表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

出会う

 この町にある唯一の大通りを歩いていると、見慣れない人が前から歩いてきた。

私の一つか二つ、上ぐらいだろうか?名前が出てこない。そんなことはあり得ない。

だって、この世界は私が作ったんだ。

この町の人物は全て頭の中に入っている。

けれど、いくら頭の中で検索してみても、出てこない。


 久しぶりの恐怖感が、シロを襲った。

シロの前までくると、男は目の前で立ち止まり声をかけた。


「ミサちゃん?」


 少し首を傾げながら、男はシロに問いかけた。

声がでてないシロに向かって、男はもう一度声をかける。


「どうしたの、ミサちゃーん?」


 右手をシロの顔の前で振ってみる。


「や、やめてください!」


 やっと声が出たと思ったら、突き刺すような鋭い声が出てしまった。


「あれ、ちがった?じゃあ名前、なに?」


 しかし、気にした様子もなく話す姿に、逆にシロの方が拍子抜けしてしまう。


「え…あ、シロ…」


 しどろもどろになりながらも名前を答える。


「シロ?…ん、分かった。じゃあ…僕はクロ」


 少し考えてからクロは答えた。

シロは馬鹿にされている気がしたのだろう。

鋭く、低めに問いかける。


「は?」


 問いかける、というより黙れ、と言っているのかもしれない。

続けてシロは言う。


「クロ?意味が分からないのですけど」


 だいぶ不機嫌になっている事が分かるはずなのだが、やはり気にした様子もなくクロは威圧的な質問に答える。


「君の真似をしてみただけだよ」

「なんなんですか?馬鹿にしてるんですか?」


 だめだ、頭に血が上ってしまっている。

自分自身への怒りは何度もあったが、他人への怒りを感じたのはいつぶりだろうか。

久しぶりで、この感情をどうしたらいいのか分からない。

全て投げ出したくなるほどの感情だ。

 当たり前だ。

何度も言っているがシロはこの町の神様だ。

神様が本気で怒りを覚えることなどない。

あったとしても、シロは感情に名前を付ける前に相手の記憶を消してしまっているのだ。

なら、クロも記憶を消せばいいと思うだろうが、何故かきかない。


 自分の思った通りにならない人間に、怒りよりも恐怖が上回った。

最初に会った時とは比べ物にならない程の恐怖感だ。

 クロは初めて表情を変えた。

しかしシロは、そんな表情の変化に気づけない程、混乱している。


 クロがゆっくりとシロに近づいてきた。

その行動さえもシロの恐怖を増幅させる。


―こわい…。こわい、こわい!


 次の瞬間、シロは消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