宣戦が布告されました
すみません、投稿をサボりました。GW遊びました。
ほんと、すみません。
「そして――」
「お食事のところ失礼します。海軍第三作戦司令支部のアリス・フォン・エービック少佐であります」
不意に、四方に設置してある扉の一つが開かれる。その中から出てきたのは軍服を身にまとう金髪の少女だった。輝かしき小麦色輝く髪をストレートに伸ばし、汚れ一つない軍服と、曇りなき軍靴。そして、年相応のあどけなさが残る少女の名は――アリスだった。
「アリス殿………今は食事中であり定期報告はそれが終わったあとで………」
「急ぎだろう? 問題ない。続けたまえ」
シュピーゲルがそこまで言いかけたところでガーネットが制止する。
「では、お言葉に甘えて…………昨夜、軍事演習を行っていた共和国戦艦に対し突如、正体不明の戦艦数十隻による不意遭遇戦が勃発しました」
そこまで聞いたところでシュピーゲルは絶句に駆られた。これで、N回目である。
そしてその絶句の理由は戦争中ではない国との理由なき戦いとはつまり………宣戦布告を意味するからだ。
宣戦布告、その名の通り相手国に戦争をするという意思表示。どこかの条約で宣戦布告してからの攻撃は禁忌とされているが、今ではその条約も機能の殆どを無くしているも同然だ。
それ故に、それ故に、シュピーゲルは絶望するしかなかった。共和国は現時点で大規模帝国戦線を保有しており帝国との戦争による被害は想像を絶するものだった。
それは、人身的にも食糧的にも。
それに、新たな戦線を追加するとなれば共和国の財政は窮地に陥るだろう。将校用の明日のパンすら制限しなければならないのかもしれない。いや、むしろすでに陥っているといったほうが正しいだろう。
「被害は?」
「不意遭遇戦もあってか駆逐艦十二隻、主力戦艦三隻、その他、巡洋艦数隻が大破しました」
共和国は陸軍国家だ。他国に比べ比較的海岸に面しておらす戦争に継ぎ足す金の行方は陸軍にいきわたることがほとんどであった。
故に、もし戦艦の改修作業に金が回れば今度は戦線の方に物資が行き届かなくなる。だからといって、大破したまま放置してもすぐに帝国から共和国の保有する数少ない湾内に入られ抵抗空しく占領されるだけだ。
しかも、これほどの大敗。国民の戦意の低下につながりかねないのもまた一つの事実だ。プロカバンダという武器も錆びついてしまえば意味を成さない。
既に、敵の攻撃は共和国の首筋を掠っていた。
「ついに、この国も万事休すか。いやはや、こんなことならさっさとほかの国に亡命すべきだったかな」
それまで黙っていたエルマの反国じみた発言にシュピーゲルは戸惑いつつ数年前から吸い始めている煙草に火を付ける。
しかし、シュピーゲルの持っているライターは言うことを聞かず着火しない。震えだ。
「それで、アリス君。戦艦の特定は?」
フォークを置き顎を触るエルマ。そして、言葉の続きを促す。
「漂流していた数名の生き残りによると、《聖教国》ではないかと」
《聖教国》とは正式名称グリレオス聖教国の通称である。その歴史は共和国の革命にさかのぼり、深刻化する政治問題を神の怒りと唱え着実に信者、聖教国通称《聖者》を増やしていった。
そして、革命家気取りの聖教国過激派によって数十回を超えるテロによって死刑、および北側の不毛の大地に追放。
そこで、《聖教国》問題は終わったと思われたが突如、建国宣言。
グリオレス聖教国として建国した(しかし、世界的には認められていない)
《聖教国》は鉱物資源や共和国情報を帝国に渡し、帝国と無期限条約を結んでいた。そして、今日それまで、にらみ合っていた状況でその火蓋が見事に切られたわけだ。
「戦線など少ないに越したことはないな…………」
煙を上げる煙草を口に咥えエルマは副流煙を眺める。そして、混乱した頭を揉み解そうと頭を振る。
「アリス君、海軍の状況は?」
「やはり、主力を失ったこともあって戦力の低下は大きいかと」
「海軍は駄目かと……」とエルマはつぶやくと吸い終わった煙草を灰皿でつぶす。そして、顎に手を置いて考えてみる。
エルマ自身、アリスに海軍の状況を聞かなくても自分で海軍は駄目だということは予想、確信に至っていた。
だからこそ、エルマは大金を出してでも戦艦を改修するよりも、陸軍を使うべきだと考える。
帝国と戦闘中の宣戦布告。帝国との連携も考えてエルマ的には海からでなく建国宣言した北側から攻めるはずだ。
が、ここでエルマは立ちとどまっていた。
なぜなら、帝国戦線から師団を数個引き抜けば帝国にあからさまな戦力の低下がばれて、ずるずると後退していくからだ。
つまり、万事休す。
王手一歩手前のその状況から打開策を導き出すのはもはや困難となっていた。
なら――。
「なあ、エルマ。お前のとこの《大罪旅団》はまだ健在だろう?」
同じことを考えていたらしくガーネットがエルマに問う。まるで、その答えを待っていたかのように頷き笑みを浮かべる。そして口を開いた。
「ああ、私のトラの子は健在だよ。奴らなら、《聖教国》なんて眼下にないはずだ。
そうだな…………戦争だ。聖教国と共和国の戦争。宣戦布告してきて奴らを蹴散らしてやろうか」
その愛国心たっぷりの声が室内に響いた。
それのお返しに、
「そうだな、愛娘のアリスのためにもここで食い止めなければな」
ガーネットのその言葉にシュピーゲルは驚きの声を隠すことはできなかった。
全人類が呆れるほど投稿不定期です。
もしかしたら急にやめるかもしれないです。
誤字脱字しかないです。暖かい目で見ていただければ嬉し泣きします。