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ログ・ホライズン  作者: 橙乃ままれ
ログ・ホライズンEp10 ノウアスフィアの開墾
86/134

086

  ◆08




 アキバギルド会館。それはアキバの中でも最も高いといってもよい建物だった。地球世界の高層ビルには比べるべくもないが、高層建築がことごとく廃墟化されたこの世界においてはそもそも十階を超える建築物が珍しい。

 遮るものの乏しいイースタルにおいてはアキバの空を風が渡ってゆく。その風を受ける黒曜の石碑のような中心が、このアキバギルド会館。〈円卓会議〉の本拠地である。

 その大会議場、古の姫をかたどる石像が見下ろす中にアキバを代表するギルドマスターが顔をそろえていた。〈円卓会議〉に参加する十一人はいつの間にか「デクリメント」と呼ばれていた。十二人ではなくそこにひとり欠けるという意味だ。

 〈黒剣騎士団〉の総団長、“黒剣”のアイザック。

 〈西風の旅団〉の剣聖ソウジロウ。

 〈海洋機構〉の“豪腕”総支配人ミチタカ。

 〈ロデリック商会〉の“妖精薬師”ロデリック。

 〈第8商店街〉を率いる広域商人カラシン。

 〈三日月同盟〉のマリエール。

 〈RADIOマーケット〉の凄腕〈機工師〉茜屋。

 〈記録の地平線〉の鬼謀シロエ。

 そして〈ホネスティ〉からはアインス。

 〈D.D.D〉のギルドマスターにして〈円卓会議〉代表を務めるクラスティは行方不明となり、また遠征軍への補給任務中のため〈グランデール〉のウッドストックはこの場にはいない。

 三つの席が欠けた〈円卓会議〉は、アインスにとってその数以上に不完全な印象を与える場となっていた。


「シロエ殿の計画がうまくいったのは重畳というほかないな」

「えー、ほんとうにありがたいですよ。これでボクらは干上がらないで済む。円卓会議の財政は帳簿上は破たんしてましたからねえ。大手ギルドからの貸付で保ってたようなもので」

 茜屋の重々しい言葉にカラシンが軽薄な口調で相槌をうつ。しかし内容のほうは重いものだ。

「でも、これでほっとできるんやろ?」

「アキバ周辺ゾーンの解放は実施済みです。東北方面に向かってゾーンの購入および権利破棄をすすめている感じですねー。このまま所有禁止のゾーンが増えていくでしょう。購入可能であるってのは、今後を考えるとおっかないですからね」

 去年の秋口から〈円卓会議〉でもっとも重大であった問題。すなわち、ゾーンの維持費による財政圧迫は、〈記録の地平線〉のシロエによって解決の方向に向かっていた。そのせいで、会議には少しだけほっとした空気が流れている。

 維持費の総額は月間でも金貨数百万枚。〈円卓会議〉の予算を圧迫という表現では生ぬるいペースですりつぶしていた。アキバの路上空間全てをゾーンとして購入していたというのが最も大きな負担要因だ。

「すみません」

「シロエさんを責めてるわけじゃいですよう。ま、シロエさんほど善意の人ばかりじゃないっすからねえ」

 しかし「ゾーンを購入しない」という選択肢はなかった。

 謝罪はしているが、シロエは事実、このアキバギルド会館を購入し、アキバ〈冒険者〉一万数千の生殺与奪権を握った。それが〈円卓会議〉設立のきっかけになったのは有名な話だ。そして、そうした重要施設はいくつもある。〈大神殿〉や中央商業施設、アキバ全域などは同じ程度の強制力を購入者にもたらすだろう。

 それらのゾーンは〈円卓会議〉成立後早い時期に購入された。誰に、という想定をはっきりとはせぬままにただ焦慮とあやふやな恐怖によって購入を強いられたといえるだろう。その後も周辺へ広げるように購入済地域は広がっていった。アインスは、これらが間違いだったとは思わない。必要な処置だったと思っている。その証拠に〈ホネスティ〉からも相応の資金拠出を行ったのだ。そしてその気持ちは〈円卓会議〉に属するその他すべてのギルドも同じであった。

 しかしそれらの負担が重くのしかかり、アキバの自由を奪っていたのも確かなことだろう。〈冒険者〉の資産が多く、負担に耐えることが可能だったために問題が表面化しなかっただけのことなのだ。

 〈記録の地平線〉のシロエはその問題を「一度購入されたゾーンの売却、および購入禁止処理」という荒業で解決した。土地(ゾーン)の持ち主をこのヤマトというサーバーそのものにするという手法だ。その初期費用としてまとまった資金も〈供贄一族〉から引き出した。この一件はアキバの〈冒険者〉一般に知る者は少ないが、〈円卓会議〉参加ギルド上層部であれば知るところである。

