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色狂いの転生狒々領主  作者: ばさない
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色狂いの転生狒々領主

次に光が満ちたとき、

俺の前には一人の存在がいた。

あるいは一柱と言うべきか。


それは俺に掛けるように促すと、俺の後ろに椅子が現れた。

「これはこれは…私の様な者に如何様な御用でしょうか」

俺の慇懃な言葉に、尊大な言葉を返すそれ。

「うむ、先程、勝手ながら其方を治める神に承諾が取れてのぅ。

端的に言おう。其方そち、朕の世に来ぬか?」


俺はよくわからず問い返す。

「失礼ですが、仰ることがいまいちわかりません」

それはやれやれという素振りを見せ続ける。

「うむ、有り体に言えば所謂≪異世界転生≫というものじゃよ。

ほれ、其方の世界で流行っておるじゃろう」


なんとも俗な神様もいたものである。

いや、思えば俺達の神も天岩戸に引きこもったと思えば周りの喧騒が気になり出てこられたという。

案外神というのも理外の力を持つ人間なのかもしれんな。


「其方の考えは正しい」

どうやら思考まで読まれてしまっているようだ。

アルミホイルでも被るべきか?


「ふはは、神を前にアルミホイルとは不敬千万であるな」

そうすごむ神だが、俺は何となくわかる。

この神は案外茶目っ気があるやつだ。

もちろん神に敬意はある。理外の力を持つ、これだけでこちらより上なのだから。

だが、敬意とはただ恐れるのではなく、敬いながらも親しまねばならない物だと俺は考える。


「いよいよもって面白い奴じゃ。朕の見立てに誤りはなかったようじゃの」

しかしまぁ、一人でよくしゃべられること。

「其方が口を開かんからじゃろが!」


「あぁ、これは失礼しました。ところで神よ、なぜ私なのでしょうか?」

「うむ、実はのぅ…我が世界は今魔力が枯渇気味でな。

というのも維持装置の一部が破損してしもうたのじゃ。

そこで、補修作業を行うことになったのが、その際に《贄》が必要での」

「《贄》ですか」

「うむ、正確には死後の魂じゃ。我が世界の魔力は我が時空の狭間に流れ込む不純物を魔力に変換する装置を介して世に注入しておる。その装置は次元の狭間にあり、普段は閉鎖されておるのじゃ」

「では、私は何をすればよいのでしょう」

「簡単じゃ。朕が其方の魂を朕が世界に移すだけでよい。

人の魂は輪廻を通し時空を渡ることがある。その時次元の狭間は開くのじゃ」

「つまり、私に鍵になれとおっしゃるわけですね?」


神は満足したように頷く。

「しかし、ますますもって謎です。なぜ私なのでしょう。

それこそ先に同席した兵士こそ次なる生がふさわしいのでは?」

「それはのぅ、奴は満足しておる。次なる生は輪廻を巡りて向かいたいとのことなのじゃ」

「なるほど」

「それに比べて其方は未練があるようじゃ。

死に際に夢半ばだと申していたが、その通りのようじゃの」

「えぇ、俺は叶えたい夢があったのですよ」

「それでよい。現世にしがみつこうとする意欲、

いわゆる未練こそ肉体を離れた魂の維持に何より欠かせぬのじゃ」

「はは、どうやら私は相当な未練を持っているようですね。案外諦めきれていると思ったのですが」

「どうやらおぬし自身も気付かぬ渇望のようじゃの。

どれ、よければその夢とやらを聞かせてくれぬか?」


そんなの決まってるだろ、男なんだから!

