肉の匂いがする。
書くことがないんだお。
「おい………レ………聞こ……?」
何を言っているんだ?
「クッソ、………………だ」
なんだ?
ああ、爆撃が起こったんだ。
それで――。
ゆっくりと自分の出来事を思い出しているうちに朧けな視界で捉えたのはエーベルハルトの首筋だった。そして、揺れる視界。
そして、その視界で空を眺めれば降ってくる爆弾。それを舐めるように見てくと最後は地面に当たって地面が円形状に砕ける。
耳鳴りがする。それは自分に聴覚が戻ってきた証拠。
続けざまに聞こえるのは自分の心音と呼吸音のみ。それらは、共鳴するように音を奏でる。
あ、転んだ。
視界は宙を舞い近くの岩にぶつかる。もちろん、それらしい痛みも感じない。
あ、途切れた。
「………はッ」
人間というものやはり戦場という過酷な場に居れば必然的に求める欲求の一つに食欲がある。まあ、私が孤児院にいたときでもまともな食力も得られなかったがそれでも栄養失調の子供は出なかった。しかし、戦場にいればそれはもう普通のことだ。
そんな、哲学的な要素から入ったが、言いたいのはつまり現在の五感の状況である。
五感のうち最初に目覚めたのは匂いだった。何の匂いだ。肉を焼くような匂い。誰だろう? 焼肉をしている奴は。貧困の厳しい孤児院に生まれたため肉という肉を食べたことはない。
しかもそれはあくまで内地の話であってこの戦場では肉を手に入れようものなら民家を襲うしかない。まあ、この辺りには全くないが。
以上のことから私のこの不自然な匂いは不思議でならなかった。そして、考えたもしやを否定するような形で。
復活する視界。そして、絶句。定例だ。
情報が目を通して脳に到達する時間に僅かなタイムロスがあった。なぜなら、意味が分からなかったからだ。
何故? 何故、目の前には死体――否、重症の兵士が地べたに転がっているのだろうか?
四肢が取れているもの右目がないもの、重症のはずなのに包帯が一切巻かれていないもの、それらは紛れもない患者のはずだった。しかし、目視の限りでは治療しているのは軍医らしき男一人とその横の衛生兵。十字のワッペンでそれが分かる。
肉を焼く匂いの原因。それは食べるために肉を焼いているのではなく止血するために傷口を焼いている。もちろん、麻酔なんてあるはずがない。傷口を焼かれる兵士は痛みで歯を食いしばりながら苦痛の声を漏らしている。
あれは、拷問に等しい。
それは、もう地獄だ。戦場の三十倍ひどかった。いや、数で表してはいけないのかもしれない。
「起きたか」
声を掛けられる。その方向をみればすでに治療済みのエーベルハルトだった。頭にけして清潔ではない包帯を巻いてそして右手首からは無残にもその先がなかった。
だ。
何故? 何故、目の前には死体――否、重症の兵士が地べたに転がっているのだろうか?
四肢が取れているもの右目がないもの、重症のはずなのに包帯が一切巻かれていないもの、それらは紛れもない患者のはずだった。しかし、目視の限りでは治療しているのは軍医らしき男一人とその横の衛生兵。十字のワッペンでそれが分かる。
肉を焼く匂いの原因。それは食べるために肉を焼いているのではなく止血するために傷口を焼いている。もちろん、麻酔なんてあるはずがない。傷口を焼かれる兵士は痛みで歯を食いしばりながら苦痛の声を漏らしている。
あれは、拷問に等しい。
それは、もう地獄だ。戦場の三十倍ひどかった。いや、数で表してはいけないのかもしれない。
「起きたか」
声を掛けられる。その方向をみればすでに治療済みのエーベルハルトだった。頭にけして清潔ではない包帯を巻いてそして右手首からは無残にもその先がなかった。
「ぜ、前線は? 他の兵士は?」
エーベルハルトは首を横に振り、
「ここにいるのは全員、前線から遠かった、指揮所寄りの奴らだ。こんな奴らがこれほどの傷を負っているってことは………最前線は壊滅ってことだ」
エーベルハルトは続ける。
「野戦病院は既に満杯。だから、ここの指揮所も病棟として使われている。しかし、まだ外で治療を待っている奴もいる。つまり、これから選別が行われるだろう」
「………選別」
選別――簡単なことだ。例えるならば、品質の良いものとそうでない、不出来なものを分ける作業。つまり、だれを見殺しにして誰を生かすかが、始まるというわけだ。
「そんなのもう……人道的じゃない。こんなの人間としてあっていいことではないじゃないですか? どうして? どうして?」
問う。問う問う問う。
「長い間戦場にいるが俺も一度だけ選別で生かされたことがある。軽傷だったらしい。ただ、一緒に戦っていた戦友は最後までタスケテを叫びながら死んでいった」
選別とは逆を言えば、どれだけ重症であっても軍医、または衛生兵が利用価値がまだあると判断すれば生かされることがある。まあ、だからといってその数週間に傷口に蛆虫が湧いて死ぬ、なんてことはないという保証はないが。
「そして、最前線は既に前線非常予備隊が動いている。このクソ司令部め。こんな部隊を持っているならさっさと投入すればよかったのに」
そんな遺憾の声をぶつぶつと漏らすエーベルハルト。しかし、その顔にはいつものような血気のあるような顔ではなく青白い顔。つまり、血が回っていない。血が足りないというわけだ。
エーベルハルトの傷、それはけしていいというわけではなかった。なにせ、彼の右手首からその先はないからだ。理由、簡単なことだ。砲撃で吹き飛ばさたのであろう。
しかも、傷はその一つに留まらずあの砲撃を生き延びたのだ。相当の、傷を負っているに違いない。
――仲間を簡単に見捨てるクソ上官。
新兵の間でひそかに共有されていた噂だ。しかし、あんな自分が死ぬかもわからない状況で他人の命を救うなど………並みの人間ならばできないであろう。
「エーベルハルト、どうして?」
その先を言う前に察した様だった。エーベルハルトは口を開く。
「どうしても、クソもねぇ。ただ、爆撃でやられたそれだけだ」
そう淡々と語る。しかし、その冷静さに反し怪我の具合はけして良い、とは思えなかった。すでに、右手首にまかれた包帯は血で湿っており取り替えなければならない。そうでもしないと、出血多量か、病気で死ぬからだ。
書き溜めが終わりそう。ヤバい…………