 アインスももちろんその策には感心し、感謝している。

 だが、解決されたからこそ次の問題が出てきてもいるのだ。


「財政に余裕ができたのであれば、かねてから提案していた案件の議論を進めていただきたい」

 巨大な円卓に乗り出すように立ち上がったアインスは声を上げた。

「案件って、あれか」

 苦虫をかみつぶしたような表情のミチタカが、ちらりと横目でロデリックを見やる。ロデリックは視線をそらし、カラシンもややあきれた表情だ。アイザックいつも通り腕を組み不機嫌そうな表情であり、言葉をさしはさむ者はいない。

「えーっと……。提案ってなんでしたっけ?」

 空気を読まないソウジロウが、にこりと笑ってシロエに問いかける。

「アインスさんが提出した、情報公開と再分配に関する提案だ」

 アインスはシロエの概説にひとつ頷くと先へと続ける。

 この場にアインスの焦慮を共有するギルドマスターはいない。

 それがアインスの胸を暗い感情で満たした。ここに列席するのは「アキバを代表する著名ギルドの主幹」である。彼らがこの問題を正しく感じ取ることができないのは仕方ないのかもしれない。しかし、だからといって放置できないことを伝えなければならない。

「現在このアキバの街では急速に格差が進行しています。新しい技術開発ができる者やフィールドで狩りができる者は富を増やし、そうでないものは最低限の稼ぎを日々の暮らしで失っています。彼らの財産の差は急激に拡大している」

 一同はアインスの言葉に耳を傾けてくれている。

「これは問題です。どうにかしなければならない。口伝も問題です」

「え! なんで口伝が問題なんですか!?」

 素っ頓狂なソウジの疑問の声に、ミチタカが「提案書に書いてあるだろ」と返す。そう、ミチタカをはじめ、ここに集うギルドマスターのすべては誠実なのだ。それは疑いを入れることができない。アインスの意見にさえ耳を貸すことをためらわないのだから。

「口伝や新商品開発などが目下問題にしている経済的な格差を引き起こしているのです。大規模ギルドはその規模を生かして事業、つまりは収入を拡大しています。それらは是正されなければならない。現在円卓には約四十種の口伝が報告されています。これらの情報を広く一般に公開すべきです。また生産系のレシピも」

「おいおいおい。ちょっとまてよ。レシピってのは〈エルダー・テイル〉のそれじゃなく、〈大災害〉後のアイテム作成方法だろう?」

「そうです」

「そいつはいくらなんでも無理だ! 〈大災害〉後のアイテム作成は試行錯誤なんだぞ! ラーメンひとつ、石鹸の作り方ひとつだって、職人が一生懸命考えだして、独自に工夫を加えたものなんだ」

「口伝もそうですよ。そもそもあんなもの、公開したからってどうなるものでもないでしょう?」

 ミチタカとソウジロウの反論を、アインスはこわばった表情のまま受け止める。予想はしてたが、焦りすぎたのだろう。レシピや口伝の公開は難しい。しかし、できればそのほうがまだソフトランディングができるというのがアインスの考えだ。

 しかしそれが無理であるというのならば、別の手法を検討してもらわなければならない。

「それが無理であるならば、資産の再配分を検討すべきです」

「再配分、ですか……」

 シロエも厳しい表情で何かを考える。

「そうです。ギルド会館の銀行に資産を八万ゴールド以上預金している〈冒険者〉はその余剰分を〈円卓会議〉会議で没収」

「没収なんー!? そんなの偉い騒ぎになってまう!」

「そのうえで、没収分を資産が少ない〈冒険者〉を優先的に、資産額に応じた配分を」

「おい」

 その会議に待ったをかけたのはアイザックだった。

「さっきから聞いてりゃ、ずいぶん自分勝手な話をしてるんじゃねえか? アインス」

「そうでしょうか?」

「金にせよ口伝にせよメシの作り方にせよ、それぞれががんばって手に入れた、それぞれのもんだろうが。そいつを取り上げたら大騒ぎになる。それがわからないお前じゃねえだろ?」

「しかし今無気力になって膝を抱える人がいるんですよっ!? 彼らを救わないでなんの〈円卓会議〉ですか」

「手は打ってる。街中は安全だし、周辺のPKはなくなった! 狩りだって商売だって自由にできる」

「ミチタカ殿は持てる側だからそう言うのです」

「そうかもしれねーが、んじゃ、アインスよ。聞くが、その座り込んでる連中、レシピとカネ渡したら元気百倍で動き出すのかよ? お前がそれを保証できるのか」

 アインスはアイザックの瞳を見つめて、その拒絶に絶望を見た。

 結局問題は、危機感なのだ。

 アインスの危機感は〈円卓会議〉で共有されていない。だからアインスの言葉は届かない。何をどう語っても無駄なのだ。その前提が、伝わっていないのだから。


 かつて、アキバには恐怖があった。

 いうまでもなく〈大災害〉によってもたらされたものだ。その中心は未知の大事件によりこの恐ろしい世界に巻き込まれてしまったということであるが、無視できない大部分は、〈冒険者〉そのものでもあった。

