プロローグ
最初のプロローグは斜め読みくらいで進めていただくと、読みやすいかと思います。
この世界には神様がいる。神様は住人とほとんど変わらない生活をしている。
その神様というのは実は私なんだけど、そのことに誰も気づいていない。
私は神様、シロと呼ばれている。
次に、私が住んでいる世界について話す。
『世界』と言ってもとても小さい。『町』といったほうがしっくりくる。
此処には三百人程の自分の意思を持った人間が暮らしている。
町と表しても少ないと思ったかもしれないけど、私にとったら多い方だ。
沢山いると管理ができなくなってしまう。この町を私の納得いく形にしたい。
私は毎日毎日この町を歩き回り、どう修正すれば良いかと考えている。
ある時私は、人からある程度の悪感情を抜いた。
すると皆、誰も人を恨んだり、憎んだり、はたまた喧嘩をする人間も居なくなった。
仲良く暮らしてた。
最初だけは…。
暫くすると、何人かが倒れた。
時が過ぎていく事にその人数は膨れ上がった。
死人は出ていないが、あまりにも倒れた人数が多すぎた。
悪感情を全て抜き取らなかった私にも原因があるのだけど、原因はストレス。
悪感情につながるものを全て消せなかった。
まず、人間には好みというものがある。
それは食の好みだけではなく、感情であったり、行動であったりと、様々なところででてくる。
その好みを消してしまうのが一番手っ取り早いのだけど、それを消してしまうと、同じ人間を大量生産しているのと同じだ。
話がそれてしまったが、人とのずれを感じてしまい、小さな違和感が出てくる。
小さな塵のような違和感は降り積もると大きな、大きな山になっていくの。
言い方を変えると、相手の事が嫌いだ、という悪感情を抜いたとしても、好き、という感情は消えない。
その好き、は人によって濃さが変わっていく。
つまり、好きの中でもカースト最下位の人間を作ってしまうという事。
このストレスの溜まり方もただの一例であって、他にもたくさんあるだろう。
きっと感情は全て繋がっているんだ。
別々にあるように見えるのだけれど、目を凝らしてみると繋がりが見えてくる。
だからその感情が行き来している線を一方的に切ってしまったら、行き場所が無くなってしまう。
今まで黒ずんだ大きな感情の山は、悪感情として扱われ、その箱に仕舞われていた。
しかし、その箱を繋がっている線を私が消してしまった。
悪感情ができそうになったが、他の感情に変換しようと体が暴走したんだろう。
その結果がこれ。
嫌いという感情がない世界。
とだけいうととても綺麗な世界だが、見方を変えてしまうと、嫌いという言葉がない世界、という事にもなる。
このようなことを何度も私は繰り返して…けれど、未だにいい世界のバランスを見つけられないでいる。
けれどいつか必ず、私の納得いく世界を作ってみせる。
そう思っていたのだが、
今私は自分の無力さに落ち込んでいる真最中でもある。
この世界はまだ初期設定のまま変われていない。