興味を持った神に俺は聞かせた。先程兵士に話したその夢をより詳細に。

「~という形で30までにガンガン荒稼ぎして、ハーレムを築くんだ!!」

神はポカンとした顔を見せた。

その後、徐々に内容を理解したのか、小さな笑い声が聞こえてきた。

「ククク…クッハッハ…クハハハハハ」

その声は徐々に大きくなり、終いには呵々大笑となり果てた。



一通り笑った神は俺の前にテーブルと椅子を作った。

そして神も椅子につく。

「光栄に思えよ。この朕と席を共にした人間など数えるほどもおらんのじゃ」

「そいつは光栄なこって」

「さて色狂いよ。其方を転生させるにあたり、用意はもう整って居る。

じゃが、朕の頼みで動かすのじゃ、相応の礼は尽くさねばならぬ。

なんなら、其方の夢を叶えてやってもよいのじゃが、それは其方にとって面白くなかろう?」

「当たり前だ。俺は自分で稼いだ金で美女を囲いたいのさ。ってか色狂い扱いは無いだろ」

「抜かせ。色欲を満たすために戦地まで赴くとは最早気狂きぐるいいの類よ」

「まぁ、否定はできんな」

「じゃろ、ともかく、其方の夢を叶えることは相応しくない。

そこでじゃ、朕が其方に力を授けよう。

なに、そこまで大層なものではない。朕の世界は皆何かしらのスキルを持っておるのじゃ。

其方にもそのスキルを与えよう。何か希望はあるか?」

「そうだな…どうせなら親から受け継いだこの名前に因んだものがいい」

「ほう、ということは輸送系だな」

「あぁ、品部という名は物流関連とも言えなくはない家名だし、

戦後の貧しさを知る両親は物を血のごとく巡らす物流こそ豊かさへの道と信じ、

俺にこの名を託した。俺はその信念を受け継ぎたい」

「よし、ならば朕の裁量で其方に与えられる最良のスキルを与えよう」

神は石板のような何かを創造し、何かしらを書き記している。

俺は疑問に思ったことを訪ねた。


「それと、一つ確認したい」

「ん、なんじゃ?」

「転生するとして、元からそこに入る予定だった魂はどうなる?

愛し合う夫婦の愛の結晶に横入なんか御免だぞ?」

「やれやれ、この気狂い、世の有象無象より余程道徳的だな。

そこに関しては安心せい。すでに了承を取り付けておる。

それに、いきなり赤子は成人を過ぎたおぬしには辛かろう。

5歳の子供に魂が乗り移り、その子は次の出産に回ることになっておる」

「はぁ?育てた子供が入れ替わるのか?」

「言葉が足りんかったの…先ほど言った通り、両親は我との契約に同意しておる。

そう言って神は契約内容が明記された板金いたがねを取り出す。



~~~~~~~~~~~《契約内容》~~~~~~~~~

一、神は母子ともに健康な出産となるよう最善を尽くす

一、夫婦は5年、子を誠心誠意自らの子として慈愛の下育む

一、5歳の誕生日を迎えた翌日、子の魂と異世界の者と魂を取り換える

一、子の魂は神の御名の下恙無く保護される

一、夫婦は異世界の者を子として受け入れる義務はない

(但し、止むを得ない場合を除き成人までの養育・後援等最低限の助力を行うものとする)

一、夫婦は子が5歳を迎えたのち|(余裕があればその前でも良い)新たな子を作る

一、新たな子に神は魂を送らないが、生命に問題は生じさせない

一、3歳の誕生日前日に子の魂を新たな器に送る

一、神は報酬として子に神界にて妖精や天使とともに教育を施す

一、神は子を送り出す際当人の意思・適正に応じて加護を授ける

一、不慮の事態により修正を要する場合は都度協議するものとする


以上の事柄を神、夫婦は尊重し順守するよう最善を尽くすものとするが、

子にあってはその当人の自由意思を倫理に著しく背く場合を除き尊重するものである。

上記契約は見届け・立会人を務むる紀律の神フェタルシアの名の下に枢密院に届けられ、

監督されるものとする。

~~~~~~~~~~~《神印省略》~~~~~~~~~



この内容を見て俺は思った。

公印省略かよ…、と。


「仕方なかろう。意志在るものが集まれば規律は必要だ。

規律の作成・管理は政府がなければ務まらん」

「それもそうか」

「閑話休題、この通りすでに同意は得ているのだ。

書面外にはなってしまうが、その目的も説明の上理解してもらっておる」

「それなら良い。じゃあ、俺の準備は整ってるぜ」

「よし、基本的な常識などは前の子の記憶の引継ぎをする。

ゆえに、彼の者がここに来るまで、其方は朕の庭で修練に励むがよい」

「あぁ、そうさせてもらおう」


俺は転生のその時までの一時を神の庭で過ごすことになった。

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