 法というものを持たない荒廃したこの世界において、自分を傷つけるものは同じ自分たち――つまり〈冒険者〉同士なのだ。いや、実際に傷つけるかどうかは重要ではなかった。その可能性が存在するというだけで、現代社会を生きてきた地球人である〈冒険者〉にとっては耐え難い苦痛だったはずだ。

 鬼謀の青年シロエが〈円卓会議〉を立ち上げることができた背景には、この感情がある。つまり、アキバに住む大多数の〈冒険者〉が互いへの恐怖を感じていたのだ。だからこそ無意識に安定を求めた。恐怖が〈円卓会議〉を作り出したのだ。

 その後のゾーン買収も全く同じだ。「どこかの誰か」に自分たちの生存権を略取されるかもしれない、そんな恐怖がアキバを中心としたゾーンを買い占めるという行動に〈円卓会議〉を駆り立てた。この恐怖は無意識であるにせよ、〈円卓会議〉が共有するものであった。だからこそその方針が可決されたし、負担であっても実行されてきたのだ。


「しかし、この問題を放置するわけにはいかない」

「それはわかるんやけど」

「開発レシピを公開すれば技術者たちのモチベーションがたもてませんよ」

「日銭稼ぐのってそんなに難しいっすかねえ」

「格差、格差っていうが、おれらは同じ〈冒険者〉なんだぜ?」

 アインスはにわかに騒がしくなる会議場の中で唇をかみしめた。

 アインスは現在の話をしているわけではないのだ。未来に属する話をしている。ほかのギルドマスターは本当にわかっていないのだろうか?

 恐怖に駆られた〈円卓会議〉は多くのゾーンを買収していた。その資金は、主に大手ギルドから供与されていた。大きな資産をもつ〈冒険者〉が一致団結して供与していたために、それは図らずも資産を持つ〈冒険者〉から公共への資産転移となっていた。狙わずとも、多くの資産を持つ〈冒険者〉はアキバの町のために寄付をしていたような状況だったわけだ。

 その状況下でもアキバの街では持つ者と持たざる者のあいだに溝が広がっていったということに注目すべきだ。もし仮にゾーン買収に費やされていた、高レベル大規模ギルド〈冒険者〉の資産が、それぞれ自分のために使われたらどうなるのか? その恐ろしさにアインスは目がくらむ思いだった。


 この世界は、アインスに言わせればあけすけで不安定すぎる。

 お前はレベル九十だ。すばらしい。

 お前はレベル三十二か。雑魚だな。

 そういうレッテルを二十四時間首からぶら下げて歩かなければならないのだ。格差が存在することと、それを四六時中突きつけられるのは、全く別のことだ。

 それはレベルだけの話ではない。装備であってもそうだし、サブ職の技量であってもそうだし、商売の結果や狩りの結果でもそうだ。常に突きつけられ、そこから逃れようがない事が問題なのだ。


 人口もそうだ。現在アキバの街には、アインスの把握する限り一万数千人の〈冒険者〉しか存在しない。これは恐ろしく少ない人数だ。

 そのうち半数が〈大災害〉の当日九十レベルであり、それ以下のレベルの〈冒険者〉は均等に分布していたとしよう。その場合、例えば三十~三十五レベルの〈冒険者〉は約四百十人ということになる。これは、つまり、三十~三十五レベルで狩りに出かける六人組のパーティーは六十八個しかつくれないということを意味する。当然その過半数は大手ギルドに属しているだろう。だとすれば、もし仮に三十レベルの若手が街中で仲間を見つけようとした場合、仲間入りの可能性があるグループは三十程度しかないということを意味する。

 あくまで机上の計算にすぎない。

 実際には、それらの就職先とでもいうグループですら、たとえば限界人数の六人でいることもあるだろうし、狩りのペースがうまく合わないこともあるだろう。仲間入りを希望する自分と、仲間を探すパーティー側で求めるメイン職業が食い違うことなど日常茶飯事だ。

 つまり、今このアキバにおいては、一度仲間やコミュニティ、ギルドからはぐれてしまった〈冒険者〉が、新しい居場所を見つけるのは、極めて困難だという事実がある。MMOの常識で言えば、仲間が居ると居ないとでは、狩りの収益には天地の開きがある。いちどその輪から外れてしまった〈冒険者〉はどうすればいいのか?

 ソロで狩りをしても毎日食事をするには不自由しない。――そんな慰めが彼らのひび割れた心にどんな救いをもたらすというのだろう?

