頬に垂れるそれ
短かッ!
「なら、どうして私を助けんだですか? あなたが、私を救わなければその右手も無事だったかもしれないのに」
助けなければ、エーベルハルトは右手を失わずに済んだ。私を助けなければ冷静さを欠いていなかった。助けなけれ――。
「オイ」
その言葉の次にくる行動を私はよく知っている。拳骨だ。しかし、私の予想に反して来る行動は非常に優しいものだった。
腕を振るえないのか、チョコンと私の頭に手首からその先を失った手を乗せた。包帯から沁みた血がしたたれ落ち、私の鼻先をしずくとなって落ちる。
何故だ? 視界がぼやける?
………どうして、どうして?
その意味を私の手に落ちたしずくで気づくことがきできた。血ではない。透明なソレ。
そう、戦場に来てから一度も出したことがなかった。それ。仲間が目の前で殺されようと、見捨てようと、一度も流さなかったソレ。
嗚呼、涙だ。
涙腺は既に悲鳴を上げていた。
私は声を出して泣いた。周りから、視線が集まった。それでも泣いた。
朧気な視線から見える、それはエーベルハルトの初めて見る優しい顔だった。穏やかだった。
「許そう。今は泣け。泣くだけ。泣け、そして、
よく頑張ったな」
そういって、撫でた。
右手首のない手で何度も頭を撫でた。血が垂れた。涙が零れた。
久しく流さなかったそれは泥だらけの頬をゆっくと滴っていく。生ぬるいソレが流れる。
私はただ号泣することしかできなかった。
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本当に関係ないことです。
「変な家」見に行きました。
個人的にはびっくりホラー系よりも原作のコワイくないホラーの方がすきだったんだけどな~