて立ち上がる。
しかし、足の痛みですぐ椅子に座り込んだ。
動かない足、痛みに耐えられない自分、ふつふつと怒りが湧き上がってくる。
夢を見ている僕もそれに影響され、イライラが止まらない。
『何で! 何で、動かないのッ⁉』
夢のベックスが苛立ちを吐き出すと、今度は胸を締め付けられるような苦しさに襲われる。
歩けなくなった自分が苦しい、怒りを吐き出す幼さが苦しい、喚くしかできない無力さが恨めしい。
そうして、また怒りにのまれていく。
『ベックス様! 少しずつ……少しずつ、歩く練習をしましょう』
今にも泣きだしそうなダニエラの顔を見ると、怒りがスッと消えた。
やつれたダニエラを見ると、夢のベックスでも気を遣えるようだ。
ゲーム世界の夢を見る度に、襲撃で怪我した場合を見せつけられて怖くなる。
『ダニエラ、手』
『はい』
ベックスの正面に立って両手を差し出すダニエラ。
手を掴んで立ち上がると、少しだけ歩くが痛みに耐えられず寄りかかった。
ダニエラに抱えられ、椅子に戻される。
今度は怒りや悲しみが湧き上がることもない。
ただ、むなしい。
感情の乱高下で夢を見ている僕は辛い。
『いつになったら痛くなくなるんだろう?』
『当主様が西の大陸から薬を取り寄せています。あと少しです』
西の大陸?
ゲームでは何人かの商人が、そこ出身だったっけ。
『痛い』
『休みますか?』
『うん……そうだ! 体を治す魔術だ!』
『はい? 魔術ですか?』
ベックスの言う魔術に心当たりがある。
ダニエラとルイサに掛けた魔術。
他にも多くの犠牲者がいるだろう、あの魔術だ。
『体を治す魔術を作る!』
『なるほど、そうですね! 一緒に頑張りましょう!』
『うん!』
とても前向きなのに、恐らくは悪い結果しか出ない。
人の命を使って、自分を生きながらえさせるような。
夢はぼやけ始め、扉が静かに閉まる音で僕は目を覚ました――。