 〈円卓会議〉は気がついていないだけで、アキバはその内側に、それだけの闇の芽を抱えてしまっているのだ。その危機感を共有できないことに、アインスは目の前が暗くなるほどの焦慮を味わった。


「提案そのものはわかりました」

 冷静な瞳で言葉を紡ぐ青年――シロエはそう告げた。大きな声ではなかったが、〈円卓会議〉参加者たちは、そのシロエをはっとしたような表情で見る。十ヶ月にわたる〈円卓会議〉での活動で、この鬼謀の青年の言葉は参加者にそれなりの重みをもって受け止められるようになっている。

 アインスとしても、アキバの問題を共有するにあたっては、ぜひとも説得しなければならないキーパーソンの一人がこのシロエだった。シロエが賛成してくれれば、この問題を一気に解決することも不可能ではない。

 アインスの胸に希望が差し込んだ。

「たしかに何らかの施策は必要だと思います。しかし、〈円卓会議〉の予算は有限です。ミナミのように〈大地人〉貴族から莫大な資金供与を受けているわけではありませんし、供贄の黄金に手を付けるわけにはいかない。――この問題については、それぞれのギルドに持ち帰り、どんな手を打てるか検討してみましょう」

「シロエさん、それでは遅い可能性も――」

 アインスは叫んだ。

 シロエであれば供贄から追加の融資を受けることもできるだろう。

 分からず屋の戦闘系ギルドを説得することだってできるに違いない。

 しかし、アインスの願いはシロエのあげた手のひらでせきとめられた。

「アインスさん。お気持ちはわかりますが、これ以上は無理です。〈円卓会議〉は脆い組織です。こんな重大な決定をこの部屋だけで採決した場合、〈円卓会議〉もアキバも、壊れかねません」

 シロエの言葉がじわじわとアインスの理解にたどり着いた。

 その通りだ。強引な決定は、この脆いアキバの街を壊してしまう

 しかし、時間をかけても壊れてしまうかもしれないのだ。

 説得しきれなかった苦い無力感の中で、アインスは一人うつむいていた。




  ◆09




「できましたー!」

「これはきれいですにゃあ」

「すごいですねえ。わたしこんなの初めてです」

 〈記録の地平線〉のギルドハウスの二階、キッチンには、甘い香りが立ち込めていた。中心にいるのは、ギルドの料理担当、にゃん太と、ここのところ足しげくギルドハウスに通いつめている〈三日月同盟〉の少女、セララだった。

 誰に頼まれたでもないが、彼女は料理の勉強と称してにゃん太の手伝いを続けている。買い物かごをもって自分の後ろをとてとてとついてくる彼女の姿は、にゃん太にとっても慣れ親しんだ日常となっていた。

「この時期スナップエンドウは甘くておいしいですにゃあ。冷水でしめてあるからエメラルドみたいですにゃ?」

「きらきらしてます!」

「新じゃがはどうですかにゃ?」

「もうぜーんぶゆでて下処理もおわってます」

 〈大災害〉後の変化の影響で、簡単な下ごしらえくらいであれば、サブ職業が〈料理人〉でないセララにも問題なくこなせるようになっていた。それは〈新妻のエプロン〉のスキル提供と累積するらしく、セララのレシピは日々増えつつある。セララはどうやらそれをとても喜んでいるようだ。にゃん太はその様子に微笑んだ。

「おや? ずいぶん手際が良くなりましたにゃ」

「にゃん太さんに教えてもらいましたからっ」

 にゃん太の言葉に、セララは胸を張った。

 二人の目の前には下処理が終わった大量の野菜。今晩のメニューは大皿の中華で行く予定だ。中華料理に必要なのは手早い加熱であり、そのためには入念な下処理が必要である。にゃん太が台所を預かるギルド〈記録の地平線〉には健啖家が多い。直継やトウヤはもちろん、ルンデルハウスやミノリも決して食が細いほうではないし、興が乗ればほかのメンバーだってよい食べっぷりを見せる。調理はなかなか大変だが、たっぷり作るのはそれはそれで独特の爽快感があるのも確かだ。

 湯気を立てた野菜からあら熱が取れるには、少し時間がかかりそうだと考えて、にゃん太はエプロンを外すと、戸棚からポットを取り出した。

「ではお茶にしますか」

「はいっ」


 わざわざ応接室までは戻らなかった。

 広いキッチンにある大きなテーブルは野菜の皮むきをしたりパスタをこねたりする作業のためのものだが、もちろんお茶を入れて休憩するためにも使うことができる。料理や家事の途中で一息入れることも多いし、もちろん、ここで試食と称したつまみ食いをすることもある。

