13話 死にゲー世界のプロローグ①
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ザラグア王国の王都ダディーム。
最も栄える王都、その端にある暗い酒場の別室で男3人は頬杖を突きながら、黒いローブを着た依頼主から話を聞いていた。
今までに出たのは大雑把な内容と金額だけだ。
「俺は……受けたい」
「馬鹿、死ぬつもりか!」
「聞いてない今しかやめられないんだぞ。今はやめよう」
切り終えたばかりの茶髪をざらざらと撫でて、依頼を受けたいオラシオはテーブルの杯を手に取った。
木製の杯の中、琥珀色の液体は揺れていた。
「オラシオさん、依頼主はこちらを差し上げても良いと言っています」
すべてを隠した黒ローブは垂れた袖から、手のひら大の草を落とした。
雑草のようなそれを見た途端、オラシオは杯を置いた。
険しい目つきは机に置かれた草に向けられている。
「おい! それは、本物か?」
「はい。依頼主はいくつか持っておりますから、効かなければ別のものを渡しますよ」
「そうか。俺は受けるぞ。イグナス、ウーゴ」
オラシオは腕を組むと、両隣にいる2人に目を向けた。
2人はその変わりように驚きながらも、分かっていたというように頷く。
「はぁ。それが目的だったわけだからな。いいぞ」
「仕方ない。俺たちは金、お前はそれ。問題ない」
3人は頷きあい、黒ローブにそろって視線を向けた。
「受ける」
鷹揚に頷いた黒ローブは草に続いて、袖からガラス瓶を取り出した。
曇りの少ないガラスで中に入った青い液体が誰の目にも見えた。
それに対して立ち上がって反応を示したのはオラシオだ。
「お、おい! それは!」
慌てて立ち上がったオラシオは杯の酒を溢した。
顔は怒りと苦しさの狭間で歪み、体は震えている。
「これは依頼に必要ですから、では詳しい話をしましょうか、お三方」
黒ローブの声は楽し気だが、拒否を許さない威圧感がある。
「必要ってのはどういうことだ?」
「依頼内容を聞いてから質問をお願いします」
黒ローブは垂れた袖を合わせて、依頼内容について話し始める。
落ち着きを与えるような低い声は、効果を発揮した。
立ち上がっていたオラシオは、警戒したまま椅子に戻って依頼を聞き終えた。
依頼の内容について考え込んでいた3人は、テーブルを叩く音で前を向く。
「さ、質問をどうぞ」
「質問か。箔付けの護衛と尻拭いをするわけだな」
「はい」
「で、相手はガキだ。俺たちは必要か?」
オラシオの疑問に仲間の2人も同意の頷きを見せた。
黒ローブも似たように頷いて、同意しているかのようだ。
「そのような場所ですから。貴族というものは」
「終わった後の逃げ道は?」
「確保しています。馬の用意も出来ます」
「はんっ。わかった。で、そいつがしくじればコイツを使えと」
「はい。依頼主としては状況的にそちらを使うことになるだろうと予想しています」
「場所が場所だからな。内通者の処理は?」
「問題ありません。顔を見られないようにしてくだされば」
不満そうに頭を振るオラシオたち3人だったが、机にゴトリと置かれた袋の音に動きを止めた。
小さな金属がぶつかって立てる音、今では3人共通の目的だ。
「こちら前金です。ご確認を」
「ああ」
硬貨をすべて数え終えると、オラシオは袋と草を自分たちの側に引き寄せた。
その様子を眺めて黒ローブは満足そうに頷くと、立ち上がった。
「移動の3日前には連絡します」
音もなく移動すると、黒ローブは部屋から出て行った。
その様子を見送った3人の視線は、金と草に向けられている。
オラシオが頭を振って気を取り直すと、杯を一息に飲み干した。
「祝杯はこれが終わってからだ。準備するぞ」




