未婚の母
思いついて書いた初投稿です
ざっと書いたので拙いですがご容赦ください
現在、この国の社交界ではある話題で持ちきりである。
『聞きまして?バスク侯爵のこと』
この国では議会の賛成が得られれば、女性であっても爵位を継ぐ事が可能となっている。
しかし、多くの家門は分家から養子を得たり、婿を迎えるなどして女性が継ぐ事は稀でああった。
下位の男爵や子爵は女性当主もいるが、高位貴族はその責任や領地の広大さなどから女性には難しいと判断されてきたようだ。
その中で、高位貴族の筆頭であるバスク侯爵家は3年前に唯一の嫡子であったルミナス・バスクが女侯爵として議会にも認められ当主となっていた。
これは異例ではあったが、まず当主夫婦が不慮の事故で揃って他界したこと、そしてルミナスがこの国の第二王子、レオルドとの婚約が決まっていたことで、いずれレオルドが統治する領地を保つためにも女侯爵が認められていたのである。
当時、レオルドとルミナスは共に17歳。王立学園の卒業を翌年に控えていた。
卒業と同時に婚姻を結び、第二王子を婿として迎え領地運営をしていけば問題ない。
誰もがそう考えていた。
二人の仲も良好で、幼い頃から婚約者として交流しており、両親を失った悲しみをレオルドの支えで乗り越える様子に、周りも穏やかに見守っていた。
しかし、不運は続くもので、2人が卒業を控えた翌年、今度は国中が悲しみに包まれる事が起きる。
レオルドの兄である王太子が突然の病に倒れ、闘病する間もなく儚くなってしまったのである。
これにより、第二王子であるレオルドが王太子となることが決まってしまった。
亡くなった王太子にはすでに妃を得て、第一子となる王子が誕生していたが、当時まだ1歳で必然的にレオルドが継ぐしかなくなった。
そして、ルミナスはすでに女侯爵として当主を務めており、他に爵位を任せられる親戚が乏しかったため、王太子妃、そして王妃としてレオルドとそのまま結婚することが難しくなったのだ。
また、亡くなった王太子の妃が問題となった。
彼女は隣国の大国から嫁いできた王女であり、実家に戻すにも、両国の血を引く息子を連れていくわけにはいかず、拒否をしたのである。
離宮に移り住み隠居させようと思ったころ、王太子妃の妊娠が発覚した。
亡くなった王太子の第2子である。
そして、両国間で協議された結果提案されたのが、弟であるレオルドとの再婚であった。
これは、国内の有力貴族の娘たちがすでに結婚や婚約を結んでいたことで、レオルドの婚約者選びによる国内の混乱を抑える目的もあったようだ。
これにより、レオルドとバスク侯爵であるルミナスの婚約は白紙。王家からはバスク侯爵への配慮から少なくない金額と税率の優遇など慰謝料が払われることとなった。
兄王太子が亡くなって半年後、第2子である男の子が生まれる。そして、その半年後、レオルドの婚姻が結ばれ、王都では盛大なパレードが行われた。
ルミナスも高位貴族としてパーティーに招待されていたが、参加を見合わせており、周囲は仲睦まじい二人だったため。傷心なのだろうと気遣う様子を見せていた。
陰では、ルミナスの夫となり侯爵家に入りこもうとする貴族の次男以下の男たちによる縁談が殺到しており、その煩わしさから逃れるためではないかなどととも噂をされていた。
しかし、レオルドの結婚から3ヶ月後、どの貴族も参加する新年の挨拶の場に現れたルミナスの姿を見て一同は驚愕となったのである。
華やかな場に相応しいドレス姿ではあるものの、ルミナスの腹部は膨み、子がいるのが明らかだったからだ。
貴族の娘が、婚姻を結ぶ前に純潔を散らすなど言語道断。
ましてや未婚で子を得るなど許されることではない。
レオルドとの婚約が解消されたことで同情されていたルミナスへに対して、今度は多くの批判の目が向けられた。
ルミナスは必要最低限の挨拶をすると、話を聞こうと近づいてくる野次馬を笑顔で躱し、すぐに王家へ暇とつげて会場を後にした。
そのため、社交界は未婚で妊娠をしたルミナスの噂で持ちきりとなったのである。
その噂の大半は、腹の子の父親は誰なのかという憶測である。
ルミナスの周りには、執務を支える侍従や部下がおり、その誰かではないか
国内貴族ではすぐにわかってしまうだろうから、国外のものではないか
そして
王太子レオルドの子なのではないか…
王家がこの噂に対して解答をしなかったこともその噂に拍車をかけた
しかし、ルミナスは学生時代からの親しいものとしかプライベートな交流はせず、詳細は謎のままとなった。
寒さの中に春の兆しを感じるころ、ルミナスは領地で男の子を産んだ
少ない産褥期を過ごしたあと、ルミナスは侯爵として勢力的に働いた。
未婚で子どもを産み、周囲の男性に負けることなく当主を務めるルミナスの元には徐々に縁談の申し込みは少なくなっていく。
ぐうたらして妻の金で遊びたい男などからは縁談があったようだが、侯爵家を自身の手中に納めようとするような男たちからは嫌厭されたようだ。
ルミナスは子に関する質問には答えることはなく、また誰かと結婚をすることなく当主を務めていく。
そして、レオルドと妃の間に新たな子どもが生まれることはなく、月日が過ぎ、ルミナスが未婚で産んだ子どもが12歳となって王立学園に入ることとなり、人々はまた驚愕することとなった。
容姿はルミナスにそっくりではあったが、髪の色と瞳の色がレオルドと一緒である。
すでに王位を継ぎ国王となっていたレオルドの子どもであることは明白となった。
当主自ら産んだ子どものため、爵位の継承権には問題なかったが、父親について横槍を入れようにも国王の子であり、誰もが口を噤むしかない。
そして、世間では公然の秘密としてルミナスとレオルドの子は認められた。
さらに月日が流れ、レオルドの兄の第1子である王子が国内の伯爵家から迎えた令嬢と婚姻を結び、子が生まれた年、若い王子へ譲位が行われるとともに、レオルドと王妃の離縁が発表されることとなった。
王妃は離縁をしても国王の母として、年若い新たな王妃の補佐として王都にとどまる。
しかし、レオルドは新たな国王の補佐は臣下へ任せ、離宮へ隠居すると発表された。
その新たな離宮の場所が、ルミナスの領地である事が明かされると、人々はルミナスとレオルドの純愛に心を撃たれ、二人を題材にした戯曲が広まった。
二人はそんな世間の様子を気にすることはなく、ルミナスも子に爵位を譲るとレオルドの離宮にほど近い場所に別邸を建て、隣人として穏やかに交流を重ねていった。
「お聞きになりまして?レオルド様とルミナス様の話!」
こうして、二人はまた社交界の話題となったのである。