 にゃん太は〈ダンステリア〉で買ったオレンジのジャムをひとさじ加え、紅茶に溶かした。紅茶の香りと柑橘のさわやかな香りがキッチンに広がる。

「おいしいですかにゃ?」

「はい。あったかいです」

 とろけてしまいそうな声でセララが答える。縁側の猫を思わせる無防備な表情が微笑ましい。

「今日は、ゆっくりした一日ですにゃあ」

「ええ。下ごしらえも早く終わったし、夕飯まではまだ時間があるし」

「こういう日はお昼寝したくなりますにゃあ」

「ふふふふっ」

 安心しきったセララの表情に、にゃん太の心の奥がざわめくような気持ちを味わった。この台所が暖かければ暖かいほどに、やりきれないような痛みがよみがえる。

 取り乱すほどの激情はなかったが、それは打ち寄せる波のような寂寞であった。

 自分はこの世界に招かれていない、と叫んだ青年がいた。勝手に連れてこられ、だから、自分はこの世界で勝手をすると彼は宣言した。多くの〈大地人〉の命が奪われる作戦に「それがなんだ」と言い捨てた。

 この世界には、確かにそんな叫びが存在する。

 こうしてセララが微笑み、にゃん太がオレンジフレーバーの紅茶を入れるその湯気の向こうに、この世界を受け入れることができない若者たちが、確かに苦しんでいるのだ。

 にゃん太は、そこでは何もできなかった。

 料理も、剣の腕も、そして積み重ねた経験も、何もかもが彼らには届かなかった。様々な経験を経てきたにゃん太にはわかる。自分とロンダークの間にある差など些細なものだ。

 ロンダークはにゃん太になりえたし、にゃん太はロンダークになりえた。

 ふたりの間にある差はわずかだ。〈大災害〉のあの日、あの瞬間、どこにいたのか? だれといたのか? いままで誰と過ごしてきたのか? 胸に残る大事な言葉があったのか? その程度の差だろう。

 それらの差異は努力や才能に由来するものではない。縁、出会い。いってしまえばただの偶然でしかないのだろう。それがにゃん太にははっきりとわかる。

 人は、この異世界に落ちてしまったにゃん太たちは、だれもがロンダークになりえるのだ。そして救うことはできない。


「セララちは楽しそうですにゃあ」

「楽しいですもん」

 弾むような声。跳ね返るように帰ってきた返事に、だからにゃん太の方が一瞬遅れて言葉を返すことになった。

「そうですか」

「……にゃん太さんは、最近元気ですか?」

 その間を敏感に察したのだろう。セララは両手でカップを包み込みながら、にゃん太を見上げてくる。わずかにひそめられた眉は心配の表情だ。にゃん太は自嘲めいた気持を味わった。セララのような少女に、理不尽な痛苦を伝えるべきではないのだ。

「元気ですにゃあ」

 今度の返事は、滑らかに口にできた。当然のことのように。普段と変わらないように。それなりの時間積み重ねてきた人生と、経験した多くの感情の揺らぎが、にゃん太の演技(ロールプレイ)を支えていた。

「そうですかあ」

「……」

 ほっとしたようにセララは微笑んだ。屈託のない笑顔、揺らぎがちな感情、青い不安は、いずれもにゃん太が過去の世界においてきたものだ。それは未熟の証拠ではあるが、同時に可能性の象徴でありどこにでもいけるという希望でもある。

 セララの健やかにある様は、にゃん太にとって、祈りたいほどに大切なものだった。

「セララちはこの世界に来てよかったとおもいますかにゃ」

 問うつもりもなかった質問を、にゃん太はついこぼしてしまった。

 何度も自問して、そのたびに意味を失った質問だった。にゃん太自身の答えはもちろん出すことができるけれど、でもにゃん太の答えには意味のない質問だからだ。

「へ? あ。はい」

 そんな問いを、もう少し、考え込むかと思ったが、セララは即答した。

「そうなのですか?」

「ええ、そうです。そりゃ、お父さんやお母さんと会えないし、困ったことも、大変なことも、たくさん起きたけれど、いいこともたくさんあったし、その」

「?」

「なななな、なりたい夢とか、その将来とか」

「あるのですか?」

 にゃん太の問いかけに、セララは震えるようにこくこくと小刻みに頷いた。

 なりたい姿。将来の望み。生きる道標。それが、確かにあるのだと、セララはつぶやいた。

 にゃん太は、紅茶で温まった呼気を、大きく吐き出す。

 ロンダークを前にしたときとは別の、ほのかに暖かな熱が、己の内側に灯った。ススキノ。チョウシ。そして、サフィール。彼女とて、この世界で多くの残酷な面を目の当たりにしているはずだ。それでも、彼女は、かくありたいという姿があるのだと口にしてくれたのだ。

「セララちならどんな夢でもかなえられるはずですにゃあ」

 かくあれかしと。願いをこめて、にゃん太は呟いた。

「は、はわわわわ……あ……」

 と、見る間にセララの挙動が怪しくなる。手が意味もなく空中をさまよい、表情は笑ったような、泣いたような様子をいったりきたり、唇も言葉にならずにくるくると形を変えた。

「どうしました?」

「――でも、わたしの夢は、遠くて。いえ、その、諦めるとか! そういうんじゃないんですよ? でも、五十鈴ちゃんとかミノリちゃんとか見てると、ちょっと足りてないっていうか、わたしがダメダメっていうか」

「……」

 にゃん太は、セララの言葉を待った。

 口にすることで、相手に伝えることで、混乱した思考がまとまることもある。それは、他の人間が助言をしたのでは得られない、自分だけの答えだ。

 深呼吸を一つ。紅茶を飲み干して、ひとさじオレンジジャムをなめて、もう一度深呼吸。

 そして、セララは改めてにゃん太の目をおずおずと見あげる。

「――その、たぶん。わたし、ちゃんとしたセララにならなきゃ、いけないんだと思うんです。その、夢とかを、かなえる前に。ちゃんとした、一人前のセララにならなきゃ。それに、なりたいんです」

 にゃん太は、セララが急かされたような表情で、年少組の仲間を見ていたことを知っている。ミノリ、トウヤ、五十鈴、ルンデルハウス。セララが行動を共にしている子供たちは皆、目覚しいほどの成長を遂げてきた。

 シロエの背を追い、戦術や事務能力において、大人をも超える働きをみせるミノリ。

 自分より力量、年齢、共に上回る〈オデュッセイア騎士団〉相手に、この世界で生きることを呼びかけ続けたトウヤ。

 そして、戦場の中、自らの歌を見出し、声を嗄らして旋律を奏で続けた、五十鈴。

 〈大地人〉でありながら人々を守る在り方に焦がれ、〈冒険者〉に至ったルンデルハウス。

 階段を二段飛ばしで駆け上るように花開く仲間たちの姿に、彼女は、自分を半人前だと感じていたのかもしれない。そんな焦慮や胸の軋みをにゃん太はセララから感じていた。大人であるにゃんたから見れば、それは幼い悩みだ。彼女の未来は無限に広がっている。気にするほどもないちょっとした足踏みにすぎない。

 しかしそんなセララが掲げた目標は「ちゃんとした自分になること」だった。その言葉が、いま、にゃん太の魂に確かに触れたのだ。

 若者たちは産まれなおす。

 理不尽な強制としてこの世に生を受けた幼子は、若者となり、己の意志でもう一度生誕を決意する。それは、今生きる世界との契約であり、過去と未来を繋ぐ絆だ。

 かつて、にゃん太はロンダークにそう言った。それは、願いであり祈りとしてだ。そうであればとは思っていたが、なかなか難しいとも思っていた生きるものの理想だ。

 しかし、セララは誰に何も言われずとも、光に向かって歩き始めた。いいや、すでに歩いているのだ。この感受性豊かで優しい少女は、毎日少しずつ「本当の自分」に近づいていっている。

 若者は自分自身に生まれ変わるのだ。

 願えばその通りに。

 今にゃん太が感じている感動と救済を、セララは到底わかるまい。それを彼女が理解するためにはまだ二十年以上の時間がかかるだろう。だがしかし、彼女は今にゃん太を救った。にゃん太は彼女に救われたのだ。

 にゃん太は言葉にならない思いで、唇の端を釣り上げた。微笑みの形になっていれば幸いだと思う。にゃん太の感謝はきっとセララには伝わらないだろうが、だとしてもかまうまい。この小さな淑女は最大級の敬意に値する。

「セララさん」

「はひっ」

 だからこそにゃん太は決意を込めて言葉を選んだ。

 彼女の、そして彼女たちの、二度目の産声を祝福するために。

「吾輩は、セララさんを応援してますにゃ。みんなを、ずっと応援してますにゃ。ずっとずっと、応援していますにゃ」




  ◆10





 〈記録の地平線〉のギルドハウスはアキバ中央通りから一本外れた裏道にある。中心からやや外れたあたりだが、だからこそ、テラスからの眺めはアキバ中心街に向かって開かれている。

 昼間の眺めも悪くはないが、シロエは、夕暮れから夜にかけての展望が好きだった。

 この異世界において夜は暗い。チョウシやススキノへ向かう旅でシロエはそれを知った。自然豊かなセルデシアという言葉は、そのまま文明圏の狭さと直結している。地球世界のように大都市も整備された街道もないのだ。夜は闇の支配する世界である。

 だが、だからこそ、人の営みがもたらす明かりがかけがえのないものに映る。活気あふれるアキバの街は夕暮れから夜にかけても、炎の明かりや魔法の明かりが灯っているのだ。

 もちろんそれは東京の夜に比べるべくもない疎らさだ。あちらのビルがオレンジに、こちらの宿屋もオレンジに、中心部には〈蛍火燈〉がいくつも。そんな感じだ。しかしその程度であっても、この異世界においては破格のまばゆさを放つ大都市なのである。

 その光景を広いテラスデッキから眺めるシロエは浮かない表情だった。

 アインスの言うことはわかる、こうなることも想像していた。しかしだとしても、と思う。彼の言うことは理想論であるとは思うけれど、だとしても、実行はできない。もしそのまま強行してしまえば、賛否の意見の激突は取り返しのつかない段階になってしまうだろう。〈円卓会議〉は自治組織ではあるが、政府ではないのだ。

(それも、逃げなのかな)

 自治組織であらなければならない理由はない。アキバは適当な領土を宣言して統治組織であることを宣言可能だ。少なくともこの世界の常識で言えば、戦闘行為を行う自衛能力も、領地を運営する経済能力も十分以上に有している。アキバがその二点で統治能力不足であるというのならば、〈自由都市同盟イースタル〉のどの領地、貴族であろうと、統治組織を運営することはできないという指摘になってしまうだろう。

 シロエを含むアキバのギルドマスターたちが〈円卓会議〉を統治組織としなかった理由は、ただ単純に「自分たちが政府なんて」「それは責任が重すぎそう」「ちょっとそこまで手を広げるのは」という程度の理由でしかない。

 しかしその程度、とはいえ、それは感情的で思い込んだ常識的な判断であるので、いまから統治に乗り出すというのは気が重いというのも事実である。現代日本人であるシロエたちにとってそれらは自然な感情なのだ。そもそも自治組織でありアキバ住民の協力のもと成立したという〈円卓会議〉の成り立ちからして、今から強権を持つ「政府」に生まれ変わるのはそれなりの抵抗があるだろうというのがシロエの読みである。

 アインスの見通しが通らないのではないか? と思うのはその点で、アキバの意思というものは実在する。それは大多数のアキバ〈冒険者〉の気分というべきものであり、〈円卓会議〉のギルドマスターとはいえ、上意下達で好きなように左右できるものではない。

 供贄の黄金を借り受けることができたとはいえ、それはヤマトのゾーンを返還するためのものだ。その資金を流用してアキバに何らかの変革をもたらすというのは、いろんな意味で悪手だろう。筋が通らないとも思うし、不測の事態が起きてしまったらという恐怖がシロエにだってある。シロエだってあれだけの交渉をしてしまったにせよ畏れは持っているのだ。だから三枚のカードに分散してセキュリティをかけたのだ。

 しかし、それももしかしたら、責任回避のための自己欺瞞だったのかもしれない。シロエはそんな疑いを断ち切れずにいた。

 それは終わらない悩みであり、いつもの悔悟でもあった。

 行動に出れば独りよがりではないかと悩み、行動を回避すれば傍観主義ではないかと迷う。何をしても、しなくても、これですべては良かったのだという大悟を持つことは難しかった。くよくよしているといわれることはあるのだが、それが普段のシロエの性格なのだ。仕方がない。


 |〈Plant hwyaden〉《プラント・フロウデン》は統一ギルドによる強力な統治体制を築き上げた。それはもちろんある一面独裁的でもあるし、同じ〈冒険者〉(プレイヤー)に一部の人間の意思を押し付ける行為だろう。しかし、その単一ギルド強権体制が効率的な自治を可能にして、西ヤマトの安定や、〈冒険者〉の生活に大きな安定を与えたというのは紛れもない事実なのだ。

 その体制を成立させたというインティクスやカズ彦、元〈ハウリング〉のギルドマスター・ナカルナード、無名だったゼルデュスという〈冒険者〉の手腕は認めざるを得ない。

 今現在不幸な〈冒険者〉はどちらがより少ないのか? そういう問いを立てた時、シロエは〈Plant hwyaden〉を非難する言葉を持てないでいる。

 ――もっともそれは西の〈神聖皇国ウェストランデ〉との強い関係の上でのことだ。〈神聖皇国ウェストランデ〉は〈自由都市同盟イースタル〉に比べて中央集権の政体である。中央集権体制は、より能動的な予算配分をできるために、〈冒険者〉へとその予算をつぎ込むことができる。そうして〈冒険者〉から技術を導入し、富国強兵策を進めているのだ。〈自由都市同盟イースタル〉のような上下関係の明白ではない多数の領主の合議制である政体ではそうはいかない。

(そんな技術で戦争の準備を進めてるってことになるんだろうな)

 シロエはにゃんた班長からの報告を思い出してため息をついた。

 鉄鋼列車。不審な召喚生物。〈大地人〉の暗躍。

 シロエたち〈冒険者〉がこの世界で活動を続ける限り、速度はどうあれ技術拡散は避けられない。それはなにも〈Plant hwyaden〉だけが拡散させているわけではないのだ。アキバの〈冒険者〉だって大人げない技術の様々をこのヤマトに広げてしまっている。戦争に向かわない平和的技術、などというものは存在しない。〈大地人〉の生活を向上させる技術でさえ、それで豊かになった諸侯の野心を煽り立てるという側面はあるのだ。極端な話であれば農業技術や医療技術でさえ、戦火のきっかけになる可能性はある。

 アインスの指摘するアキバの格差や人心荒廃の問題。

 ヤマトの東西にまたがる〈大地人〉同士の軍事的な緊張。

 シロエは胃が痛くなるような気分だった。

 しかもそれだけではない。

 シロエは腰の横にあるバッグから折りたたんだ数枚の便箋を取り出した。背後の窓から漏れ出すギルドホール内部の温かそうなオレンジの光の中で、几帳面そうな文字が見える。その筆跡が自分に似ていることにすら、シロエは苦笑を漏らしてしまった。


「こんなところにいると寒すぎてお腹が痛くなってしまうぞ? 主君」

「いつの間に」

 シロエは視線をあげて上の階のテラスからくるんと逆さに降りてきたアカツキを迎えた。仏頂面でもの言いたげにじっとりと見つめてくるアカツキは、後ろ手に持っていたブランケットをシロエに押し付けてくる。

 そのしぐさがかわいらしくて、シロエはくすりと笑った。

 そのブランケットをマントのように肩にかけるシロエに、アカツキは「それで、何を困っているのだ?」と尋ねてきた。

「主君は困るとここにしわが寄るのだ。お爺さんのおでこになってしまうからな」

「そうかな?」

「そうだぞ」

 シロエとしては自覚がないのだが、何度か指摘をされているうちに「もしかしてそうなのかな?」と思うようになっていた。そんなにしょっちゅう唸って困っているのかと思うと、情けないようながっかりしたような気分だ。二十代だというのに何をやっているんだ、という気分になる。


「おう、ここにいたのか。シロ」

「アイドルレーダーに反応あり! 夜間の逢引的な! ラブの進行する音がした。つまりボクの出番!」

 アカツキの質問になんて答えようと躊躇っている間に、次の来訪者が訪れた。シロエの親友の直継だ。からっと陽気そうな表情をもった青年は、最近まるで装備品のように載せて(、、、)いる騒がしいてとらをともなってウッドデッキに出てくると、かしましいやり取りを始めた。

「ねえよ、お前の出番!」

「おや。出演料のダンピングですか? 困るなあ、世界的。ううん、銀河的アイドルの僕を値切るだなんて」

「自分でついてきたんじゃねえか。レーダーとか言って。」

「おっとそうでした。何か悪巧みですか、シロエさん。ボク興味津々ですよ」

「そうだぞ、シロ。作戦中か?」

 何度か声をかけようとしたシロエだが、その隙間が見つからない。

 直継だけだったらもっと簡単にやり取りができるのに、圧倒的な肺活量を誇るアイドルのまくしたてに封殺されているのだ。もちろんアカツキはこういうシーンでは助けになってくれない。生真面目だか不機嫌だかわからない表情をしたままに、シロエの近くで正座するだけだ。

「可愛くって、魅力的で、有能な、アイドルが必要ではありませんか? あ。間違えて疑問形で言っちゃった。必要です!」

「やべえ……俺はそこまでは言えねえな。でも〈守護戦士〉(ガーディアン)は必要だろ?」


 シロエの落ち込みをまったく気にしないような笑顔だった。

 でもその笑顔に限りなくシロエは救われて顔を上げることができた。また同じ失敗をするところだったことに気が付いたのだ。

「その話、吾輩もぜひ聞きたいですにゃ」

 まるで見計らっていたように、熱いレモネードのポットとマグをトレイに乗せたにゃん太があらわれて、シロエは決意する。手元にはシロエを悩ませた手紙がある。

 たとえどんな決断をするにせよ、何を迷うにせよ、その前にシロエには真っ先に相談すべき仲間たちがいる。ましてや、いまシロエのギルド(居場所)にはミノリやトウヤ、五十鈴にルンデルハウスという若手さえいるのだ。

 サフィールの街で辛い光景を見てきてしまった彼らのためにも、シロエたちは話し合わなければならないだろう。

「ログホラ、年長会議だな」

 親指を立てた親友を前に、シロエは仲間たちに便箋と封筒を差し出した。

「みんなに話さなきゃならないことがあるんだ」

 薄暮のテラスにあつまったシロエたちは、はるか彼方からやってきた旅人の手紙を検討し始めるのだった。



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